欧州鉄鋼大手、水素と再エネで製鉄プロセスの脱炭素化へ始動

2020/09/11 15:12
宇野麻由子=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
印刷用ページ

 CO2排出量が多い産業として注目を集める製鉄業では、打開策として水素が注目されてきた。従来の「高炉(BF)-転炉(BOF)」の組み合わせから、「水素による直接製鉄法(DR)-再生可能エネルギーによる電気アーク炉(EAF)」へという製鉄の方式変換を含む、一大転換点になろうとしている。CO2排出削減に注力する欧州の鉄鋼大手を中心に水素利用の取り組みが着実に進んでいる。

 スウェーデンでは、高張力鋼メーカーのSSAB、鉄鉱石生産のLKAB、および電力会社のVattenfallが、水素還元製鉄に向けたパイロットプラントを始動したと2020年8月31日に発表した。3社は2016年に「HYBRIT(Hydrogen Breakthrough Ironmaking Technology)」を設立し、2018年6月にルレオのSSABサイトでパイロットプラントの建設を開始していた。パイロットプラントでは、2020年から2024年に試験を実施する予定だ。DRでの還元にはまずは天然ガスを利用し、その後、再生可能エネルギーを使った水の電気分解による“グリーン水素”を利用するとしている(図1)。

図1●水素還元製鉄に向けたHYBRITのパイロットプラント
当初はDRとして天然ガスを使う。天然ガスでも、現行方法に比べるとCO2削減になるとしている(写真:SSAB)
クリックすると拡大した画像が開きます

 それに先立つ2020年8月28日、ドイツthyssenkrupp SteelはデュイスブルクにDRプラントを建設する構想を、連邦経済大臣とノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州首相に提示したと発表した。同プラントでは現在、BFで利用する還元剤の微粉炭を水素に置き換える試験を実施しており、次のステップとしてDRプラントの建設を予定している。DRの年間生産能力は120万tで、十分な水素が用意できない場合は天然ガスで運転するとしている。同社では2025年までにプラントの主要部分を完成させ、グリーン水素と再生可能エネルギーにより40万tの“グリーンスチール”を生産することを目指すとする(図2)。

図2●プラントを訪問する連邦経済大臣のPeter Altmaier氏とNRW州首相のArmin Laschet氏
将来的にはDRとEAFを組み合わせグリーンスチールを生産する計画(写真:thyssenkrupp Steel)
クリックすると拡大した画像が開きます

 同様の動きは他社でも進んでいる。ドイツDillinger HüttenwerkeとSaarstahlは、水素を多く含むコークス炉ガスを高炉の還元剤として利用する新工場の操業を2020年8月21日に開始したと発表した。ドイツ初の水素ベースの鉄鋼生産プラントとしている。また、ドイツArcelorMittalはDR技術の大手で神戸製鋼所の子会社である米Midrex Technologiesと、水素還元製鉄の技術を共同開発すると2019年9月に発表している。

 こうした水素利用の動向に関しては、日経BP 総合研究所が7月31日に発行した「世界水素ビジネス-全体動向編-」の中で、「作る」「運ぶ/貯める」「使う」ための各種技術の解説のほか、中国・韓国・欧⽶豪の戦略を分析、2050年までの水素普及シナリオを紹介している(「世界⽔素ビジネス-全体動向編-」の案内サイト)。

  • 記事ランキング