新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東北大学、馬渕工業所(仙台市)、一般社団法人・小浜温泉エネルギーの4者は9月23日、固形物が析出しやすい温泉水でも安定した熱交換が可能な熱交換器を開発し、1カ月間の温泉熱回収の実証試験に成功したと発表した。
温泉水はカルシウムや硫黄などの溶解成分を含むため、熱交換器の伝熱面上に温泉スケールと呼ばれる固形物が析出し、熱交換を阻害する恐れがある。そのため頻繁な清掃が必要で、メンテナンスコストが高いことが課題だった。
今回開発した熱交換器は、伝熱面を回転させ、そこに羽根を押し当てることで温泉スケールを剥ぎ取れるようにした。表面に温泉スケールが付着していない状態を維持できる。長崎県雲仙市の小浜温泉で実証試験を行い、温泉スケールの除去と熱交換効率の低下抑制に成功した。
熱交換器のメンテナンスコストの削減につながり、温泉宿の経費節減や熱利用の促進などが期待される。温泉水以外にも、汚泥を含む工場温排水、藻類や貝類を含む海水や河川水との熱交換(冷熱利用)など多岐にわたる分野での利用が期待でき、更なる未利用熱や再生可能エネルギーの利用を促進しCO2排出削減にも寄与するとしている。
NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム「固相生成制御型回転式高耐久・高速熱交換器」(事業期間2019年7月~2021年7月)にて開発された。今後、スケールアップした熱交換器を開発しさらなる耐久性向上に向けて長期間(3カ月を予定)の現地実証試験を行う。また、熱交換器の高性能化に向けて研究開発する。