福島県浪江町に60MWのメガソーラー完成、三菱総研が農業支援も

維持管理に町民が参加し、雇用創出と帰町機会の提供も

2020/09/29 17:06
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

 福島県浪江町の谷津田地区に建設中の出力約60MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が完成し、10月1日に商業運転を開始する。発電所名は「浪江谷津田復興ソーラー発電所」。太陽光パネルの出力約60MW、連系出力40MWで、福島県内でも最大規模となる。

 谷津田地区は、居住制限区域だったが、2017年3月末までに除染作業が完了し、避難指示が解除された。ただ、帰宅困難区域に挟まれていることから、住民の帰還が進んでいない。そこで同地区の農地を大規模に転用して太陽光パネルを設置して、売電事業を行う(図1)。

図1●「浪江谷津田復興ソーラー発電所」の全景
図1●「浪江谷津田復興ソーラー発電所」の全景
(出所:三菱総合研究所)
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 事業主体は、三菱総合研究所と三菱UFJリースなどの出資する「浪江谷津田復興ソーラー合同会社」。総工費は約135億円で、プロジェクトファイナンスを組成し、三菱UFJ銀行のほか、東邦銀行など福島県内の金融機関が融資した。アレンジャーは三菱UFJ銀行、コアレンジャーは東邦銀行が務めた(図2)。

図2●事業スキーム図
図2●事業スキーム図
(出所:三菱総合研究所)
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 固定価格買取制度(FIT)による売電単価は24円/kWhで、福島県や東京電力など出資する福島共用送電線に接続して東京電力管内に送電し、東京電力パワーグリッドに売電する。

 事業用地は約88haで地権者は約90人・700筆となる。主に農地で、県が主体となり大規模転用の仕組みを使って転用を実現した。土地の形状を変更せず、事業終了後は、地権者に返還し、現状回復の可能なことが条件となった。

浪江産「トルコキキョウ」をブランド化

 「浪江谷津田復興ソーラー発電所」の特徴は、浪江町の復興整備計画の中に位置づけられていること。売電収入の一部を拠出や寄付したり、農業復興を支援したりするなど、地域の復興に多面的に貢献する枠組みになっている。

 福島県では、国や県、市町村などにより、福島県再生可能エネルギー復興推進協議会を設立している。今回のメガソーラープロジェクトでは、同協議会と協定書を締結し、初期費用に関して補助金の交付を受けるとともに、商用運転の開始後は協議会に対して事業収入の一部を負担金として拠出する。

 補助金は設備費用の10分の1、自営送電線敷設費の2分の1。一方、運転開始後の負担金は、連系出力1MW当たり年間100万円で、40MW分の合計で年間4000万円、20年間で総額8億円となり、復興に寄与する事業に生かされることになる。

 浪江谷津田復興ソーラー合同会社では、こうした負担金の拠出のほか、浪江町に対して売電収入の一部を寄付する。加えて、三菱総研が同町における農業振興に関してコンサルティングサービスを提供する。同社には、農業分野に詳しいコンサルタント、研究員が在籍しており、こうした専門家を中心に支援活動を行う。

 すでに建設中からこのコンサル事業はスタートし、終了した。町内への花卉生産者の誘致活動とともに、既存の花卉栽培農家などと連携し、浪江町で栽培したトルコキキョウの認知度向上やブランドの定着を目指し、ポスター作製・配布や展示会への出展などを実施した(図3)。

図3●三菱総研が浪江町の花卉栽培の振興を支援
図3●三菱総研が浪江町の花卉栽培の振興を支援
(出所:三菱総合研究所)
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除草作業で町に帰る機会を

 メガソーラー完成後の運営・管理に関しては、アセットマネジメントは、三菱総研グループのMRIリサーチアソシエイツと三菱UFJリースグループのMULエナジーインベストメントが共同して担う。

 地元企業・住民による維持管理の一部を委託することで雇用を創出する。除草作業を町外に避難している町民にも委託し、定期的に町に集まる機会を提供することも予定している。谷津田地区には370世帯が生活していたが、その多くが現在も町外で暮らしている。同地区では除草作業に合わせてイベントなどの企画も検討しているという。

 こうした町民による除草作業も想定し、「浪江谷津田復興ソーラー発電所」では、除草作業の負担が大きい太陽光パネル下などは、防草シートを施工し、比較的、平坦なエリアに限定して機械で草を刈るように設計したという(図4)。

図4●パネルの下には防草シートを敷設した
図4●パネルの下には防草シートを敷設した
(出所:三菱総合研究所)
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 浪江町では、芙蓉総合リースの子会社である合同会社浪江酒井ソーラーが谷津田地区に隣接する酒井地区に合計約60MWの2つのメガソーラーを建設し、2020年2月に商業運転を開始している。