「2050年CO2ゼロ」目標、先進国の大勢に、国内では166自治体

菅首相が所信表明演説で宣言、韓国・大統領も続く

2020/10/29 14:12
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

 菅義偉総理大臣は10月26日、衆参両院の本会議で就任後初となる所信表明演説を行い、「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする」と宣言した。日本政府は、これまで2050年目標に関して、基準年を示さずに「80%削減」とし、あいまいな数値設定だっただけに、今回の「カーボンニュートラル宣言」で、すっきりとした目標設定となった。

菅首相が所信表明演説で「2050年CO2ゼロ」を宣言
(出所:首相官邸ホームページ)
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 その3日後の28日、韓国では文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、「2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指していく」と宣言した。中国は今年9月に「遅くとも2060年にカーボンニュートラルを目指す」と表明しており、これでアジア主要国でも、今世紀半ばまでに「温室効果ガスゼロ」という目標で、足並みが揃ってきたことになる。

 経済産業省が今年10月16日に公表した資料では、2050年までのカーボンニュートラルにコミットしている国は、121カ国・1地域としているので、今回の日本、韓国の宣言によって、少なくとも123カ国が「2050年実質ゼロ」目標を掲げていることになる。

「2050年カーボンニュートラル」にコミットしている国々。これに日本と韓国が加わった
(出所:経産省資料2020年10月16日公表)
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 先進国では、日本の表明でG7(米、カナダ、英、仏、独、伊、日本)のうち、「2050年実質ゼロ」を表明していないのは米国だけとなる。ただ、バイデン大統領候補は「遅くとも2050年には排出実質ゼロ、2035年電力脱炭素化」を掲げているので、同候補が当選した場合、G7先進7カ国が同水準の2050年目標を共有することになりそうだ。

次の焦点は「エネルギー基本計画」改定

 実は、国内の地方自治体では、すでにこうした動きが加速している。環境省が10月26日までに集計したデータによると、「2050年CO2排出実質ゼロ」を表明している自治体は、166に達している。内訳は、23都道府県、90市、2特別区、41町、10村となっており、これらの自治体の人口は約7883万人で、総人口の6割を超えている。

「2050年カーボンニュートラル」にコミットしている国内自治体
(出所:環境省・2020年10月26日公表)
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「2050年カーボンニュートラル」にコミットしている都道府県
(出所:環境省・2020年10月26日公表)
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 こうした国内外の動きを見ると、菅総理大臣の「2050年・ゼロ宣言」は、外堀が埋まっていく中で背中を押され、遅かれ早かれ避けられない決断だったとも言える。

 ただ、「ゼロ宣言」を除くと、今回の所信表明で言及したエネルギー政策の内容は既定路線と言える。「再生可能エネルギーを最大限導入」「安全最優先で原子力政策を進める」「長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換」という方向性は、今年7月以降、すでに梶山経済産業大臣が表明してきた内容に沿ったものだ。

 また、温暖化対策として挙げた「次世代型太陽電池、カーボンリサイクルなど革新的なイノベーション」「グリーン投資のさらなる普及」「国と地方で検討を行う新たな場を創設」「環境関連分野のデジタル化」「世界のグリーン産業をけん引」などの内容も、これまでの政策の延長線上で、特に目新しいものではない。

 今後の焦点は、次期「エネルギー基本計画」に盛り込む「2030年のエネルギーミックス」(あるべき電源構成)の見直しに移る。現在、44%となっているゼロエミッション電源(原子力と再エネの合計)を積み増すのか、ゼロエミ電源のうち、現在、概ね半々になっている原発と再エネの比率をどうするのか、などが議論になりそうだ。

 現行のミックス目標で再エネ比率は22~24%となっているが、こうした流れの中で、どこまで積み増されるのか。経済同友会が「再エネ比率40%」を提言するなど、需要家からの再エネニーズも高まっている。「30%がスタートラインになる」(自由民主党・再生可能エネルギー普及拡大議員連盟・会長の柴山昌彦衆議院議員)との見方もある。