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太陽光・風力で水素を製造して利用、北九州市で実証

2020/11/25 21:50
工藤宗介=技術ライター
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実証事業の概要
(出所:北九州パワー、北九州市)
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 地域新電力の北九州パワー(北九州市)と北九州市は11月24日、福岡県、IHI、福岡酸素、ENEOSと共同で、地域の再生可能エネルギー電力を用いて水素を製造・供給する実証事業を開始すると発表した。2021年10月ごろから水素製造を開始し、毎月約300Nm3の水素製造を目指す。

 響灘地区に集積する太陽光発電や風力発電、北九州市内のごみ発電(バイオマス)など複数の再エネ電源の電力で水を電気分解して水素を製造する。再エネ由来のため、CO2を排出しない「CO2フリー水素」になる。

 製造した水素は、東田地区の「北九州水素タウン」や福岡市・久留米市の水素ステーションといった既存インフラを活用し、さまざまな用途で水素を利用する。北九州水素タウンは、水素活用の実証フィールドとして1.2kmの水素パイプラインや水素ステーション、燃料電池搭載の水素実証住宅などを備える。

 効率よく水素を製造するために、発電量・発電ピークの異なる複数の再エネ電力を同時制御する「水電解活用型エネルギー管理システム(EMS)」を開発・導入する。水電解装置の水素製造能力は10Nm3/hになる。一連のサプライチェーンを実際に運用するなかで水電解装置などの機器の規模や運用方法、安価な電力調達などのシミュレーションを行い、CO2フリー水素を低コストで製造・供給できるモデルを構築する。

 太陽光や風力といった変動型再エネの普及が進む九州地域では、電力の需給バランスを維持するため、九州電力が再エネ事業者に対し度々、出力制御指令を出している。出力抑制時に発生する余剰再エネを効率的に利用するには、水素製造技術の確立、設備・機器のスケールアップといった課題を解決する必要があるという。

 代表事業者は北九州パワーで、事業の全体統括、事業展開モデルの検討、電力供給を行う。共同実施者のIHIは水電解活用型EMSの設計・開発・運用を担当する。IHIは、2018年に福島県相馬市に開設した「そうまIHIグリーンエネルギーセンター」で、太陽光と水電解装置を利用した地産地消型EMSを運用しており、これまでに培った技術を活用する。

 このほかにも、福岡酸素は水素の配送および久留米市の水素ステーション利用、ENEOSは水素パイプラインへの供給および北九州市の水素ステーション利用、北九州市と福岡県は関係機関との各種調整、実証フィールドを提供する。また、協力企業として、東レが実証事業用地を提供し再エネ電力を供給、岩谷産業が実証フィールドおよび水素パイプラインを提供する。

 環境省「既存の再エネを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業」の委託を受けた。2020年度に仕様決定・発注、EMS開発、2021年度に装置の設置と運用開始、2022年度に本格運用を開始する。事業費は2020年度で約2億円、2022年度までの合計で約8億円の予定。

 なお、燃料電池の応⽤動向に関しては、⽇経BP 総合研究所が発⾏した「世界⽔素ビジネス-全体動向編-」の中で詳しく解説している。本書は技術解説のほか、中国・韓国・欧⽶豪の戦略を分析、2050年までの⽔素普及シナリオを描いている(「世界水素ビジネス-全体動向編-」の案内サイト)。

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