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有機薄膜太陽電池の効率向上、広島大など光干渉効果で

2020/12/02 16:04
工藤宗介=技術ライター
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PTzBTとPCBMの二元系OPVとITICを加えた増感型三元系OPVの分光感度特性
ITICは重量比6%しか含まれないが吸収帯における外部量子収率はPTzBTやPCBMと同程度になった(出所:広島大学、山形大学、京都大学、千葉大学らの共同リリース)
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増感型三元系OPVの光吸収分布
半導体層が約400nmと厚いときにITICの吸収帯において吸収率が高い部分が3つ現れ、強い光干渉効果が起きている(出所:広島大学、山形大学、京都大学、千葉大学らの共同リリース)
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増感型三元系OPVの半導体層における各材料の配置
ITICはPTzBTとPCBMとの界面に偏在する(出所:広島大学、山形大学、京都大学、千葉大学らの共同リリース)
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 広島大学、山形大学、京都大学、千葉大学らの共同研究チームは11月25日、半導体ポリマーとフラーレン誘導体を用いた塗布型有機薄膜太陽電池(OPV)に、少量の長波長吸収材料を加えることで発電効率が大幅に向上することを発見したと発表した。

 OPVは、半導体ポリマーをプラスチック基板に塗布して作製できるためコストや環境負荷が低く大面積化が容易なのが特徴で、IoTセンサーやモバイル・ウエアラブル電源、窓やビニールハウス向け電源など、新しい応用に向けた次世代太陽電池として注目される。一方、OPVの実用化には発電効率の向上が最重要課題であり、それにはOPVができるだけ多くの太陽光を吸収できるようにする必要がある。

 共同研究チームは今回、広島大学が以前に開発した結晶性の高い半導体ポリマー「PTzBT」とフラーレン誘導体(PCBM)に、増感剤となる第三成分として長波長の吸収帯を持つ化合物「ITIC」を加えた。その結果、ITICの混合率が重量比で6%のときにOPVの変換効率が最も高くなることを見出した。少量しか含まれないITICがPTzBTやPCBMとほぼ同じ光吸収強度および外部量子収率を示し、その結果変換効率が1.5倍程度向上したという。

 OPV中の光吸収分布をシミュレーションした結果、ITICは光干渉効果によって光吸収強度が大幅に増幅されていることが分かった。PTzBTは電荷輸送性が高く膜厚を従来の半導体ポリマーの約3倍の300nm以上に厚くできるため、光干渉効果を利用した大きな光吸収が得られたと考えられる。

 また、電荷生成のダイナミクスを解析した結果、ITICはPTzBTとPCBMとの界面に偏在していることが示唆された。これによりITICが光吸収により生成した電荷が効率よくPTzBTとPCBMに受け渡され、高い外部量子収率を示したと考えられる。

 今回の研究結果は、将来的なOPVのさらなる高効率化に向けて、新たな設計指針を示す重要な成果になるという。今後は、光干渉効果を高めるため半導体層をさらに厚膜化できる電荷輸送性の高い半導体ポリマーの開発を進めていく。また、第三成分に用いる材料として、より長波長吸収帯と適切なエネルギー準位を持つ化合物の開発を合わせて進め、さらなる変換効率の向上を目指す。

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