ペロブスカイト表面を評価、太陽電池の高効率化に貢献

2020/12/10 22:43
工藤宗介=技術ライター
今回開発した評価手法
Aは紫外光電子分光法(UPS)での分析イメージで、電子のエネルギーは原子や分子種により特徴が異なるためスペクトルにより区別できる。Bは準安定原子電子分光法(MAES)での分析イメージで、ヘリウム原子は物質の中に入り込めないためスペクトルでは最表面の原子や分子種のみ観測される(出所:千葉大学)
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ヨウ化鉛メチルアンモニウムの表面終端の構造
理論的にはヨウ化鉛(PbI2)とヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I)のどちらかが表面終端になる可能性がある(出所:千葉大学)
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ヨウ化鉛メチルアンモニウムのUPSとMAESの比較結果
UPSではPb、CH3NH3、Iに由来するピークが観測されるのに対し、MAESではPbに由来するピークが消えている。このことからヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I)が表面終端であることが分かる(出所:千葉大学)
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 千葉大学は12月9日、ペロブスカイトの表面終端を評価できる技術を開発したと発表した。最近の研究ではペロブスカイト太陽電池は表面構造(表面終端)により性能や耐久性が大きく左右されることが明らかになっており、今回の成果が表面処理の評価法に広く利用されることで、さらなる高効率化と耐久性の向上が期待される。

 ペロブスカイト太陽電池は、原料となるペロブスカイトがもともと高い結晶性を持つため、低コストで高品質な結晶構造を製造できる。一方、結晶内部が高品質でも、結晶表面でエネルギー損失が起きたり、表面の状態で発電した電流を取り出す効率が左右されたりするため、ペロブスカイトの表面が太陽電池の性能や寿命に影響することが分かっている。

 特に最表面の元素組成を意味する表面終端は、表面の性質を決定付ける最も基本的な要素になる。しかし、一般的に表面構造を調べる実験手法に用いられる走査型トンネル顕微鏡は単結晶を低温にするなど限られた条件でしか測定できず、実際の太陽電池に使われるペロブスカイトの表面終端を調べることができず、新たな評価方法が求められていた。

 研究グループは今回、紫外光電子分光法(UPS)と準安定原子電子分光法(MAES)を組み合わせることで、表面終端を決定する手法を開発した。いずれも物質に光を照射すると電子が表面から放出される光電効果を利用し、物質表面から飛び出した電子のエネルギーを分析する実験手法となる。UPSでは紫外線を、MAESでは準安定ヘリウム原子を用いて光電効果を発生させる。

 この手法を用いて、標準的な太陽電池用ペロブスカイトであるヨウ化鉛メチルアンモニウム(CH3NH3PbI3)の表面終端を調べた。理論的には、ヨウ化鉛(PbI2)とヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I)の2つの表面終端の可能性がある。

 その結果、メチルアンモニウム(CH3NH3)とヨウ素(I)はUPSとMAESの両方で検出されたのに対し、鉛(Pb)はMAESでは見られず、表面終端はヨウ化メチルアンモニウムであることが分かった。太陽電池の電子取り出しに用いられるC60との界面をUPSと低エネルギー逆光電子分光(LEIPS)で調べ、ヨウ化メチルアンモニウムが終端である場合の理論予測と良く一致することを確認した。

 ペロブスカイトの表面構造は、太陽電池の効率だけでなく、空気中に放置すると劣化しやすいという欠点とも密接に関連する。そこで疑2次元構造を取り入れたり、添加剤を加えたりするなど表面改質が有効な方法として研究されている。今回の手法は、表面処理による表面終端の違いも的確に評価でき、ペロブスカイト太陽電池の光電変換効率や大気安定性の向上に貢献するとしている。