川崎重工業は2020年12月24日、世界最大級となる貯蔵容量1万m3(約710t)の球形液化水素貯蔵タンクの基本設計を完了したと発表した。将来的な水素利用の増加に合わせて、産業ガス事業者やエネルギー事業者などに提案していく。
内外2つ重ねたタンク間の真空層で外気温からの熱伝導や対流熱伝導を遮る「真空二重殻断熱構造」と、最も入熱量を抑えることができる形状である球形の採用により、蒸発ガスの発生量比率(BOR:Boil off Rate)を0.1%/日以下と極限まで抑制した。
貯蔵容量は、乗用車型燃料電池車(FCV)(走行距離1万km想定)の1万台分に相当する。液化水素払出方法は自己加圧で液水ポンプが不要。外槽直径は約30m。
同社は、1980年代にNDSDA(現JAXA)の種子島宇宙センター向けに容量540m3の液化水素貯蔵タンクを製造し、その後30年以上保守・運用してきた実績がある。また、2020年には神戸空港島に国内最大となる直径約19m、貯蔵容量2250m3の液化水素貯蔵タンクを建設した。
液化水素は液化天然ガスに比べて熱の影響を10倍以上受けやすく、貯蔵タンクは高断熱性能を実現させる高い製造技術も考慮した高精度の設計が必要になる。水素は2030年ごろには年間約30万tの利用が見込まれており、貯蔵設備の技術確立およびインフラ整備が重要な課題となっている。