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高効率のナノシート状・水電解触媒、京大が開発

2021/02/25 22:49
工藤宗介=技術ライター
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ルテニウム-イリジウム(Ru-Ir)合金電極触媒
(出所:京都大学)
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 京都大学は2月17日、酸性溶液中で水の電気分解(水電解)を高効率かつ長時間促進するルテニウム-イリジウム(Ru-Ir)合金電極触媒を開発したと発表した。従来の白金(Pt)と酸化イリジウム(IrO2)と比べて、低コストかつ高性能な水電解を実現した。再生可能エネルギーによる水素社会実現へ大きく貢献するとしている。

 水電解は、カソードでの水素発生反応(HER)とアノードでの酸素発生反応(OER)の2つの半反応から構成され、特に最近のイオン交換膜の発展から酸性溶液における水電解が注目されている。酸性中では高いプロトン濃度によりHERが促進される一方、OERは触媒作動電位でほとんどの金属が溶融してしまうのが技術的課題となっている。

 酸性条件下での触媒設計指針はまだ少なく、現在はIr酸化物だけがOER反応に対してある程度の触媒耐久性を示しているが、300mV以上の高い過電圧が必要になる。一方、Ruは最もOER活性が高く、価格も直近5年間でIrの5分の1~16分の1と安価だが、触媒耐久性に問題があった。研究グループは今回、高活性と高耐久性を兼ね備えたRuを基材とするナノ合金触媒の開発を目指した。

 触媒反応や溶出問題に対してナノ粒子の表面に着目し、原子が密に詰まった結晶面(細密面)が露出した構造が最も酸化しにくく触媒耐久性も高いと考えた。さらに、Irを微量加えることで耐久性を向上するとの考えを統合し、特徴的な珊瑚形状をしたRu-Irナノ合金(RuIrナノコーラル)を液相還元法で合成した。この触媒は、Irが6at%で、3nm程度の六方最密構造(hcp){0001}面を広く露出したRu-Ir合金ナノシートの集合体になる。

 RuIrナノコーラルは、既報のOER触媒より1~2桁高い活性を示し、1mAcm-2の定電流を固定した状態で122時間継続することが分かった。また、HERにおいても市販のPt触媒と同等の活性を示し、通常はカソードにPtとアノードにIrO2を使用する水電解が、RuIrナノコーラルのみで行え性能もより向上することが分かった。オペランドX線吸収分光測定と原子分解能電子顕微鏡観察により、hcp{0001}面が露出したナノコーラル形状が他の結晶面に比べてOER環境下で酸化しにくいことが明らかとなった。

 今回開発したRuIrナノコーラルは、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業ACCELにおいて、フルヤ金属(東京都豊島区)が量産について検討している。今後は、反応中のさらに詳細な構造を解析し、高活性の起源を探るとともに、新たに改良された触媒の開発に取り組む予定。

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