太陽光発電で失われた環境、人工の林・草原など「里山」が中心

2021/03/30 22:02
工藤宗介=技術ライター
太陽光発電建設によって失われた生態系の面積と割合
(出所:国立環境研究所)
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太陽光発電建設ポテンシャル(建設されやすさ)地図。上段が10MWの大規模施設、下段が500kW~10MWの中規模施設
(出所:国立環境研究所)
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 国立環境研究所は3月29日、太陽光発電による土地改変の実態を明らかとするために、出力500kW以上の太陽光発電所を地図化し、規模や分布の特徴を調査したと発表した。その結果、国内の500kW以上の太陽光発電所は8725施設が確認され、里山の環境に該当する場所での建設が多いことが分かった。

 再生可能エネルギー発電施設は、その場所の生物・生態系・水環境などの自然環境への影響を通じて、自然資本の損失を招く恐れがある。特に太陽光発電は、広い接地面積を必要とするため、環境への影響が懸念される。しかし、これまで太陽光発電と自然環境との関係について、広域的な解析は行われていなかった。

 研究チームは今回、500kW以上のすべての太陽光発電所を対象に、衛星画像や航空写真を活用し、太陽光パネルおよび付随施設の範囲をデジタルデータ化した。また、太陽光発電設置前にどのような生態系が存在していたかを把握するため、国土全体を「都市」「水田」「畑地」「自然林」「二次林・人工林」「自然・半自然草地」「人工草地」「自然裸地」「人工裸地」「水面」の土地被覆タイプに分類し、自然的・社会的特徴を整理したモデルを構築した。

 その結果、日本全体で500kW以上の太陽光発電所が占める面積は、国土の0.079%となる合計229.211km2であり、そのうち66.36%を中規模(500kW~10MW)施設が占めた。これは、比較的小規模の施設が累積的に自然環境を損っていることを意味するという。失われた生態系は、二次林・人工林、人工草原、畑、水田など里山の環境が多い傾向となった。

 また、自然保護区に該当する場所でも合計1027施設・合計約35km2の太陽光発電所の建設が確認された。鳥獣保護区域内では605施設・合計約20km2、都道府県立自然公園内では245施設・合計約8km2、国立公園内では101施設・合計約5km2が確認された。これらの68.4%は中規模施設(500kW~10MW)だった。

 このほかにも、大規模(10MW以上)太陽光発電所が建設されやすい場所に影響する要因としては、土地被覆だけでなく、地形の傾斜、地形的な日当たりの良さ、標高が低いこと、人口密度が高いことなどの影響が強く認められた。構築したモデルを用いて建設されやすい場所の予測地図を作成した。

 これまでと同様の立地条件で設置場所が選択されると樹林や農地がさらに失われ、全体の施設面積が2倍になった場合、自然保護区内での建設は2.66倍に増加することが予測された。一方、設置面積を2倍にしても自然保護区での設置を制限し都市での建設に誘導することで、樹林や農地の生態系の損失を1.3~3.5%程度抑制できることが分かった。