水素

国交省、水素社会実現へ、「カーボンニュートラルポート」構築(page 2)

小名浜港など全国6地域の港湾を選定して検討

2021/04/28 23:30
山口健 = 日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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率先して取り組む小名浜港

 2050 年のCNP形成に向け、福島県いわき市の小名浜港は積極的に取り組む(図3)。

図3●小名浜港におけるCNP形成イメージ
図3●小名浜港におけるCNP形成イメージ
小名浜港は、大型船による大量輸送で資源の輸入コストを下げる「国際バルク戦略港湾」の指定を国から受けており、ここでは主に発電用石炭を扱う。今後、火力発電所は水素、アンモニアなどのカーボンゼロ燃料に順次切り替えられていく方向であり、周辺に大掛かりな需要先を持つことになる。輸入される石炭や非鉄の鉱石は福島県内のほか、東北各地の発電所や工場に輸送される。トラックや内航船などが集中する港湾となる。(出所:国土交通省、「カーボンニュートラルポート(CNP)検討会の結果及びCNP 形成計画作成マニュアル骨子」)
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 小名浜港は、大型船による大量輸送で資源の輸入コストを下げる「国際バルク戦略港湾」の指定を国から受けており、総投資額1380億円を掛けて一連の設備を建設してきた。ここでは主に発電用石炭を扱い、供給先は東京電力が出資する広野火力発電所(福島県広野町)と常磐共同火力勿来発電所(いわき市)の敷地内に建設中の石炭ガス化複合発電(IGCC)と呼ばれる新発電所などである。2021年末までにベルトコンベヤーや貨物ヤードの整備が終わる見通しで、本格稼働すれば小名浜港の貨物の取り扱い能力は現在の年間約800万tから1300万t強に増える。輸入される石炭や非鉄の鉱石は福島県内のほか、東北各地の発電所や工場に輸送される。トラックや内航船などが集中する港湾となる。

 火力発電所は水素、アンモニアなどのカーボンゼロ燃料に順次切り替えられていく方向だが、こうした技術はまだ開発・実証段階にあり、実装までには一定の時間を要することが想定される。小名浜港においては、短期的にはCNPを構成する技術実証の場となり、全国の港湾に先駆けた取り組みを積極的に展開したいという。

 中期的には、水素やアンモニアなどの需要、他港との連携を踏まえ小名浜港における輸入量や対象船型、使用する港湾施設及び燃料電池トラックの利用を見据えた小名浜港の水素ステーションなどの整備を検討する。長期的には、次世代エネルギー使用量増加に対応した受入・供給体制の構築に向けて検討し、2050 年に小名浜港及び周辺地域におけるカーボンニュートラルを実現するとしている。

小名浜港の需要ポテンシャル

 小名浜港についてCO2の排出状況や、水素や燃料アンモニアなどの需要ポテンシャルを試算した。

 まず、CO2排出量は、ターミナル内から0.4 万t/年、ターミナル外(小名浜港から二次輸送される事業所を含む)から1600 万t/年、ターミナルを出入りする車両・船舶から2.2 万t/年(出入車両1.9 万t/年、船舶0.3 万t/年)、合計1600 万t/年と推計された。

 この結果を踏まえ、現在の経済活動が将来も継続するという前提の基、仮に、石炭火力発電所にアンモニア20%混焼及びターミナル内における荷役機械への燃料電池の活用などが100%実現した場合、水素に換算すると合計29 万t/年、アンモニアに換算すると156 万t/年の水素や燃料アンモニアなどの需要ポテンシャルが見込まれるという。

 これを基に小名浜港は、石炭火力発電における燃料アンモニアの混焼など大量の燃料アンモニア需要に対応した大型船による大量一括輸送を可能とする受入環境、液化水素の受入環境及び港湾物流の脱炭素化(トラック、荷役機械など)について検討していく。

 さらに2021年2 月に改定された福島新エネ社会構想に掲げられているように、関係者と連携し、水素やアンモニアを活用した発電技術の開発・実用化について、積極的に取り組むとともに、燃料電池トラックの導入を推進する。

 また、石炭火力におけるバイオマス混焼の検討や、船内のディーゼル発電機で確保している係留中の船舶内の電力を、再生可能エネルギー由来の電力などによる陸電供給に転換することも検討するとともに、排ガス中のCO2 を分離・回収し、地中に長期間貯留するCCS、利用を行うCCUS についても将来の技術開発を見据えて検討する必要があるとしている。

 一方で、港湾周辺地域でのエネルギー拠点の形成や、資源エネルギー産業などの立地促進に資する小名浜港の利活用策を検討し、CO2排出削減とともに、地域産業を支え被災地の復興に寄与する。

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