金沢大、ペロブスカイト太陽電池を長寿命化、イオン液体添加で

2021/05/18 19:34
工藤宗介=技術ライター
イオン液体を添加したペロブスカイト太陽電池
イオン液体を添加したペロブスカイト太陽電池
(出所:金沢大学)
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イオン液体を添加したペロブスカイト太陽電池の構造とトリプルカチオン型ペロブスカイト膜の表面電子顕微鏡写真
イオン液体を添加したペロブスカイト太陽電池の構造とトリプルカチオン型ペロブスカイト膜の表面電子顕微鏡写真
(出所:金沢大学)
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湿度30%~40%範囲の通常大気下での暴露試験結果
湿度30%~40%範囲の通常大気下での暴露試験結果
(出所:金沢大学)
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 金沢大学は4月15日、ペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化に成功したと発表した。従来の手法で作製したペロブスカイト太陽電池は2500時間で発電しなくなったが、この技術を用いたペロブスカイト太陽電池は6000時間を超えても初期性能の8割を維持し、ペロブスカイト太陽電池の欠点だった低寿命を克服したという。

 今回の基盤となる技術は、ペロブスカイトを塗布し成膜する前に、イオン液体をペロブスカイト前駆体溶液に少量添加するだけで、数十ナノメートルサイズのナノ粒子膜になるという。同大学の研究グループが6年前に開発した。

 今回、同技術をペロブスカイトの構成分子であるカチオン種をセシウム-ホルムアミジニウム-メチルアンモニウムの3つの陽イオンをベースとしたトリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池に応用した。トリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池は、結晶シリコン型太陽電池に匹敵する高性能で注目されている。

 イオン液体をメチルアンモニウムのみのMAPbI3ペロブスカイト前駆体溶液に添加し塗布製膜すると、MAPbI3ペロブスカイトナノ粒子薄膜が基板上に初期成長される。その上にトリプルカチオン型ペロブスカイトを塗布製膜することで、MAPbI3ペロブスカイトナノ粒子を成長核として、大粒で高結晶性の高品質なグレンインサイズが大きい、欠陥の少ないトリプルカチオン型ペロブスカイト膜を得ることに成功した。

 作製した太陽電池のエネルギー変換効率は19.4%と高く、電流値である短絡電流密度も25.3mAcm-2と大きな値を示した。イオン液体添加による高品質化で全体的な光捕集効率およびキャリア輸送性能が向上したことに起因すると考えられる。また、暴露試験において湿度30~40%の範囲の通常大気下で6000時間性能が8割保持された。膜の高品質化およびイオン液体層が外部からの水の侵入を防いだため長寿命化したと考えられる。

 ペロブスカイト太陽電池は、材料が安く塗布で成膜できるため安価に製造できる次世代太陽電池と期待される。今回の研究成果により、ペロブスカイト太陽電池の実用化および更なる高性能化と低コスト化を目指していく。