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実用サイズで世界最高効率の人工光合成セル、豊田中研が開発

2021/05/19 20:00
工藤宗介=技術ライター
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36cm角の人工光合成セル
36cm角の人工光合成セル
(出所:豊田中央研究所)
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人工光合成セルの構造
人工光合成セルの構造
(出所:豊田中央研究所)
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人工光合成の原理
人工光合成の原理
(出所:豊田中央研究所)
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 豊田中央研究所(愛知県長久手市)は、太陽光を利用してCO2と水から有用物質を合成する人工光合成について、実用太陽電池サイズの人工光合成セルを新たに開発し、世界最高クラスの太陽光変換効率7.2%を実現した。4月21日に発表した。

 同社が開発を進めている人工光合成は、CO2の還元反応と水の酸化反応を行う電極を組み合わせて常温常圧で有機物であるギ酸を合成する。2011年の原理実証時には変換効率が0.04%だったが、2015年には1cm角サイズで植物を上回る4.6%を実現した。その一方、変換効率を低下させずに実用サイズに拡張するのは技術的に困難とされてきた。

 今回、基本原理はそのままに、太陽光で生成した多量の電子を余すことなくギ酸合成に使用する新しいセル構造と電極を考案し、実用サイズを実現した。太陽電池で生成した電子量とのバランスが良いサイズに電極表面を拡張し、電子、水素イオン、CO2を電極全面に素早く途切れることなく供給することでギ酸合成を促進する。

 新しい人工光合成セルは、36cm角の太陽光パネルの背面に酸化電極と還元電極を5組配置した構造で、奥行きは25cm。ギ酸の生成速度は93.5mmol/h。電極寿命(連続稼働での長期安定性)は、今後評価する予定という。

 今回はあくまで技術実証であり、実用化についてはこれから議論していく。新しいセル構造は、より大きなサイズにも適用可能であり、将来的には工場などから排出されるCO2を回収して資源化するシステムの実現を目指していく。

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