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臨海部を中心に「脱炭素」産業拠点、茨城県が構想

2021/05/27 21:13
工藤宗介=技術ライター
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臨海部カーボンニュートラルの全体像
臨海部カーボンニュートラルの全体像
(出所:茨城県)
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 茨城県の大井川和彦知事は、5月26日に開催された定例記者会見の場で「いばらきカーボンニュートラル産業拠点創出プロジェクト」を発表した。同県の臨海部を中心に新エネルギーの供給拠点および需要拠点を整備し、新しい産業を創出しながら産業競争力や立地競争力を強化する。

 同県のCO2排出は大規模産業の割合が大きい。全国ではCO2排出量の4割強が産業系なのに対し、同県では産業系の比率が6割近い。特に、産業排出量の多い事業場は臨海部に集中しており、臨海部の市町村では特定事業場の排出量が全体の88%を超えている。

 また、カーボンニュートラルは、今後の成長の原動力になると考えられる。例えば水素やアンモニアといった新エネルギーは、製造やサプライチェーンに課題が多く技術開発の途上にある。エネルギー構造の抜本的な転換に必要な技術開発や設備投資なども今後必要になることから、大きな産業発展の機会になり得る。

 同プロジェクトでは、港湾の存在と関連産業・研究機関の集積という同県のポテンシャルを生かし、臨海部をカーボンニュートラルの拠点として整備する。港湾部を中心に新エネルギーの供給拠点および需要地点、カーボンリサイクル拠点とするとともに、イノベーション拠点として茨城大学や筑波大学、つくば市の研究機関を活用していく。

 県が実現を期待するプロジェクト分野としては、新エネルギー供給拠点では、輸入水素の受入・供給体制(サプライチェーン)の整備、洋上風力や太陽光を活用したグリーン水素生産、洋上風力発電によるクリーン電力供給などを挙げる。

 また、新エネルギー需要については、火力発電での水素・アンモニア混焼(将来的には専焼化)、水素還元製鉄や大型電炉などによるゼロカーボンスチール生産、石油精製や石油化学へのグリーン水素導入、物流のカーボンニュートラル化、スマートシティでのエネルギー最適利用など。カーボンリサイクルでは、人工光合成による化学品製造、メタネーションおよび合成液体燃料製造(H2とCO2からのメタン・液体燃料の生産)などを挙げる。

 こうした新産業の育成に向けて「機運醸成」「体制構築」「支援充実」の3つの対策を掲げる。機運の醸成では、「カーボンニュートラルビジネス促進区域」の設定、新エネルギー需要の「見える化」、カーボンニュートラル技術動向の調査について、速やかに着手する。

 推進体制の構築では、民間企業・行政・研究機関などが参加する「いばらきカーボンニュートラル産業拠点創出推進協議会」の設置、技術提案や規制緩和の相談などをワンストップで対応する相談窓口の設置に速やかに着手する。また、来年度に向けてプロジェクトを一元的に担当する専任組織の設置を検討する。

 支援の更なる充実では、同県独自のさまざまな支援制度を最大限に活用する。研究施設・本社機能移転への補助に最大50億円、基礎研究への支援(筑波大学などとの共同研究)に約3000万円、応用研究への支援に約1億円、実証・製品化への支援に約1500万円を予定するほか、個別プロジェクト形成に向けて新たな伴走型支援を打ち出して行く。

 今年度中に協議会の立ち上げから、さまざまな調査分析、プレーヤーの掘り起こし、国の支援制度の活用を開始する。2022年度以降、短期的プロジェクトの実現により2030年度の温室効果ガス46%削減、中長期的プロジェクトの実現により2050年度の温室効果ガス排出実質ゼロを目指す。

 臨海部の脱炭素への取り組みに関しては、産業技術総合研究所(産総研)が、東京湾岸周辺エリアを革新的な脱CO2技術に関する実証エリアとすることを目的する「東京湾岸ゼロエミッションイノベーション協議会(ゼロエミベイ)」を発表している(関連記事:東京湾岸エリアを「水素」「CCUS」など脱CO2ショールームに)。

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