需要家が「非化石証書」を直接購入、全量に「発電源証明」付与

国内の再エネ・トラッキングは国のシステムに収斂へ

2021/06/07 17:38
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

 経済産業省は6月3日、有識者会議(再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会)を開催し、電力需要家が直接、再エネの「非化石証書」を購入できる新市場を創設するとともに、トラッキングシステムを本格化させると公表した。

 現在、電力需要家が使用電力を実質的にカーボンフリーとするため非化石証書を調達するには、小売電気事業者から電気といっしょに購入するしかない。2021年10月以降、新設する「再エネ価値取引市場」からオークションを通じて、需要家が電気とは別に環境価値(非化石証書)だけを直接、調達できるようになる。

 「再エネ価値取引市場」の創設に伴い、従来、小売電気事業者向けに運営されてきた非化石価値取引市場は、「高度化法義務達成市場」に衣替えし、固定価格買取制度(FIT)を利用していない、再エネ以外の「非FIT(再エネ指定なし)証書」(原子力など)と「非FIT(再エネ指定)証書」(卒FIT再エネ電源など)だけを小売電気事業者向けに提供する。

図1●「再エネ価値取引市場」と「高度化法義務達成市場」のイメージ
図1●「再エネ価値取引市場」と「高度化法義務達成市場」のイメージ
(出所:経産省)
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 新設する「再エネ価値取引市場」は、FITを利用した再エネによる「FIT証書」を取引対象とし、小売電気事業者のほか、広く電力需要家が参加できる。まずは、「FIT証書」だけでスタートするが、順次、非FIT再エネの証書も加えていくとしている。

 大雑把に言うと、小売電気事業者がエネルギー供給構造高度化法で課されるゼロエミション電源比率をクリアするためにから原子力由来などの非化石証書を購入するのが「高度化法義務達成市場」。RE100加盟企業など電力需要家などが、再エネ由来の非化石証書を購入するのが「再エネ価値取引市場」という区分けになる。

 ただ、今回「再エネ価値取引市場」で取り扱いを始めるFIT証書に関しては、すでに稼働済みの再エネの環境価値を電気と切り離して取引するだけなので、新規再エネを増やす効果の大きい「追加性」はない。従来の非化石価値取引市場と同様、再エネ賦課金の国民負担を軽減する効果に限定される。

トランキングシステムは1つに収斂へ

 RE100など国際的な環境団体は、再エネの環境価値(証書)にトランキングシステムによる発電源証明を求めている。このため、新設する「再エネ価値取引市場」では、ほぼ全量にトラッキング情報を付与し、発電源証明の性格を持たせる方針だ。

 経産省は、すでに実証事業という形で、非化石証書の一部にトラッキング情報を付与してきたが、トラッキングのための情報開示に当たり発電者の同意を得ていることもあり、トラッキング付き証書の発行量は僅かにとどまっている。新市場開設に伴うトラッキングでは、発電者の同意取得を不要とする方向で検討している。

 国が電力需要家向けに「発電源証明付きの非化石証書」を本格的に提供する仕組みを創設することで、国内の再エネ・トラッキングシステムは、経産省主導の仕組みに収斂していくことになりそうだ。世界的には、再エネ・トラッキングシステムの運用は1地域で1機関とされている。これは複数のトラッキングシステムが併存すると再エネ電源をダブルカウントするリスクがあるためだ。日本では、現在、経産省のトラッキング実証事業のほか、複数の民間事業者が独自にトラッキングを行っているが、「再エネ価値取引市場」の創設と発電源証明の機能により、国のシステムに収斂していく可能性が高い。

図2●非化石価値を取引する2つの市場の検討・実施スケジュール
図2●非化石価値を取引する2つの市場の検討・実施スケジュール
(出所:経産省)
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