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小泉大臣が「再エネ立地交付金」に言及、自治体への資金支援に一石

2021/06/14 00:02
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ
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国・地方脱炭素実現会議の様子
国・地方脱炭素実現会議の様子
(出所:首相官邸)
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 首相官邸が主催する「国・地方脱炭素実現会議」の第3回会合が6月9日、総理大臣官邸で開催され、「地域脱炭素ロードマップ」が公表された。

 同ロードマップは、再生可能エネルギーの導入など、自治体と国が連携して脱炭素に取り組むことで、経済成長と地域活性化を目指すもの。目玉の1つとして、少なくとも全国100カ所に「脱炭素先行地域」を設け、再エネを最大限に追加導入することなどを掲げている。具体的な施策では、公共施設などへの自家消費型太陽光の設置や、農業委員会と連携した再エネ促進区域の選定(ポジティブゾーニング)などを挙げている。

 具体的な目標として、「政府及び自治体の建築物及び土地では、2030 年に設置可能な建築物等の約50%に太陽光が導入され、2040 年には100%導入されていること」「2030 年までには太陽光併設型の家庭用蓄電池、業務・産業部門に導入される蓄電池が経済性を持つシステム価格を実現」などを記載した。

 加えて、こうした自治体主導の再エネ導入を支える裏付けとして、「資金支援の仕組みを抜本的に見直し、複数年度にわたり継続的かつ包括的に支援するスキームを構築する」と明記した。この点については、同会議最後の「まとめ」で、菅首相が「国から地域への資金支援を複数年度にわたって継続的に可能とすることで、自治体が脱炭素化の取り組みを計画的に進めやすくする」と、真っ先に述べたことからも、重点施策と分かる。

 また、同会議後、小泉環境大臣は報道陣向けの会見で、「再エネ立地交付金のようなイメージもある。再エネが動けば支援が出るという仕組み」と言及している。

 この発言の前日、小泉大臣は定例会見で、記者からの質問に答える形で、「再エネにかかるコストばかりを強調されることはおかしい。電源立地交付金では、(原発が)再稼働すればお金が下りる。再エネにこんなことはない。かつて国策民営で動いた原発だからそれだけ金が動くというなら、再エネは今、国策。なぜ再エネだけが『国民負担』と言われるのか。私はそういうのを変えていきたい」と発言している。

 電源立地交付金とは、原発や水力などの設置や運営を円滑化するため、電源地域の自治体に交付される仕組みで、原発の立地自治体に多く支払われている。原資は電源開発促進税で、電気代に含まれて消費者が負担している。

 実は、電源立地交付金の対象にメガソーラー(大規模太陽光発電所)の立地地域を加えてほしいと、政府に要望した首長がいた。日本有数のメガソーラー集積地である岡山県美作市の萩原誠司市長だ。だが、要望はかなわず、同市では、その後、地方税法に基づく法定外目的税として「太陽光パネル税」の導入を目指した。事業用太陽光発電所のパネル設置面積に応じ、発電事業者に課税するものだったが、今年3月に議会で否決された。

 小泉環境大臣が言及した「再エネ立地交付金」の詳細な構想内容は不明だが、電源立地交付金の対象ではない太陽光や風力発電の立地地域に対し、発電設備の運用による収益の一部が還元される仕組みをイメージしていると思われる。

 「地域脱炭素ロードマップ」で掲げた100カ所の「脱炭素先行地域」、温暖化対策推進法の改正で自治体に課した「再エネ促進区域」の設定など、自治体主導の再エネ導入の大きな課題は、それにかかる費用をだれが負担するのか、そして、再エネ導入による地域への経済的な利点をいま以上に魅力的にできるのか、という点だ。

 例えば、東京都に本社のある企業が地方にメガソーラーやウインドファームを建設し稼働した場合、立地自治体に還元されるのは固定資産税だけで、発電事業の収益にかかる法人事業税は、東京都に納められることになる。大規模な再エネの場合、当初、固定資産税による税収は大きいが、発電設備の原価償却が進むに従って急速に減っていく。

 「脱炭素先行地域」や「再エネ促進区域」の指定に伴い、今後、追加的にメガソーラーやウインドファームを建設するには、ゾーニングや用地集約など大規模な立地整備が必要で、かなりの手間や費用がかかる。自治体がそれに取り組んで再エネを誘致しても、自治体に還元される資金が限定的となれば、自治体には意欲が沸かない。

 34の道府県などで組織した自然エネルギー協議会は6月9日、政府に提言を行った。その中で、温対法で「再エネ促進区域」の設定を義務化したことに関連し、「人的支援や費用の全額負担など国が最大限の支援を構築すること」と要望した。さらに、再エネ発電事業の法人事業税が、東京都など本社のある地域に納付されていることに触れ、「地域のインフラを利用して得た利益は地域へ還元すること」なども要望している。

 経済産業省は、地域還元型の再エネとして、「地域活用電源」という区分を創設し、自家消費や緊急時の自立運転などレジリエンス性向上を条件に再エネ事業を支援する制度を導入したが、発電事業の収益を自治体に還元するという視点は検討されていない。

 「再エネ立地交付金のようなイメージもある。再エネが動けば支援が出るという仕組み」との小泉大臣の発言は、こうした自治体からの要望も踏まえ、自治体主導の再エネ導入には、自治体への経済的な還元が不可欠との問題認識がありそうだ。

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