太陽光発電所敷地の「生態系リデザイン」事業、植生を回復

2021/06/17 21:49
工藤宗介=技術ライター
「生態系リデザイン」サービス提供フロー
(出所:ETSホールディングス)
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 ETSホールディングスと、京都大学発のベンチャー企業であるサンリット・シードリングス(京都市)は6月16日、太陽光発電所の敷地における「生態系リデザイン」事業を開始すると発表した。希少生物が生息しなくなった土地の「植生回復」だけでなく、収益性の向上や災害予防などにも寄与する。

 太陽光発電所の建設では、山林・農地・大規模未利用地などが利用され、森林の伐採や土地の造成が必要なため動植物の生態系に悪影響を及ぼすことが指摘されている。特に、50~100年先に稼働を終了した跡地の適切な扱いについては、事業者や自治体にもノウハウがなく、必要な対応に着手できていないのが実情という。

 同事業では、敷地の生態系の価値を適切に把握することで、希少な動植物や生態系の地盤となる微生物の育成・維持を可能とする生態系の構築に導くことを目指す。太陽光発電稼働終了後に、所望の生態系サービスを提供・構築することが可能になるとしている。

 太陽光発電建設候補地で試料を採取し、微生物叢や生態系を評価する。生態系調査や試料のDNA分析結果から植生・遷移を設計し、試料から単離・培養した微生物を活用して土づくりや植物の育成促進を行う。発電所の工事から稼働中、稼働後にわたって適宜生態系を評価しながら、発電事業終了後を見据えた生態系を構築・管理する。

 太陽光発電所稼働終了後の跡地における生態系が本来持つ二酸化炭素吸収や土壌保全といった機能の回復のほか、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)における土壌把握による農作物栽培の収益性向上、発電所敷地に適した植物を生育することで降雨時の土砂流出の抑制・保水力の向上などが期待される。

 ETSは、これまで合計300MW超の太陽光発電所の設計・工事を手掛けており、かねてから太陽光発電における環境や生態系の配慮、稼働終了後の自然への理想的な回帰方法を模索してきた。今回、京都大学の植物微生物の共生ネットワークの解明・制御に関する研究成果を社会実装するサンリットの生態系リデザイン事業に共感し、共同事業の開始に至ったという。

 両社は今後、再エネ電源を求める事業者や荒廃した生態系を抱える地方自治体向けにサービスを提供する。理念をともにする企業や自治体にも同事業の実施に必要な知識やノウハウを提供し、理念実現のために協力し合うネットワークの形成に着手していく。