水素

水素の大規模調達を可能にする「現実解」(page 3)

MCH利用を推進する千代田化工が海外戦略の一端示す

2021/06/30 17:00
山口 健=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ 
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年間30万tの商用規模へ

今後はどのような展開になりますか。

森本 2015~20年にかけて実施された、NEDO支援による、世界初の国際間水素サプライチェーン事業実証では、設備規模として年間210tの水素の輸送・取り出しを行いました。この事業実証の目的・意義は、ブルネイ-日本間の長距離海上輸送をしたこと、脱水素で取り出した水素を発電燃料として安定的に供給したことの2つです。

 今後は「実用規模」へ、さらにスケールアップしていきます。

 千代田化工は、2020年代半ばの準商用規模(年間数万t)、そして2030年の商用規模(年間数十万t)の水素サプライチェーンの構築を目指しています。その規模は、210t/年よりはるかに大きいものになります。大規模の集中型脱水素装置では、最大年間30万tの規模を実用(=商用)規模と見ています。

MCHは大規模海上輸送用に目が向きますが、国内のローカルな輸送についてはどうですか。

森本 MCHは国際サプライチェーンなどの大規模利用向けだけではなく、国内の中小規模な水素利用向けの技術開発も並行して行っています。

 例えば燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションに設置できるように、コンパクトな脱水素設備を開発しました(図5)。これはNEDOの支援による研究開発です。この施設では、1 時間当たり約 3kg の水素に相当する 30Nm3の水素を製造できます。

図5●小型脱水素パッケージを使ったオンサイト水素ステーション
図5●小型脱水素パッケージを使ったオンサイト水素ステーション
(出所:千代田化工建設、2021 ICCHEI、2021年5月28日)
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 また、出力変動を伴う風力発電が電力系統に大量に接続されることを想定し、給電指令所から出されるLoad Frequency Control(LFC)信号(模擬)を水電解装置に印加して水素を製造し、この生成量が変動する水素を精製し、さらにMCHとして貯蔵するシステムおよび要素技術の研究開発を行ないました(図6)。

図6●再生可能エネルギーを水素へ転換する「Power to X」の実証
図6●再生可能エネルギーを水素へ転換する「Power to X」の実証
NEDOの委託事業「水素社会構築技術開発事業、『水素(有機ハイドライド)による再生可能エネルギーの貯蔵・利用に関する研究開発』」の成果。(出所:千代田化工建設、2021 ICCHEI、2021年5月28日)
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 千代田化工が建設済みの実証プラントに加え、新たに実証プラントを増設して実証試験を実施しています。この結果、MCHは変動するエネルギー源を安定させるためのバッファーとして機能することが確認できました。千代田化工のプロセスとシステムが、これら変動するエネルギー源を柔軟かつ安定して管理できることを証明しました。

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