ニュース

潮流発電で「スマートブイ」、低コスト・省保守で海中を「見える化」

2021/07/16 07:45
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
印刷用ページ
開発の概要
(出所:京セラ)
クリックすると拡大した画像が開きます
2種類を構想
(出所:京セラ)
クリックすると拡大した画像が開きます
余った電力は貯める
(出所:京セラ)
クリックすると拡大した画像が開きます
それぞれの特徴
(出所:京セラ)
クリックすると拡大した画像が開きます
試作品
(出所:京セラ)
クリックすると拡大した画像が開きます
実証試験の様子
(出所:京セラ)
クリックすると拡大した画像が開きます
実証の結果
(出所:京セラ)
クリックすると拡大した画像が開きます

 京セラと長崎大学は7月14日、潮流発電による自立電源で、長期間・安定的に海中のデータを収集・送信できる「スマートブイ」の開発状況を発表した。

 海中の潮流の速さや方向、水温などの状況を、ブイを使って定点で定期的に計測し、海の状態を「見える化」できれば、養殖をはじめとする漁業などに大きな利点がある。

 ただし、電池の交換や定期的なメンテナンスなどの作業をするのは現実的ではない。

 そこで、一度設置したら交換やメンテナンスの手間が要らず、長期的にデータを収集・送信できることが不可欠となっている。

 また、より広域で詳細なデータを活用できるようにする目的で、多数の場所にばらまくように設置できるように、ブイをできるだけ低コスト化したい。

 今回は、ブイが備える再エネ電源だけで消費電力を賄える、自立的なシステムを構想している。

 長崎大学の潮流発電の技術に、京セラのデータ収集・送信・処理などの技術を融合して開発している。

 潮流発電システムは、2種類を試作した。

 1つは、ブイと発電システムを分けたタイプである。潮流を受けて動力に変えるタービンは、海中で垂直方向に向くように設置する。風力発電のタービンを、その向きのまま海中に沈めるイメージである。

 タービンは、筒状のディフューザーの中にあり、海中のゴミなどが接触して損傷するリスクを低減するように工夫されている。タービン付近の潮流を速くできる利点もある。

 もう1つは、ブイと発電システムを一体化したタイプである。こちらは、タービンを海中で斜め方向に傾くように設置する。垂直にするよりも、より流動抵抗を受けにくいという。

 両方とも、潮流で発電した電力をデータの計測と送信に使い、余った電力をブイの中にある蓄電池に貯める。この消費電力よりも潮流発電電力の方が多い運用ができれば、自立的な電源のみで持続的に運用できることになる。

 今回の設計では、京セラの人工知能(AI)や遺伝的アルゴリズムを活用した。

 試作したブイを使って、長崎県五島市奈留町の末津島の近くの海で、実証実験を実施した。海底には砂袋を沈めて、これと水上に浮かべた係留用のブイをロープでつなぎ、このロープに「スマートブイ」を係留した。

 ブイと発電システムを分けたタイプは、平均発電量の16.3Whに対して、平均消費電力が15.2Whと発電量が上回り、自立的な運用の見通しが立つ結果となった。データの収集は5分間隔で実施した。

 ブイと発電システムを一体化したタイプは、平均発電量の3.4Whに対して平均消費電力が7.8Whとなり、消費電力の方が上回った。発電量が少なかった原因として、潮流が想定より遅かったことなどが影響したという。

 計測したデータは、21種類という。タービン部で流速や流れの向き、水温などを計測するとともに、ブイの内部に加速度センサーや全地球測位システム(GPS)などを備え、位置情報などのデータを計測した。

  • 記事ランキング