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廃パネルを「炭化処理」、ガラス、線材、セルに分離

新見ソーラーカンパニーが電気式熱分解による処理装置を製品化

2021/07/20 22:39
金子憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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現在、実証運転しているバッチ式の熱分解装置
現在、実証運転しているバッチ式の熱分解装置
(出所:新見ソーラーカンパニー)
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熱分解処理で残ったガラスと線材、シリコンセル
熱分解処理で残ったガラスと線材、シリコンセル
(撮影:日経BP)
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製品化を予定している連続式の熱分解炉は日量50枚の処理能力を持つ
製品化を予定している連続式の熱分解炉は日量50枚の処理能力を持つ
(出所:新見ソーラーカンパニー)
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 太陽光発電システムの開発販売を手掛ける新見ソーラーカンパニー(岡山県新見市)は、使用済み太陽光パネルを炭化処理して、カバーガラスや銅線材、シリコンセル(発電素子)片に分離する熱分解装置を開発した。

 開発した熱分解炉は、内壁を耐火レンガで構成した窯に、アルミフレームと電極・端子ボックスを外した廃パネルを入れ、数百度の高温蒸気を吹き込んで無酸素の環境下、常圧で蒸し焼きする。熱分解処理により、バックシートと封止材(EVA)、銅線被覆などの有機成分はガス化・炭化して水と炭に化学変化し、無機分のガラスと銅線、シリコンセルが残る。

 使用済み太陽光パネルの処理で、マテリアルリサイクル(材料の再利用)率を高めるには、カバーガラスと、EVA・バックシートを完全に分離する必要がある。粉砕して比重分離したり、ホットナイフ(高温にした刃)で分離したりする手法があるが、ガラスの一部に有機分が付着するなど、素材ごとの完全分離に課題があるという。

 新見ソーラーカンパニーが開発した熱分解法の場合、炭とガラス、線材、シリコンセルに完全に分離するため、残った無機分を有価物として再生事業者に販売しやすくなり、マテリアルリサイクル比率の向上が期待できるという。

 熱分解処理装置に送り込む高温蒸気は、トクデン製の過熱蒸気発生装置を採用した。同装置は電気式のため、化石燃料によるボイラーを用いず、使用電力をカーボンニュートラルにすることで、処理時の温室効果ガスの排出を抑制できる利点もある。

 炭化炉の内壁に使用する耐火レンガに保温性と蓄熱性を持たせることで、投入する熱量を最小限に抑えた。現在、実証運転している熱分解装置はバッチ式で1日(8時間)に太陽光パネルを15枚処理でき、その際の消費電力は150kWh、ピーク出力は30kWという。

 熱分解炉からの排気には、微量の炭化水素成分(油分)が含まれるため、現在は水フィルターを通して浄化しているが、熱分解工程を最適化することで、油分の排出をほとんどなくすことも可能と見ている。

 同社では、現在、連続処理式で1日に50枚処理できる熱分解装置を設計しており、販売価格は1億5000万円程度を予定しているという。外寸は幅2m、全長12m、高さ1.5m程度になる。同社・佐久本秀行社長によると、「現在、使用済み太陽光パネルの処理を廃棄物事業者に委託した場合、料金単価は1枚3000~3500円で、将来的に下がる可能性もある。今後、熱分解装置を量産して製造コストを下げることで、処理単価が2500円/枚に下がっても処理事業が成り立つようにしたい」と言う。

 佐久本社長は、「近い将来、世界的に大量の廃パネルが排出され、マテリアルリサイクル率を向上させつつ脱炭素可能な素材分離技術が求められるようになる。開発した熱分解装置は、電気式で比較的、小型のため、廃パネルの排出地域ごとに分離処理でき、廃パネルを地域で素材として循環させることも可能になる」と話す。

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