水素

内燃機関「カーボンゼロ」へ、期待の再エネ合成燃料(page 5)

「2030年までに量産技術確立は必達目標」、ENEOS執行役員・藤山氏に聞く

2021/08/17 20:00
山口健=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ
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水素と合成燃料は共存

原料コストも重要ですね。

ENEOSの藤山優一郎・執行役員・中央技術研究所長
ENEOSの藤山優一郎・執行役員・中央技術研究所長
(撮影:清水盟貴)

藤山 その通りです。コスト削減は技術面以外の影響も大きく、例えば、原料となるCO2フリー水素とCO2の安価な調達などが重要な課題です。CO2フリー水素のコストの大半は電気代です。複数の調査機関によると、再エネ合成燃料のコストは、現在の国内再エネ電源による水素製造価格では、燃料価格として500円/lを超えているものの、将来、水素価格が政府目標の20円/Nm3まで下がれば、200円/l程度に下がると予測されています。

 なお、2040年ごろの自立商用化フェーズにおける合成燃料の価格は、その環境価値を含めた価格であると想定しています。再エネ水素が安く手に入るようになる時代に、わざわざコストを掛けて燃料を合成することを疑問視する向きもありますが、合成燃料は既存のインフラがそのまま使えます。両者は共存していくと見ています。

 生成した合成燃料のエンジン、タービンなどへの適用性は今後検証する予定ですが、どのような方法で実施するかはまだ確定していません。合成燃料の元となる合成粗油は、ガソリン、ジェット燃料、灯油、軽油などの混合物になります。精製後の比率は今後、実証試験を通して検証したいと考えていますが、ガソリンの生産量はまだ確定していません。ジェット燃料や、商用車に使う軽油などのユーザーの方が、合成燃料の環境価値をより理解してくれる可能性もあると思います。生産量は市場ニーズを見ながら決めることになります。

編集注:カーボンニュートラルを目指す中で、従来のTtW(tank to wheel:燃料タンクから走行までのCO2排出量)ではなく、WtW(well to wheel:油田・ガス田から燃料製造、走行時を含めたCO2排出量)やLCA(life cycle assessment:クルマの製造から廃棄までのサプライチェーン全体におけるCO2排出量)という尺度でCO2の排出削減が求められるようになっている。例えば、大半を水力などの再エネで賄う北欧や原発の多いフランスなどではEVが正解であるが、未だ発電時に化石燃料を多く使う中国や日本などの場合は、蓄電池のみで走るEVよりハイブリッド車の方がCO2排出量を抑制できるケースもある。再エネ合成燃料が実用化されれば、さらにハイブリッド車の環境価値が高まる可能性がある。

 こうした水素利用の動向に関しては、日経BP 総合研究所が昨年発行した「世界水素ビジネス-全体動向編-」の中で、「作る」「運ぶ/貯める」「使う」ための各種技術の解説のほか、中国・韓国・欧⽶豪の戦略を分析、2050年までの水素普及シナリオを紹介している(世界水素ビジネスー全体動向編ー」の案内サイト)。

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