ヤンマーホールディングスのグループ会社であるヤンマーパワーテクノロジー(大阪市)は10月13日、船舶用燃料電池システムを搭載した実証艇を使い、大阪・関西万博会場予定地と市内沿岸部の観光地を結ぶ航路を試験的に運行したと発表した。70MPaの高圧で水素を充填した。
トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「MIRAI」向け燃料電池ユニットをベースに船舶用燃料電池システムを開発し、自社製ボートに搭載した。3月から大分県近海で実証試験を開始、9月中旬からbiid(神奈川県藤沢市)が運営する大阪北港マリーナ(大阪市)を拠点に航行を開始した。
固体高分子型燃料電池モジュール2基(MIRAI2台分)と蓄電池、70MPaの高圧タンク8本(MIRAI4台分)を搭載した。出力は250kW(うち燃料電池が184kW)。船体型式はEX38A(FCプロト艇)で全長12.4×全幅3.4m、総t数は7.9t。
船舶への70MPa高圧水素充填は世界初という。豊田通商と共同で、特別に許可を得た高圧充填設備と新たに試作した水素充填ホースを用いた。速度10~12ノットで航続時間は約3時間。従来の充填方式(15MPa)と比べて航続時間が3倍以上となり、より実運用に近い航行が可能であることを確認した。
ヤンマーパワーテクノロジーは、トヨタ自動車製の燃料電池モジュールを活用した300kW級の船舶用燃料電池システムの開発を進めている。今後、さまざまな船種に搭載できるように船級協会の型式承認を取得し、2023年の市場投入を目指す。