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ペロブスカイト太陽電池、野外環境で20年の耐久性、日欧共同研究で成果

2021/11/23 11:14
工藤宗介=技術ライター
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炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池の構造と光照射により生じるイオン移動と電荷集積のイメージ
炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池の構造と光照射により生じるイオン移動と電荷集積のイメージ
(出所:兵庫県立大学、紀州技研工業、JSTの共同発表)
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疑似太陽光を照射した際の発電出力特性の変化
疑似太陽光を照射した際の発電出力特性の変化
(出所:兵庫県立大学、紀州技研工業、JSTの共同発表)
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光照射中および前後の低周波数領域キャパシタンスの変化
光照射中および前後の低周波数領域キャパシタンスの変化
(出所:兵庫県立大学、紀州技研工業、JSTの共同発表)
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 兵庫県立大学、紀州技研工業(和歌山市)、スイスSolaronix、独フラウンホーファー研究所・太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer ISE)による共同研究グループは11月13日、炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池の性能が光照射によって回復するメカニズムを発見し、寿命をシリコン系太陽電池に匹敵する屋外環境20年相当まで改善できることを実証したと発表した。

 ペロブスカイト太陽電池は、シリコン系に対して約300分の1の薄膜で発電でき軽量化も容易などの特徴を持ち次世代太陽電池として有望視される。一方、耐久性が低く寿命が短いことが実用化に向けての最大の課題となっていた。今回、炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池の作成方法に関する検討の過程で、特定の条件下において光を照射すると性能を回復する現象(光改善)を発見した。

 今回開発した炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池は、予め多孔質構造の酸化チタン、酸化ジルコニウム、カーボン電極の3層を印刷で形成し、ペロブスカイトインクを下部まで染み込ませて、ポストアニール処理によりペロブスカイト層を結晶化させたもの。この太陽電池に擬似太陽光(100mW/cm2)を照射すると、太陽電池の出力パラメーターである開放電圧と曲線因子(導電性に関係する特性値)が改善する現象が観測された。

 詳細調査の結果、ペロブスカイト内のイオン移動が光改善に関与していると考察し、電気化学インピーダンス分光においてイオンが関連する低周波数領域のキャパシタンスが光照射中に増大する様子を観測することに成功した。光照射の開始に伴いイオン移動が活性化して電荷の蓄積が起こり、電子の導電性が向上していると考えられる。ペロブスカイトに添加した5-アミノ吉草酸が酸化チタン/ペロブスカイト界面の結晶構造に変化をもたらしたことが、イオン活性化を利用した電子の導電性機構を実現できた理由と推察しており、今後さらなる調査を進める予定。

 この光改善効果を持つ太陽電池は、加速劣化試験によって非常に優れた耐久性を持つことが実証された。85℃/85%相対湿度環境下のダンプヒート試験において、発電出力が初期値の90%になるまでの時間は3260時間であり、これは屋外環境で20年の耐久性に相当する。同電池のシングルモジュールの変換効率は12%前後だが、多結晶シリコン太陽電池に匹敵する16%以上を達成できれば、本格的な実用化が視野に入るとしている。

 炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池は、真空プロセスを必要とせず金属電極と比べて安価(製造コスト削減)であること、完全塗布工程で軽量基板の利用が容易で軽量性を確保しやすいこと、主要材料である炭素電極(グラファイト)とヨウ素の生産量は日本が世界シェア20~30%を占めることから、国際的にも高い競争力を持つことが期待される。

 科学技術振興機構(JST)の戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)EIG CONCERT-Japan「超空間制御による機能材料」による研究成果。研究期間は2019年4月1日~2022年3月31日。今回の成果は、米Cell Pressのオープンアクセス誌「Cell Reports Physical Science」で11月13日公開された。

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