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環境適応型の薄膜太陽電池、実用化に期待

有害元素を含まないn型硫化スズ薄膜、東北大が作製

2021/12/17 21:36
工藤宗介=技術ライター
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n型硫化スズ薄膜の作製に用いた新しい技術の模式図
n型硫化スズ薄膜の作製に用いた新しい技術の模式図
(出所:東北大学)
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有害元素を含まないn型伝導性の硫化スズ薄膜
有害元素を含まないn型伝導性の硫化スズ薄膜
(出所:東北大学)
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 東北大学は12月13日、n型伝導性の硫化スズ薄膜の作製に成功したと発表した。硫化スズは、毒性のある元素を含まず、地球上に豊富に存在する元素のみから構成されることから、有害元素を含まない環境適応型の実用的な薄膜太陽電池の実現が期待される。

 高効率な発電を実現するには、p型伝導性とn型伝導性の硫化スズを組み合わせたpnホモ接合を作る必要がある。しかし、通常の方法で作成された硫化スズ薄膜はp型伝導性を持ち、n型化された例は有害元素を含む硫化鉛との混晶半導体しかなかった。また、n型層に硫化カドミウムなど他の半導体を用いたpnヘテロ接合太陽電池は、変換効率が5%程度と実用レベルには達していない。

 硫化スズは、塩素ドープすることでn型伝導性を示すことが焼結体や単結晶で報告されているが、これまで薄膜ではn型化に成功した例がなかった。研究グループは今回、従来の硫化スズ膜の作製方法では、一部の硫黄が薄膜中に取り込まれず蒸発してしまい、欠損した硫黄に起因した格子欠落が塩素ドープした硫化スズ薄膜のn型化を阻害しているという仮説を立てた。

 そこで、塩素ドープした硫化スズ薄膜を作製する際にプラズマ化した硫黄を供給することで、硫黄の欠損を低減する新たなプロセスを開発し、硫化スズ薄膜をn型化することに成功した。得られたn型硫化スズ薄膜は、高いキャリア密度を持ち、高い電気伝導度を示した。ドープする塩素の濃度を変えることで、電気伝導度を制御することが可能で、太陽電池に適した物性の薄膜を作製できるようになった。

 安全で豊富な元素のみから構成される硫化スズは、学会・産業界からの注目度が高い材料であり、実用的な硫化スズ薄膜太陽電池への道が開かれたことで、関連研究が活発化し変換効率の飛躍的な向上が期待される。東北大学でも、今回のプロセスで得られたn型硫化スズ薄膜を用いたホモ接合太陽電池の作製を進めており、SDGsの達成期限である2030年までの実用化を目指している。

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