北大など、Si同素体の合成で革新、太陽光発電に応用

2022/01/07 22:23
工藤宗介=技術ライター
単結晶Na24Si136が形成する籠状構造からNaが拡散する様子
単結晶Na24Si136が形成する籠状構造からNaが拡散する様子
(出所:北海道大学、東北大学、茨城大学の共同リリース)
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(a)Na24Si136の結晶構造。Siの籠状構造にNaが内包される。(b)Naが取り除かれたSi136の結晶構造。(c)一般的に知られるSiの結晶構造(ダイヤモンド構造)
(a)Na24Si136の結晶構造。Siの籠状構造にNaが内包される。(b)Naが取り除かれたSi136の結晶構造。(c)一般的に知られるSiの結晶構造(ダイヤモンド構造)
(出所:北海道大学、東北大学、茨城大学の共同リリース)
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(a)Na24Si136からNaを除去するためのメカニズム。(b)同手法で得られた試料の外観・断面像・Naの濃度分布。(c)従来の真空熱処理によって得られた試料の外観・断面像・Naの濃度分布。(d)単結晶を厚み方向に削り出した際に見られるNa濃度分布の変化。試料全体で均質にNaが抜けていることが確認できる
(a)Na24Si136からNaを除去するためのメカニズム。(b)同手法で得られた試料の外観・断面像・Naの濃度分布。(c)従来の真空熱処理によって得られた試料の外観・断面像・Naの濃度分布。(d)単結晶を厚み方向に削り出した際に見られるNa濃度分布の変化。試料全体で均質にNaが抜けていることが確認できる
(出所:北海道大学、東北大学、茨城大学の共同リリース)
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 北海道大学は、東北大学、茨城大学らと共同で、Na24Si136の化学式で表される巨大単結晶から、ナトリウム(Na)のみを均質に抜き出す新たな合成プロセスを開発した。このシリコン(Si)同素体は、より多くの太陽光を吸収するため、太陽光発電の基板材料として高い発電能力が期待される。1月5日に発表した。

 Na24Si136は、籠状に結合したSiの内部にNaイオンが内包された化合物になる。これまでSiの籠状構造を直接合成する反応経路は実現していないことから、Na24Si136を一旦合成してからNaを抜き出す必要がある。こうして得られるSi同素体は、現在広く普及しているダイヤモンド構造のSi(d-Si)より大きな光吸収係数を示している。

 巨大単結晶からNaを抜き出す技術は、従来は真空下での熱処理が用いられてきたが、この手法では単結晶が大きくなると内部にNaが残ってしまうことが明らかになった。今回の研究では、異方的にNaイオンの拡散を誘発する環境を作り出し、巨大単結晶から均質にNaイオンを抜き出すための新規プロセスの確立を目指した。

 今回開発した手法は、Na24Si136をNaイオン伝導体(NASICON)に接触させて高電圧を印加。Na24Si136は金属的な特性を持つため内部に電界が生じないが、電子を流さないNASICON内部ではNaに偏りが生じてNa24Si136との接触界面でNa欠乏層が形成される。さらに、450度程度で加熱すると、Siのケージを壊さずにNaのみが排出され欠乏層へ拡散する。このNaの移動は時間経過とともに次々進行するため、単結晶のサイズに関わらずNaを均質に抜き出せる。

 今回の手法を用いた場合、極めて清浄な表面を保持しつつ均質にNaが抜けていることを確認した。一方、真空熱処理を用いた場合はクラックが形成され、表面にNa2CO3が主成分となる白色の不純物が付着し、単結晶内部にはNaが残っていることが確認された。また、真空熱処理の時間をさらに伸ばしてもNaの残留量はほとんど変化しなかった。これは、表面の不純物がNa拡散を阻害するためと考えられる。

 近年、mmオーダーのNa24Si136単結晶が合成されており、これを種結晶とすることで、さらに巨大な単結晶の実現も期待される。太陽光発電の基板素材のほかにも、Siの籠状構造は結晶内にイオンを受け入れる安定サイトとして機能する可能性があることからイオン電池の電極材料など、さまざまな応用開発が考えられる。

 Si同素体は、熱力学的に準安定な物質であり、単純な熱処理で合成するのは難しい。特にNa24Si136のような化合物は、金属的な特性を持つため、Naの拡散を電圧印加で直接制御できない。同研究では、NASICONに形成されるNaの濃度差を巧みに利用することでNa濃度を制御しており、Na24Si136に限らずしかるべき条件を満たす種々の化合物で利用できる可能性がある。この知見は、イオンの拡散が制御可能な母物質を予測し、新規準安定物質の発見を加速すると期待される。