経済産業省は、電力系統に単独で蓄電池システムを接続する「系統用蓄電池」「系統直付け蓄電池」について、電気事業法での位置づけを明確化し、新しいビジネスモデルとして企業の新規参入を促す。電気事業法を改正し、早ければ2022年度中をめどに事業環境を整える。
変動性再生可能エネルギー(VRE)である太陽光・風力発電の増加に伴い、系統の安定運用に有効なエネルギー貯蔵設備の普及が期待されている。すでに英国などでは系統に大型蓄電池を接続して、系統運用者に対して需給調整サービスを提供する事業が伸びている。
経産省が「系統用蓄電池」の解禁に踏み切るのは、第6次エネルギー基本計画で掲げた2030年度の電源構成では、再エネ比率を36~38%とし、そのうち太陽光と風力の合計であるVRE比率だけで19~21%を想定していることが背景にある(図1)。
IEA(国際エネルギー機関)では、電源構成のVRE比率が20%を超えると系統運用が不安定になり、大規模なエネルギー貯蔵設備が必要になると分析している。英国のVRE比率はすでにこの水準に達している。日本のVRE比率は現時点で9%程度と見られるが、このまま需給対策を打たずに太陽光・風力が増加した場合、出力抑制率の上昇で太陽光・風力の投資収益性が下がり、普及の阻害要因になることは明らかで、大規模な蓄電池を系統に接続し活用することが必須になる。
一方国内では、現状、電気事業法上での蓄電池の扱いが不明確で、英国のような系統用蓄電池によるサービス事業ができない。国内に設置されている大型蓄電池は、メガソーラー(大規模太陽光発電所)・大型風力発電所に併設されたり、変電所内に設置されたりしており、再エネや変電所の設備の一部として、運用されている。