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バイオガスからメタノールとギ酸を生成、北海道興部町で実証

2022/06/27 21:41
工藤宗介=技術ライター
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パイロットプラント
パイロットプラント
(出所:エア・ウォーター)
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竣工式におけるテープカットの様子
竣工式におけるテープカットの様子
(出所:エア・ウォーター)
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カーボンニュートラル循環型酪農システムの概要
カーボンニュートラル循環型酪農システムの概要
(出所:エア・ウォーター)
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 大阪大学、北海道興部町、エア・ウォーター北海道(札幌市)、岩田地崎建設(札幌市)の4者は、北海道興部町内にある「興部北興バイオガスプラント」の敷地内に、世界初となるバイオガス(メタンガス)からバイオメタノールとバイオギ酸を製造する光化学プラントのパイロットプラントを建設し、5月26日に竣工式を開催した。

 メタンの光酸化技術は、除菌消臭剤の有効成分として知られる二酸化塩素とメタンガスを特殊な溶媒(フルオラス溶媒)に溶かし、光を当てることで常温・常圧下でメタンをメタノールとギ酸に変換するもの。大阪大学が2018年に発見した。現在は国内需要を全て輸入に頼るメタノールや、酪農地域でサイレージの添加剤として多く利用されるギ酸の国内生産につながる技術として期待される。

 同技術に家畜ふん尿由来のバイオガスを用いることで、固定価格買取制度(FIT)による売電を主なビジネスモデルとしてきたバイオガスプラントの新しいモデルの構築につながる。世界初の「家畜ふん尿由来のバイオエタノール、バイオギ酸」生産という新規産業の創出とともに、温室効果ガスの排出量削減にも大きく寄与する。

 同技術の事業化に向けて、4者は2021年2月に連携協定を締結した。2021年4月からは、より具体的な研究開発の実施とパイロットプラントの設計および構築を目的に、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発委託事業「NEDO先導研究プログラム 畜産系バイオガスのメタノール・ギ酸変換技術の開発」を実施している。

 今回建設したパイロットプラントは、内容量が約1m3(1000L)の反応槽を軸に、興部北興バイオガスプラントで発生するバイオガスを原料に、バイオエタノールとバイオギ酸に変換するフローを設置した。年間54万m3のバイオガスから、年間80tのバイオメタノールと年間400tのバイオギ酸を生産できる見込み。

 同委託事業は、2022年度も引き続き4者体制のもと、生成したバイオエタノールおよびバイオギ酸の抽出フローの設計・構築を続けるとともに、実際に各生成物の生成実験を進め、同技術の全貌解明に努めていく。実際の過程で発生した各生成物は、興部町町内での利用を基本として、ビジネスモデルの構築を検討する。

 2030年度以降に向けたシステムの実用化や実際の酪農地域への導入、生成物の有効活用など、カーボンニュートラル循環型酪農システムの構築に向けた国家プロジェクト創生を見据える。興部町のまちづくり構想に合わせて、バイオメタノールの災害時利用やバイオギ酸の町内酪農利用などを視野に、同技術の町への組み込みを検討し、システムの全国展開への第一歩として取り組んでいく。

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