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東北大が「高透明太陽電池」、窓ガラスに応用も

2022/07/13 21:09
工藤宗介=技術ライター
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(a)高透明TMD太陽電池の光学写真、(b)透過率スペクトル、(c)発電特性
(a)高透明TMD太陽電池の光学写真、(b)透過率スペクトル、(c)発電特性
(出所:東北大学)
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(a)高透明TMD太陽電池の構造模式図、(b)さまざまな金属薄膜を堆積させたITO/石英基板の光学写真、(C)仕事関数と透過率の関係
(a)高透明TMD太陽電池の構造模式図、(b)さまざまな金属薄膜を堆積させたITO/石英基板の光学写真、(C)仕事関数と透過率の関係
(出所:東北大学)
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 東北大学は7月12日、原子オーダーの厚さの半導体2次元シートである遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)を用いて、可視光透過率約80%の肉眼でほぼ存在が認識できないレベルの高透明太陽電池を開発したと発表した。さらに、TMD太陽電池のナノスケールデバイスを大規模集積することで、実用デバイスを駆動できるレベルの発電が可能であることを実証した。

 研究チームは2017年、TMD透明太陽電池の新たな発電機構であるショットキー発電を提唱し、半透明太陽電池の形成を報告した。しかし、電極に不透明なニッケルやパラジウムなどのバルク金属を用いていたため、透明性の高い太陽電池は実現できていなかった。そこで、すでに有効性を実証しているショットキー型原子層太陽電池をベースに、新たに透明電極であるITO(酸化インジウムスズ)電極を活用することで、高い透明性を持つ太陽電池の実現を目指した。

 ショットキー原子層太陽電池で発電効率を高めるには、理想的にはTMDの左右にITO電極が接続したデバイス構造において、原子1層分の厚みを持つTMDがわずか(数%程度)に太陽光を吸収し、励起子である原子-正孔対が生成される。励起子がITO/TMD界面に存在する強電場領域まで拡散すると、電場により電子と正孔が独立で動ける状態に電荷分離され、それぞれ反対方向に移動することで発電する。

 この際、デバイス両側で電荷分離が起きると左右の電流が打ち消し合って発電が起きない。そのため、片方のITO/TMD界面ではできるだけ高いショットキー障壁を、対抗部では低い障壁を形成し、それぞれ電荷分離領域とキャリア補修領域として利用する必要がある。そのため、ITO/TMD間のショットキー障壁を自由に制御できる技術が必要になる。

 今回、ITO電極の表面に数nm以下のさまざまな金属薄膜を堆積させてITO電極の仕事巻数を制御することで、ITOの透明度を維持したままITO/TMD間のショットキー障壁高さの制御を試みた、その結果、挿入する金属薄膜の種類塗膜厚により、ITOの透明度を損なわずにTMD接合部のショットキー障壁高さを制御できることを見出した。単純なITO電極のみと比べて、最適化した金属薄膜/ITO電極構造では発電効率が1000倍以上に向上した。

 また、大面積化に関する研究では、2本の並行電極対からなる基本ユニット構造の面積を単純に拡大したところ、総発電量を増加させることはできず、その原因が面積増加に伴う開放電圧の低下にあることを突き止めた。開放電圧の低下を抑制するため、電極幅と長さから算出されるアスペクト比を一定値以下に設計した結果、デバイス面積の増加に伴い総発電量が増加することを明らかにした。

 この設計指針に基づき、TMD太陽電池を1cm2の石英基板上に大規模集積化した結果、透過率約80%を維持した状態で420Wの太陽光発電を実証した。現在市販される最も低消費電力の電子デバイスは100W程度で駆動できるため、今回の高透明太陽電池でも実用デバイスの駆動が十分可能としている。今後、性能を向上し大面積化を進めることで、ビルの窓ガラス、自動車のフロントガラス、眼鏡、人体の皮膚など、さまざまな環境下での発電が期待される。

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