鉄道沿線に10km!千葉ニュータウンの「最長メガソーラー」

段数の違うアレイ構成で細長い用地に効率的に設置

2017/03/14 05:00
金子憲治=日経BPクリーンテック研究所

頓挫した「成田新幹線」の用地

 成田スカイアクセス線は、京成高砂駅と成田空港駅間をつなぐ約50kmの鉄道。都心と成田空港を40分足らずで結ぶ京成電鉄の「スカイライナー」が時速160kmで疾走する。都内から空港に向かう途中、小室駅を過ぎ、千葉ニュータウン中央駅に近づくと、左側の車窓から、整然と並んだおびただしい枚数の太陽光パネルが目に入る(図1)。

図1●成田スカイアクセス線の沿線に設置された太陽光パネル
図1●成田スカイアクセス線の沿線に設置された太陽光パネル
(出所:日経BP)
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 太陽光パネルは、千葉ニュータウン中央駅から印西牧の原駅、そして、印旛日本医大駅まで、3駅に連なり、約10kmの線路に沿って延々と並んでいる。これは、出力12.8MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「SGET千葉ニュータウンメガソーラー発電所」だ(図2)。

図2●約10kmにパネルが並ぶ「SGET千葉ニュータウンメガソーラー発電所」の完成予想図
図2●約10kmにパネルが並ぶ「SGET千葉ニュータウンメガソーラー発電所」の完成予想図
(出所:SGET)
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 発電所に隣接する3駅の前には、同発電所名を掲げた看板が立っており、「事業推進・スパークス・グリーンエナジー&テクノロジー」、「設計施工・東芝、熊谷組」の文字が、駅ホームを行き交う乗降客からもよく見える。

 実は、同発電所は、成田スカイアクセス沿線の旧新幹線用地に建設されている。かつて東京駅から成田空港までを結ぶ「成田新幹線」が計画され、一部の建設用地は千葉県が確保していた。だが、反対運動などから実現に至らず、遊休地となっていた。

千葉県の公募に6者が応募

 千葉県はこの土地をメガソーラーに活用することを決め、設置運営者を公募し、6者の応募からスパークス・グリーンエナジー&テクノロジー(SGET、東京都港区)を採択した。

 総事業費は約44億円、買取価格32円/kWhの認定案件となる。千葉県から用地の貸付料額は、年額180円/m2となった。

 県の公開した公募に関する審査結果を見ると、SGETの提示した貸付料は最も高い額ではなかったが、事業遂行能力、事業計画、地域振興策の3項目で、6者のうち最高ポイントと評価され、全体合計点でトップとなった。

 2016年4月に着工し、2017年7月に運転開始の予定。2017年2月の段階で、進捗率は約50%となっている。太陽光パネルの据え付けはほぼ終了し、パワーコンディショナー(PCS)などサブ変電設備と、東京電力と連系するための主変電設備の建設に取りかかっている(図3)。4月末までには受電し、その後、試運転に入る予定だ。

図3●施工の進む主変電設備のガントリー(門型)鉄塔
図3●施工の進む主変電設備のガントリー(門型)鉄塔
(出所:日経BP)
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 EPCサービスは東芝が担当し、太陽光パネルは東芝製(60セル・270W/枚)、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(750kW機)を採用する。

22kVの特別高圧を架空線で変電所につなぐ

 完成すると、白井市武西から印西市若萩までの約10kmにまたがる日本最長のメガソーラーになる。「細長いメガソーラー」としては、宮崎県のリニアモーターカー実験施設に設置した出力1MWの「宮崎ソーラーウェイ都農太陽光発電所」がある。これは約3.9kmに約1万3000枚のパネルを並べた。約10kmに4万7454枚のパネルを設置する「SGET千葉ニュータウンメガソーラー発電所」は長さで2倍、パネル枚数で3倍以上の規模になる。

 「細長いメガソーラー」の大きな課題は、パネルの配線を束ねた接続箱からPCSまでの電線の総延長が長くなること。そして、細長い敷地に、いかに効率的に多くの太陽光パネルを配置し、施工するか、などだ。

 「SGET千葉ニュータウンメガソーラー発電所」では、パネルからの電流を集めて22kVに昇圧する「サブ変電設備」が6カ所になる。太陽光パネルの直流電流は、まず、ストリング(パネルの直流回路)ごと接続箱に集め、複数のストリング回路を並列にまとめてサブ変電所のPCSに送り、交流に変換・昇圧し、主変電設備に送る(図4)。

図4●6カ所のサブ変電設備で22kVに昇圧。太陽光パネルは東芝製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
図4●6カ所のサブ変電設備で22kVに昇圧。太陽光パネルは東芝製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出所:日経BP)
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電線の総延長が長くなる課題を克服

 一般的なメガソーラーでは、アレイ(パネルの設置単位)群の真ん中に敷地を空け、PCSを据えつけることが多い。そうした配置をすると、PCSから極端に離れた接続箱がなくなり、PCSまでの電線の総延長が最短になる。電線の総延長が短いほど、建設資材のコストが下がるとともに、送電ロスが減ってシステム効率が高くなる。

 「細長いメガソーラー」の場合、こうした配置ができない。6カ所のサブ変電所は10kmの発電所用地にほぼ均等に置かれているものの、PCSから遠くなる接続箱が多くなるため、電線の総延長はどうしても長くなる。そうなると、資材コストが上昇するとともに、原理的にシステム効率が下がることになる。

 建設中の「SGET千葉ニュータウンメガソーラー発電所」を見ると、アレイ北側のフェンス脇に一定間隔で電柱を設置し、架空線を渡している。その下の地面には樹脂製の電線管が施工されている。電線管には接続箱からPCSに向かう電線、電柱にはサブ変電所から主変電所に向かう22kVの特別高圧線が敷設されている(図5)。

図5●高架線で22kVの特別高圧を主変電設備に送電
図5●高架線で22kVの特別高圧を主変電設備に送電
(出所:日経BP)
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 フェンスに沿って折り重なるように敷設された多数の電線管を見ると、電線の総延長がいかに長いかを実感できる(図6)。ただ、東芝によると、それによるシステム効率の低下とコスト上昇は事業性に影響するほどではなく、全体設計の工夫などでカバーしたという。

図6●接続箱からPCSまでは電線管で敷設
図6●接続箱からPCSまでは電線管で敷設
(出所:日経BP)
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「4段アレイ」と「6段アレイ」の組み合わせ

 パネルの効率的な配置に関しては、2パターンのアレイ構成を準備し、それらを用地の幅に合わせて複数列で配置することで、効率的な配置を実現した。

 基本アレイは、パネル横置きで11列・6段の合計66枚にした。加えて、この「6段アレイ」よりもパネル2枚分幅を狭くした11列・4段の合計44枚の「4段アレイ」も設定した。この2パターンのアレイを、設置角10度で杭基礎を使って固定した。

 例えば、最も幅の狭い用地では、「4段アレイ」を2列、もう少し広い場合は「4段アレイ」+「6段アレイ」、さらに広い用地では、「6段アレイ」+「6段アレイ」という具合に2パターンのアレイを2列から5列まで組み合わせることで、さまざまな用地幅に柔軟に対応できるようにした(図7)(図8)(図9)。

図7●4段アレイを2列に配置したケース
図7●4段アレイを2列に配置したケース
(出所:SGET)
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図8●4段アレイと6段アレイの組み合わせ
図8●4段アレイと6段アレイの組み合わせ
(出所:SGET)
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図9●6段アレイを2列設置したケース
図9●6段アレイを2列設置したケース
(出所:日経BP)
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 最も用地幅の広いのは、成田新幹線の駅を計画していた千葉ニュータウン中央駅の周辺で、4段アレイを5列も並べた。駅前の広場などから、5列ものアレイが整然と並んでいる様子がよく見える。その未来的な風景が印象的だ(図10)。

図10●千葉ニュータウン中央駅周辺では4段アレイを5列に配置
図10●千葉ニュータウン中央駅周辺では4段アレイを5列に配置
(出所:日経BP)
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クレーン作業は終電後に

 アレイ配置の設計に加え、施工にも配慮した。細い敷地のため、パネルまですべて設置してしまうと、サブ変電所の施工などに際し、重機が操作できなくケースがある。そのため、部分的にパネルの設置を遅らせ、杭基礎だけするなど、施工スケジュールを工夫した。

 また、「細長い」という土地形状のほか、「鉄道の沿線」という立地からも特別な配慮が必要になった。京成電鉄と協議し、線路に近い場所では、電車の走る時間帯にクレーンを使わないことにした。電車の安全な運行を最優先するためだ。

 クレーンでの作業が必要になるのは、PCSの搬入・据え付けなどサブ変電所と主変電所の施工だ。サブ変電所の施工は、2月までに2カ所が済んでいる。この2カ所は、線路から離れていたため、クレーン作業が可能だったが、今後、施工する残りのサブ変電所と主変電所に関しては、終電の後、深夜でのクレーン作業になるという。

 SGETは、すでに地域振興を目指した活動にも取り組んでいる。印西市市制施行20周年を記念した「印西スマイルマラソン」が2月12日に開催され、SGETも協賛した。マラソンコースは、メガソーラーの沿道で、ランナーは建設中の発電所を見る機会にもなった(図11)。

図11●SGETは「印西スマイルマラソン」に協賛
図11●SGETは「印西スマイルマラソン」に協賛
(出所:SGET)
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 同社では、運営する太陽光発電所に近い小中学校生を対象に、「こどもエネルギーサミット」と称した地域貢献イベントを開催している。メガソーラーの見学とともに、同社社員が、実際に先生役や司会・進行役を務め、エネルギーについて解説するものだ。千葉ニュータウンメガソーラーでも、完成後にこうしたイベントを計画している。

東京オリンピックで「再エネ先進国」をアピール

 東京都は2016年12月、「官民連携再生可能エネルギーファンド」の案件として、「SGET千葉ニュータウンメガソーラー」に投融資したと発表した。

 同ファンドは、再生可能エネルギーの広域的な普及拡大と、都内での導入の推進を目的に、東京都が進めており、SGETの関連会社で投資運用会社のスパークス・アセット・マネジメント(東京都港区)がファンド運営事業者の1社になっている。

 なお、ファイナンス(融資金融機関)は、三井住友銀行が予定されている。

 2020年の東京オリンピックでは、スカイライナーに乗って多くの外国人が東京を訪れる。その車窓から目にする、10kmに連なる太陽光パネルは、東日本大震災を乗り越え、再生可能エネルギーに取り組む日本の姿勢を示す良い機会となる。

 東京都のファンド担当者が、「SGET千葉ニュータウンメガソーラー」を視察した際にも、こうした「鉄道沿線メガソーラー」の持つ、大きなPR効果も評価したという。

発電所名「SGET千葉ニュータウンメガソーラー発電所」
住所千葉県白井市武西から印西市若萩までの約10kmの沿線
発電事業者スパークス・グリーンエナジー&テクノロジー(SGET、東京都港区)
土地所有者千葉県
設置面積約15ha
出力連系出力9MW、パネル容量約12.8MW
年間予想発電量約1280万kWh
EPC(設計・調達・施工)サービス東芝
土木工事熊谷組
O&M(運用・保守)東芝
ファイナンス予定三井住友銀行
太陽光パネル東芝製多結晶シリコン型(60セル・270W/枚)・4万7454枚
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(750kW機)22台
架台日栄インテック
着工日2016年4月
運転開始予定2017年7月