「環境啓発」に加え「地産地消」も
福山市は、こうした市内の再エネ関連施設を、「環境啓発」のためだけでなく、発電した電力を地域で活用する「エネルギーの地産地消」まで発展させる準備を進めてきた。
2018年12月、福山市とJFEエンジニアリングは、地域新電力の福山未来エナジー(福山市)を設立した。2019年4月から電力小売事業を開始する。官民連携による地域新電力は、瀬戸内地方で初めてという。
福山未来エナジーは、福山リサイクル発電によるバイオマス由来電力を軸に、市が運営する太陽光など再エネ主体の電力を福山市内の公共施設に供給する。まずは、上下水道局を含む250の公共施設に年間9100万kWhを供給する計画で、国内最大級の地域新電力になるという(図3)。
JFEエンジニアリングは、子会社のアーバンエナジー(横浜市)を通じ、すでに再エネ比率40%程度の電力小売事業で実績がある。福山未来エナジーも、こうしたJFEエンジニアリングのノウハウを活用し、電力の需要と供給を一致させるバランシング業務に関しては、アーバンエナジーのバランシンググループ(代表契約者制度)に加わる。
電源構成の計画では、対象となる公共施設の電力使用量の約7割は地産の再エネで賄える見込みという。今後、再エネ比率をさらに高めることも可能という。
ここ数年、地域新電力による「エネルギーの地産地消」を目指す動きが目立っているが、自治体が直接、出資するケースは必ずしも多くない。福山未来エナジーの資本金は1億円で、JFEエンジニアリング90%、福山市10%という出資構成になる。
福山市・環境部環境総務課の清水直樹課長は、「福山未来エナジーを設立した第一の目的は、市の環境政策である『エネルギー地産地消』を実現すること。そのために市も出資し、イニシアティブをとっていくことにした。JFEエンジニアリングとはビジネスパートナーとして、包括的に連携していきたい」と話す。
清水課長は、「まず、市の関連施設にある再エネを主体に調達して、公共施設に電力を供給することからスタートするが、将来的には、地域の民間企業の持つ再エネや固定価格買取制度(FIT)による買取期間の終了した住宅太陽光などからの調達も検討したい。電力の提供先も自治体の施設に加え、地域の民間企業や市民への供給も目指す」としている。