「北向き」斜面で特高メガソーラー、大分・中堅企業の挑戦

稼働後2年も、雑草がほとんど生えない秘密

2019/06/04 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

FIT機に「野立て太陽光」に参入

 大分県の日出町(ひじまち)は、国東半島の南部、別府湾を望む海沿いに位置する。「日出」の付く地名は多いが、「ひので」や「ひで」が一般的で、「ひじ」と読むのは珍しい。その名の通り、町内の高台からは、別府湾から上る日の出が美しい。

 日出電機(ひじでんき)は、同町に本社を構える電気工事会社で、年商38億円(2017年度)、従業員30人。地域を代表する中堅電設企業だ。早くからオール電化と住宅用太陽光発電システムの販売・施工にも取り組み、固定価格買取制度(FIT)スタートを機に野立て型太陽光発電所の設計・施工や売電事業に乗り出した。

 これまでにEPC(設計・調達・施工)サービスを手掛けた実績は、大分県内を中心に合計出力で120MWを超え、建設後のO&M(運営・保守)サービスを担当している案件は約110MWに達するという。そのうち、自社で所有して売電事業を営んでいる案件は約50MWになっている。

 規模別の案件数では、EPCと自社発電所を合わせて、低圧配電線に接続する「事業用低圧太陽光」が約700件、6.6kVの高圧配電線に接続する「高圧案件」が約40件、そして、特別高圧送電線に連系する「特高案件」が1件となっている。

 日出町南部の山あいに2017年2月に完工した「日出電機ソーラーパーク 藤原百合野発電所」は、同社で最初の「特高案件」となった。自社で建設して所有し、売電している(図1)。

図1●「日出電機ソーラーパーク 藤原百合野発電所」。前面に別府湾を望む
(出所:日経BP)
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22ものエリアに分散配置

 太陽光パネルの出力は14.42MW、連系出力は10MWに達する。特高変電所を備えた大規模な電気設備となり、大掛かりな土木造成も伴ったが、分離発注による自社EPCで建設し、完成後も自社でO&Mを担っている。

 太陽光パネルはノルウエー・REC製、パワーコンディショナー(PCS)は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製、接続箱は独ワイドミュラー製、基礎・架台は日創プロニティ製を採用した。

 「藤原百合野発電所」は、丘陵の斜面を段々畑のように階段状に造成し、平らに整地したエリアに太陽光パネルを並べた。道を挟んで大きく南側サイトと北側サイトに分かれており、パネル出力は、南側9.5MW、北側4.9MWとなっている。

 さらに南側サイトは11区画、北側サイトも11のエリアに分けてパネルを設置した。これだけ多くのエリアに分散し、飛び地が増えてしまった設計には大きな理由がある(図2)。

図2●「日出電機ソーラーパーク 藤原百合野発電所」の全景
(出所:日出電機)
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追加で用地確保し過積載率1.4倍に

 同発電所の南側サイトの南端・最高地点からは、眼下に日出町の街並みと別府湾が見渡せ、さらにその先の対岸には、大分市沿岸の工業地域までが一望できる。ただ、太陽光パネルが段々に設置されているのは、丘陵の頂きから海側に向かう南斜面ではなく、陸側に下った北向き斜面になる。一般的には、太陽光の立地として不向きな立地だ(図3)。

図3●北向きの斜面を造成してパネルを設置した
(出所:日経BP)
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 日出電機の渡邉浩司社長は、「藤原百合野発電所の設計では、メガソーラーの立地としては条件の悪い北向き斜面に、いかに多くの太陽光パネルを設置するかが大きな課題となった」と、振り返る。大分県内には、特高規模のメガソーラーも多いが、海岸沿いの遊休工業用地など好立地は、大手資本が早々に押さえ、建設しているケースがほとんどだ。中堅企業やベンチャーは、相対的に条件の悪い立地に取り組むことが多くなる。

 もともと同発電所の南側サイトは、ゴルフ場の開発予定地だった。だが、着工まで至らず計画段階で頓挫して競売にかかり、不動産会社に所有権が移っていた。日出電機は、この不動産会社から、メガソーラー(大規模太陽光発電所)用地として購入した。

 購入後、土木造成とパネル配置のレイアウトを検討しつつ、県に対して森林法に基づき林地開発許可を申請した。パネルの設置枚数を増やすため、低い地点に建設する調整池にも、パネルを設置するなど、スペースの効率的な活用に工夫した(図4)。

図4●調整池にも太陽光パネルを設置した
(出所:日経BP)
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 それでも、必要な残置森林や、安全性を重視して十分な面積の法面などを確保すると、設備認定で取得していた10MWの連系出力には達しないことがわかってきた。

 そこで、購入した用地に加え、隣接した北側の林地を活用して、パネルの設置枚数を増やすことを検討し始めた。複数の地権者と交渉して賃借契約を結び、最終的に11のエリアに合計で4.9MW分のパネルを設置できる用地を新たに確保した。その結果、南側サイトに9.5MW、北側サイトに4.9MWの合計14.4MWのパネル出力となった。

 連系出力10MWに対し、パネル4.4MWを積み増し、過積載率1.4倍を確保することで、事業性を高めた。

調整池にもパネルを設置

 南側サイトに建設した調整池は、中央に突き出た法面を囲むようにU字型に造成した広大なもので、間近で見ると、舗装された敷地の上に1mほどの高さでパネルが設置されている。パネル下に浸水することを前提にしたため、接続箱も高めに設置されている(図5)。

図5●調整池に設置したパネルと接続箱
(出所:日経BP)
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 この「パネル用地 兼 調整池」北端には、パネルを設置せずにさらに深い調整池とその中央に雨水オリフィス(孔口)枡がある。南側サイトに降った雨は、まずは最下段の深い調整池に流れ込み、ここがいっぱいになって初めて、パネル下の調整池まで浸水が始まり、パネルの高さに達する前にオリフィスから下流に流れ出す、という設計になっている(図6)。

図6●調整池の北端にはさらに深くなっておりオリフィス枡がある
(出所:日経BP)
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 林地開発許可制度で一般的に求められる治水に関する技術基準では、「下流の流下能力を考慮の上、30年確率で想定される雨量のピーク流量を調整できること」と規定されている。つまり、30年に1回の大雨でも開発地の下流域で洪水が起こらないことを前提としている。

 「藤原百合野発電所」の南側サイトにおける排水・治水施設は、こうした技術基準を上回る雨量を想定し、十分に余裕を見て設計したという。実際に稼働後、昨夏には大きな台風を経験したが、パネル下まで浸水したことさえ一度もないという。

コンクリート吹付工法で法面固める

 また、北側サイトの11エリアに関しては、県の林地開発許可制度の対象には該当しなかったものの、日出電機では同様の基準で、治水対策に配慮して複数の調整池を設置した。ちなみに北側サイトに降った雨水は、地形的に南側サイトとは異なる水系に流れるため、メガソーラーに降った雨が1つの水系に集中することはないという。

 こうした大規模な造成工事では、岩を含んだ地盤への対応に苦労したという。架台を支える基礎に関しては、杭基礎とコンクリートの置き基礎を使い分けた。事前に地盤を調査し、岩を多く含んだエリアでは置き基礎にした(図7)。

図7●地盤によって杭基礎と置き基礎を使い分けた
(出所:日経BP)
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 また、法面に関しても、表面付近に岩の多い個所に関しては、豪雨などによる落石の恐れに対応して、表面全体をコンクリート吹付工法で固めた。「土木造成では、自然災害に備え、過剰なくらいに慎重に設計した」と、渡邉社長は言う(図8)。

図8●岩の多い法面はコンクリート吹付工法で固めた
(出所:日経BP)
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防草シートを砂利で覆う

 こうした安全性や信頼性を重視した設計にしている背景には、同社がEPCとともに、O&Mサービス事業を重視し、100MW以上の太陽光発電所を管理している豊富な経験がある。ある程度、初期投資に費用を投じても、長い目見れば、O&Mを効率化した方が事業面でも有利との読みがある。

 同社では、藤原百合野発電所のほかでも、信頼性を評価して太陽光パネルにノルウエー・REC製、PCSにTMEIC製を主体に採用しているという(図9)。

図9●パネルはREC製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した
(出所:日経BP)
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 また、藤原百合野発電所では、防草対策も徹底した。同発電所は、稼働して2年経つにも関わらず、パネルを設置しているエリアは一度も除草していないという。その秘密は、完工した今では分からないが、敷地全体に不織布タイプの防草シートを施工し、その上に約10cmの厚さに砂利を敷き詰めたからだ(図10)。

図10●防草シートの上に砂利を敷いた
(出所:日経BP)
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 一般的に防草シートを露出して施工した場合、風雨や紫外線などにより損傷し、その除草効果は約10年が限界と言われる。渡邉社長は、「防草シートの上を厚く砂利で覆ったことで、防草効果は10年以上、継続すると期待している」と言う(図11)。

図11●北側サイトの1つ。法面には防草シートが露出している
(出所:日経BP)
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2020年に160MWを目指す

 日出電機は、自社太陽光とEPC案件を含め、2020年中には合計で160MWの太陽光発電所を手掛けることを目標に掲げている。そのためにはさらに40~50MWの新規開発が必要になるが、「計画中の案件が順調に進んでおり、すでに達成のめどは立っている」と渡邉社長は言う。

 実は、同社は、藤原百合野発電所に続き、現在、10MWを超える特高連系のメガソーラープロジェクトを2案件、進めており、これに計画中の低圧や高圧案件などを加えると、新規開発案件は約50MWの規模になるという。

 渡邉社長は、「長らく住宅太陽光関連の事業を手掛けてきたが、住宅への設置・工事ビジネスの場合、一定の売り上げを確保するためには、常に新規開拓が必要で、そのために日々の営業活動の成果に一喜一憂してきた」と振り返る。

 FITスタートを機に野立て型太陽光に乗り出した後は、「経営を安定化させるために設計・施工とともに、自社発電所による売電事業、そしてO&Mサービス事業の規模拡大を目指してきた。発電事業やサービス事業は、日々の営業成果に左右されずに一定のキャッシュフローを生み出してくれるのがたいへん魅力的」と話す。

 FITによって全国に建設された多数の太陽光発電所をいかに安定的に維持していくか、小規模の事業用低圧太陽光を効率的に運営できるのか――。経済産業省は、再生可能エネルギーを基幹電源として位置づけるにあたり、こうした懸念を示している。

 大分県内に集中し、低圧から、高圧、特別高圧案件まで、幅広く手掛ける日出電機の戦略は、「地域に密着した企業が、地域の太陽光を集約して管理していく」という今後のあるべき方向性の1つを示す典型的なケースと言えそうだ。

●設備の概要
発電所名日出電機ソーラーパーク 藤原百合野発電所
住所大分県速見郡日出町大字藤原
発電事業者日出電機
土地所有者日出電機(南側サイト)
出力太陽光パネル容量14.42MW、連系出力10MW
年間予想発電量1584万kWh
EPC(設計・調達・施工)日出電機
O&M(運用・保守)日出電機
太陽光パネルノルウエー・REC
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)
接続箱独・ワイドミュラー
架台日創プロニティ
着工2015年夏
完工2017年2月
買取価格40円/kWh