7つの古墳を抱える、東金市のメガソーラー

遺跡の状況に合わせ、パネル配置や貯水池を変更

2017/06/06 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 千葉県の中央部、九十九里平野に位置する東金市。2016年11月、同市において出力約2.6MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「エクシオ東金ソーラーファーム」が売電を始めた(図1)。

図1●太陽光パネルの設置区域に5カ所、フェンス外に2カ所の古墳がある
出力約2.6MWの「エクシオ東金ソーラーファーム」(出所:協和エクシオ)
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 空撮画像を見ると、パネルを設置していない円形の空間が、点在していることが、ひと目でわかる。この発電所の大きな特徴は、敷地内に複数の古墳があること。遺跡のある場所を避けながら、その周囲に太陽光パネルなどの発電設備を配置している。

 発電事業者は、施設名にある通り、協和エクシオ。同社は、通信分野などの電気通信関連インフラを手掛け、太陽光発電やEPC(設計・調達・施工)サービス事業に参入した。現在、15カ所の太陽光発電所を運営している。その中で最大の規模が、東金市の発電所となっている。

 「東金ソーラーファーム」は、東金市極楽寺込前の林や農地に囲まれた地域にある。事業用地も、開発前は林だった。千葉県から林地開発許可を得て建設した。約4万3000m2を賃借し、古墳を取り囲むように9840枚の太陽光パネルを並べた。

 年間発電量は、一般家庭の約550世帯の消費電力に相当する、約270万6000kWhを見込んでいる。

 設計・施工は、協和エクシオと、子会社のエクシオインフラ(東京都大田区)が担当した。太陽光パネルはシャープ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。 

古墳は当初の情報より一つ多く、直径も広い

 メガソーラーを開発する前は、林の中に古墳が点在している状態だった。林地の外からは見えにくく、その存在を知らなかった近隣住民もいたようだ。これらの古墳には、地方の豪族が葬られたと推測されている。

 開発前から古墳が点在していることは把握されていた。そこで、古墳をフェンスで囲むなど、文化財としての保護に配慮して開発した(図2)。東金市の教育委員会が、それぞれの古墳の範囲を確定してから、最終的な設計を決めた。

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図2●開発した土地内にある古墳
発電設備の設置を避けたほか、フェンスで囲むなど保護に配慮(出所:日経BP)

 当初、大まかに得られていた情報と、実際の古墳の状況が異なる部分もあった。このため、最初の計画から、配置を大きく変えた部分もある。

 まず、古墳の数が、一つ多いことが分かった。当初得ていた情報では6カ所だったが、教育委員会による新たな調査などで7カ所と分かった。

 さらに、遺跡として残すべき範囲が、当初の情報よりも大きくなった古墳もあった。直径約5mを想定していたが、実際は直径約30mまで広がっていた古墳もあった。

 こうした“新発見”により、太陽光パネルの設置面積は、当初の想定よりも約1万m2少なくなった。予定していた枚数のパネルを設置できない恐れが出てきた。

 そこで、メガソーラー全体の設計を変更した。その1つが調整池である。これは、大雨の際に、一時的に水を貯めて周辺地域への排水を抑制するためのものだ。

 当初は、敷地の北側に、太陽光パネルを置かない場所を設定し、そこに調整池を設ける設計としていた。

 この案を変え、北側の場所にも太陽光パネルを並べる代わりに、敷地の中央付近から南端に向けて外周に堤を設け、太陽光パネルを設置した場所を、大雨の際に、一時的に水が溜まる場所として使うことにした(図3)。この堤は、通路も兼ねている。

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図3●堤を築き、太陽光パネルの設置区域に一時的に水を溜める
通路も兼ねる(出所:日経BP)

 太陽光パネルのある場所を貯水池として使うことから、大雨の際、基礎の一部は、水に浸かることになる。

 古墳の保護策では、発電設備を設置しないことはもちろん、周囲にフェンスを張って隔離しているほか、表土の上にウッドチップを敷いている(図4)。

図4●表土の上をウッドチップで保護
敷地内にある古墳の一つ(出所:日経BP)
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台風で多くの木が倒れる

 2016年秋に台風が上陸した際には、設計の通りに、太陽光パネルのある場所に雨水が貯まり、一時的な貯水池としての機能も果たした。

 一方で、予想外のハプニングもあった。強風によって、周囲の林で、多くの木がなぎ倒される被害が起きた(図5)。メガソーラーの開発に伴う残置森林でも、同じように多くの木がなぎ倒された。

図5●台風で多くの木がなぎ倒された
メガソーラー付近の林で、強風で折れた木がそのまま残っていた。周辺地域一帯の林がこのような状態になったという(出所:日経BP)
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 倒れた木を調査すると、細い樹木が多い上、その多くが赤枯病にかかっていたことがわかった。こうした被害を受けて、行政と相談の上、今後、倒れる可能性がある危険な木については、伐採した。

 メガソーラーの残地森林については、倒木の可能性がある木の伐採とともに、新たに苗木を植えることで残地森林の比率を維持した。

 ただ、これによって、木の影が少なくなり、メガソーラーの太陽光パネルへの日射の状況は、向上することになった。とはいえ、周辺の林や残置森林による影の影響を考慮した構成は、そのまま変えずに運用している。

 周辺の林や残置森林による影の影響を想定し、PCSへの入力を工夫していたのである。日時ごとに変わる影の影響が似ているストリング(太陽光パネルを直列・並列につないで接続箱に入力する単位)をまとめ、同じPCSに入力する設計にしていた。

 これによって、影のかかるパネルを含むストリング、影がかからずに出力しているストリングのいずれも、年間を通じてできるだけ長い時間、最大電力点で出力することを狙った。

 PCSは、最大電力点となる電流と電圧でパネルの出力を制御(MPPT制御)する。影などで出力の落ちたパネルを含むストリングと、フル出力できるストリングが同じPCSに入力している場合、出力の低いパネルに合わせてMPPT制御することになる。

 そこで、年間を通じて最大電力点の電圧値の類似したストリングを、同じPCSに入力してMPPT制御することで、影のかかったストリングが、フル出力できるストリングに影響しないようにし、かつ、いずれのストリングもその時点で最大限に出力できるようにした。

パナソニックの無線ストリング監視を導入

 基礎と架台は、コンクリート製基礎を高くし、パネル直下のみレール状の鋼材製架台を使う設計とした(図6)。

図6●構造的な安定と東西方向の傾斜への対応を両立する基礎と架台
設置場所の高さの違いは、現場で基礎を切って対応(出所:日経BP)
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 構造的な安定と、東西方向の傾斜への対応を両立する方法とし、シンエイテック製の「Hパイル」と呼ぶコンクリート2次製品による杭と、日創プロニティ製の架台を組み合わせた。

 島根県松江市にある出力2.3MWのメガソーラーでも採用した手法である(関連コラム)。設置場所による高さの違いには、現場で切断することで対応する。

 また、パナソニックグループの無線通信による遠隔監視システムを導入した(図7)。ストリングごとにセンサー端末を設置し、すべてのストリングで電圧と電流を監視している。

 協和エクシオでは、基本的に出力2MW以上の案件では、こうしたストリング監視システムを導入している。

図7●無線ストリング監視システムを導入
すべてのストリングにセンサー端末を設置して電圧と電流を監視(出所:日経BP)
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 次回(6月13日公開予定)は、同発電所が導入した、多年草「ダイカンドラ」によるマットを使った雑草対策について紹介する。

発電所の概要
発電所名エクシオ東金ソーラーファーム
所在地千葉県東金市極楽寺込前21番地ほか
用地面積4万3230m2
太陽光パネル出力約2.607MW
パワーコンディショナー出力1.995MW
年間予想発電量約270万6000kWh
発電事業者協和エクシオ
設計・施工協和エクシオ、エクシオインフラ(東京都大田区)
太陽光パネルシャープ製(9840枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
工事期間2016年3月24日~11月30日
売電開始2016年11月15日
売電価格非公開
売電先東京電力エナジーパートナー