「雑草を食べきれず、ヒツジを増やしました」、明石土山のメガソーラー

ヒツジを放牧しない区域は、除草剤を積極的に使う

2019/06/11 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 兵庫県加古郡稲美町にある合計出力約17MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「ニッケまちなか発電所 明石土山」において5月29日、メガソーラー内で放牧されている5頭のヒツジの毛刈りが実施された(図1動画1)。

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図1●毛を刈る前(上)と刈った後(下)
(出所:日経BP)
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動画1●ヒツジの毛を毎年5月に刈っている

(出所:日経BP)

 一般的な太陽光発電所ではまず見られない、牧歌的な風情に包まれた。

 メガソーラーの発電事業者は日本毛織で、以前はショートコースのゴルフ場「ニッケゴルフ倶楽部土山コース」だった跡地を活用した(図22014年1月のメガソーラー探訪の掲載コラム)。

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図2●街中にあるゴルフ場跡地を活用
ゴルフ場時代の池などを残している(中右)、隣接する駐車場跡地を使って太陽光パネルを増設(下左)、敷地内に神社もある(下右)(出所:上は日本毛織、そのほかは日経BP)

 2013年10月に稼働した第1期の出力約11MW、2014年2月に稼働した第2期の約6MWの2つの発電所からなる。第2期の発電所は、隣接する駐車場跡地を活用し、約192kW分の太陽光パネルを2018年に増設している。

 同社はこのほか、関西や関東の遊休地や事業所の屋根上を活用し、11カ所・合計出力約29.5MWの太陽光発電所を開発・運営している(図3)。関西で4カ所・合計出力約18.02MWのほか、中部で6カ所・10.79MW、関東で1カ所・693kWとなっている。

図3●遊休地や事業所の屋根上を活用
関西の数値は、明石土山の発電所の増設前のもの(出所:日本毛織)
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 明石土山のメガソーラーでヒツジを飼い、敷地内に放牧しているのは、近隣の住民に親しみを持ってほしいとの理由からである。

 ゴルフ場跡といっても、山林の中ではなく、街中に立地している。そのような場所が、緑に覆われたゴルフ場から、5万枚もの太陽光パネルを敷き詰めた発電所に変わることで、無機質で冷たい印象を与えるという危惧を持っていた。

 そこで、日本毛織では、メガソーラーでヒツジを飼い、敷地内に放牧することにした。ヒツジは、家畜の中でも相対的に温順で可愛いらしい。発電所内を歩き回っていれば、近隣の住民たちにも、メガソーラーに親しみを持ってもらえると考えた。

 ヒツジは、羊毛紡織を祖業とする日本毛織のマスコット・キャラクターでもあり、企業広報の役割も担っている。さらに、ヒツジが日々、メガソーラー内の雑草を食べることで、除草の負担を減らす効果にも期待できる。

 現在、5頭飼っており、毎年、5月下旬には、ヒツジたちの毛を刈っている。ヒツジは、採毛用の家畜として改良されてきた経緯から、毛が自然に生え変わらずに伸び続ける。

 暑い時期にヒツジの毛が伸び過ぎていると、体温の調節機能などに悪影響を及ぼし、健康を維持できなくなってしまう。このため、年に一度、春から初夏に毛を刈る作業が必要になる(図4)。

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図4●1頭あたり約4kgの毛を刈る
(出所:日経BP)
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 メガソーラーで飼っているヒツジは1頭あたり、1年間に約10cmの毛が伸びる。ヒツジを譲り受けた六甲山牧場(神戸市灘区)の飼育担当者がメガソーラーを訪れ、5頭のヒツジの毛を手早く刈っていった。

 ヒツジたちは、1頭あたり約4kgの毛を刈り取られ、すっきりした様子で、すぐにメガソーラー内に戻り、また草を食べはじめていた(図5動画2)。

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図5●毛を刈った後もすぐに草を食べ始める
(出所:日経BP)
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動画2●ヒツジが雑草を食べている様子

(出所:日経BP)

雑草は想定以上、ヒツジを増やす

 ヒツジは、当初3頭だったが、途中から2頭増やして5頭にした。想定していた以上に雑草が伸び、3頭では食べるペースが追いつかないためだった。

 ヒツジは、第1期と第2期のメガソーラー全体に放牧しているわけではない。全体の約22万m2のうち、第1期の一部となる約1万5000m2の区域に限っている。この区域には、景観にも配慮してゴルフ場時代の緑を多く残し、ヒツジによる除草を導入した。

 日本毛織によると、5頭以上に増やすことも検討した。しかし、兵庫県内のヒツジの飼育は、5頭以上になるとペットとしての飼育という枠を外れ、畜産業のような「事業」という位置づけになる。そうした場合、求められる管理体制や設備のレベルが上がり、メガソーラー事業の一環としては負担が大きくなる。この理由で5頭に抑えた。

 ヒツジの管理を含む、メガソーラーの雑草対策は、グループ会社のニッケ不動産(神戸市)に委託している。

 ヒツジを放牧している区域でも、人手による除草がまったく不要なわけではない。例えば、ドクダミなど、ヒツジが食べない雑草もある(図6)。先端が硬かったり、一定以上に伸びたりしている雑草も食べないという。

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図6●ドクダミや硬い草は食べない
(出所:日経BP)

ヒツジが食べない区域では、除草剤を活用

 雑草対策には、ヒツジを増やしたことも含めて、当初に考えていたよりも、手間やコストがかかっているという。

 ヒツジを放牧していない区域では、雑草対策を途中から根本的に変えた。稼働当初は、雑草が一定以上に伸びたら、刈るという手法で対策していた。しかし、これではコストがかさむだけだった。

 ヒツジを放牧している区域と、していない区域では、見た目にはっきりした違いがある(図7)。ヒツジを放牧している区域は、緑に覆われている。放牧していない区域は、砕石に覆われている。

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図7●ヒツジを放牧している区域(上右)と除草剤を使っている区域(上左)
展望台付近(下右)も除草剤を使っていない(出所:日経BP)
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 この砕石の下には、防草シートも敷かれている。それでも、雑草の育成を抑えられる効果は限られ、日本毛織の想定以上に雑草が生える状況となっていた。そこで、最近3年間は、除草剤を効果的に使う手法に切り替えた。年に3回、除草剤を散布し、少しでも雑草の伸びを抑え、草刈り作業を減らしているという。

 除草剤は、まず雑草が伸び始める前の3月に散布する。この散布が、雑草が伸び始める時期の伸び具合の抑制にはっきり効果が現れるという。その後、7月と9~10月にも散布する。除草剤の散布に変えてからは、草刈りは7月まで実施しなくてよくなった。7月頃に刈ったあと、様子をみてもう一度刈るかどうかを決めている。

 3年間かけて、少しずつ雑草が伸びにくい環境を作ってきたとしている。

打ちっ放しのゴルフ練習場のボールが直撃

 雑草が予想以上に伸びることのほかにも、事業計画時には想定していなかったトラブルが起きた。太陽光パネルのカバーガラスが頻繁に割れたのである。

 この原因は、はっきりしていた。第2期の隣にある、打ちっ放しのゴルフ練習場から場外に飛び出したボールが、太陽光パネルに落ちて、カバーガラスが割れていた。

 ゴルフボールが当たってできたような打痕がガラスに残っていること、そして、割れた太陽光パネルの近くにゴルフボールが落ちていることから、容易に原因を推察できた(図8)。

図8●対策前の2013年の取材時に敷地内に落ちていたゴルフボール
(出所:日経BP)
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 日本毛織はこの一帯の土地を所有しており、打ちっ放しのゴルフ練習場は、メガソーラーの用地となった旧ゴルフ場と同じように、グループ会社が運営している。

 そこで、このゴルフ練習場を運営しているグループ会社に、敷地外にゴルフボールが飛び出していくことを防ぐためのネットを追加して欲しいと依頼した。

 従来は、ゴルフ練習場の四方を囲むように、垂直にネットを敷設していた。しかし、四方の高さ方向に伸びた上の「天井」に当たる位置には、ネットがなかった。このために、上空方向に打った大飛球は、敷地外に飛び出し、メガソーラー内に落ちていた。

 メガソーラーからの依頼によって、ゴルフ練習場は、「天井」の位置にも、ネットを追加した(図9)。

図9●サイロの奥に見えるのがゴルフ練習場で、天井にネットを追加
(出所:日経BP)
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 この効果は、てきめんだった。太陽光パネルのカバーガラスの割れは、半年に1回程度に減っている。全体の約16万枚という枚数と、人通りの多い市街地という環境を考えると、少ないと言える。

 ただし、それ以降に太陽光パネルのカバーガラスが割れた原因は、わからないことがほとんどだという。

 太陽光パネルの割れを含む異常は、ほぼ電気主任技術者が発見している。第1期は特別高圧送電線に連系している発電所で、第2種の資格を持つ電気主任技術者が専任している。この電気主任技術者が頻繁に敷地内を歩き回り、異常をいち早く発見し、報告している。

 太陽光パネルのカバーガラスが割れた場合、日本毛織のメガソーラーでは、できるだけ早く交換している。安全上と事業上の両方リスクに考慮して、このような方針としている。

 割れた場合やその他の不具合に備えて、一定数の太陽光パネルの予備(ストック)を常備している。

 太陽光パネル1枚程度の交換では、保険の適用額に満たない場合が少なくないという。それでも、安全性と事業性のリスクを軽く考えずに、交換することを徹底している。

発電量は好調に推移

 発電量は、好調に推移している。雑草と太陽光パネルの割れ以外には、大きなトラブルも起きていない。

 発電量は、売電開始後の5年間、常に計画を上回っている。最大となったのは2018年だった。天候がよく日射量が例年以上に多かったためだ。逆に、最小だったのは2014年で、年間で最も発電量が伸びる4~5月に、天候不順だったことが響いたという。

 事業計画時の予想では、年間で発電量が最も多い月は5月、次に多いのが8月になっている。夏至のある6月は、本来であれば発電量が多くなりそうだが、梅雨の影響を受けるという。

 立地する土山地域は、三つの条件が重なって、太陽光発電に向くという。一つは、瀬戸内ならではの、雨が比較的少ないこと。二つ目は、秋に台風は通るものの、これまで周辺地域を含めて被災することがほとんどないこと。三つ目は、ほぼ積雪のないことである。

5年目にPCSの大規模点検と修繕

 2018年は、稼働後、5年目だった。事業計画に従って、第1期と第2期合わせて30台のPCSの内部を総点検した。

 こうした大規模な点検作業は、日本毛織にとって初めてだったため、PCSメーカーの推奨に従って実施した。

 この点検では、重度の異常などはないことがわかったものの、想定以上に消耗しており交換した部品などもあったという。

 PCSは毎年、8月に点検している。毎年5日~1週間をかけ、天気を見ながら、悪天の日には早い時間から点検に入る一方、好天の日には、できるだけ遅い時間から点検をはじめるなど、点検期間中でも売電ロスを減らすよう工夫している。

 PCSは、コンクリートの堅牢な小屋に密閉して収納している(図10)。金属製の筐体にPCSを収めているメガソーラーを多く見かけるが、日本毛織では、コンクリートの小屋に収めている。

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図10●PCSを収納しているコンクリートの小屋
避雷針や屋根上に太陽光パネルを備える(出所:日経BP)
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 熱や埃の影響を考えて、慎重を期してコンクリートの小屋を用意したという。小屋の屋根の上にも、太陽光パネルを設置した。これもメガソーラーの発電電力となる。

 また、この小屋や連系設備の周囲には、それぞれ複数本の避雷針を立てている(図11)。国内のメガソーラーでは、あまり見られない光景である。落雷対策にも、一般的なメガソーラー以上に慎重な対策をとっている。

図11●連系設備の周囲にも複数の避雷針
(出所:日経BP)
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●発電所の概要
名称ニッケまちなか発電所 明石土山
所在地兵庫県加古郡稲美町六分一 1181-3ほか
敷地面積22万3983.20m2
発電事業者日本毛織
太陽光パネル容量合計17.009MW
(第1期:11.035MW、第2期:5.974MW、第2期は稼働当初の5.782MWから約192kWを2017年に増設)
パワーコンディショナー
(PCS)容量
非公開
EPC(設計・調達・施工)サービス竹中工務店
太陽光パネル非公開
PCS非公開
O&M(運用・保守)ニッケ機械製作所
羊の運用・除草ニッケ不動産
売電開始日第1期:2013年10月、第2期:2014年2月