「統括事業所」で有資格者を柔軟に活用、金ケ崎の特高メガソーラー

連系設備の基礎にヒーター、積雪と凍結防止で点検しやすく

2018/08/21 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 岩手県胆沢郡(いさわぐん)金ケ崎町のゴルフ場跡地で、出力約20MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「金ケ崎GC太陽光発電所(サン・カントリー金ケ崎)」が6月に稼働を開始した(図1)。

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図1●6月に稼働した出力約20MWの「金ヶ崎GC太陽光発電所」
図1●6月に稼働した出力約20MWの「金ヶ崎GC太陽光発電所」
ゴルフ場跡地を活用し、6万4836枚の太陽光パネルを並べた(出所:日経BP)
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 金ケ崎町永沢の丘の上に立地し、元は「金ケ崎ゴルフコース&ロッジ」として運営されていた。

 この土地を活用し、コムシスクリエイト(東京都品川区)がメガソーラーを開発・運営している。同社は、NTTグループ向けの通信インフラの整備を担ってきた日本コムシスの再生可能エネルギー発電子会社である。

 金ケ崎町のメガソーラーは、日本コムシスにとって、18カ所目の太陽光発電所の稼働となった(関連コラム:兵庫県加東市の水上型の約2MW栃木県那須塩原市の約5.7MW群馬県昭和村の約2.4MW茨城県常陸太田市の約2MW)。今回の金ケ崎町の出力約20MWが最大規模となっている。

 投資額は約53億円で、年間発電量は約2100万kWhを見込んでいる。東北電力に売電しており、買取価格は非公開とする。

 金ケ崎GC太陽光発電所は、旧ルールの「最大30日」の出力抑制ではなく、「無制限・無補償」の出力抑制が系統連系の条件となった。

 こうした無制限・無補償の案件では、出力抑制の見通しが難しいといった理由から、プロジェクトファイナンスの組成が難しいとされている。コムシスグループの場合、資金力や企業自体の信用力が高く、プロジェクトファイナンスに頼らずに事業資金を賄い、開発できた。

 コムシスクリエイトでは現在、近隣の地域でもう1カ所、特別高圧送電線に連系するメガソーラーを建設している。宮城県内に立地し、11月ころの売電開始を予定している。

 2カ所の特高メガソーラーが近隣で相次いで稼働することから、第2種の電気主任技術者による電気保安管理業務を柔軟に運用できる制度を活用することにした。

「統括事業所」で二つの特高案件を運用

 特高送電線に連系するメガソーラーでは、専任の第2種電気主任技術者による保安が義務付けられている。

 特高送電線への連系の知識と実務を経験した「第2種」の電気主任技術者は、資格保有者が少ない。電力会社の在籍者や、企業の工場などで電気保安管理業務に携わってきた技術者などがほとんどとなっている。このため、特高案件の開発では、第2種の資格保有者の確保に苦労することが多い。

 今回、コムシスクリエイトが活用したのは、「統括事業所」と呼ばれる管理手法である。

 再エネの特高発電所の工事・維持・運用を直接統括する「統括事業所」を置き、そこで複数の発電所を管理することが認められている(図2)。「同一の発電事業者」が、2時間以内に駆けつけ可能な「近隣地域」に、複数の特高案件を開発・運営している場合に活用できる。

図2●取材時にも連系設備を点検していた
図2●取材時にも連系設備を点検していた
「統括事業所」を活用し、二つの特高メガソーラーを管理(出所:日経BP)
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 「統括事業所」による管理は、風力発電を想定して定められ、現在では太陽光発電所、水力発電所にも適用が認められている。

 これによって、特高メガソーラーでも、第2種の技術者が1人で1カ所を専任するのではなく、例えば、「1人で2カ所」、「3人で5カ所」といった管理が可能になっている。

 もちろん、第2種電気主任技術者による監督、管理の実効性などを確立した上でなければ認められない。

 特高送電線という、電力系統に大規模な影響の及ぶ送電線に接続していながら、無人の状態が多いという風力や太陽光発電所の状況を考慮し、平常時に十分な巡視や点検、検査・補修を可能とする体制の構築、異常発生時に迅速に検知、通報、対応できる体制が求められている。

 一般的に、同じ企業グループが主体となって、近隣に複数の特高メガソーラーを開発・運営している場合でも、この手法の採用は難しい。

 障壁となるのが「同一の発電事業者」という条件である。特高案件ではプロジェクトファンナンスによる資金調達が多く、その場合、発電所ごとに特定目的会社(SPC)を設立し、事業主体となるためだ。

 コムシスクリエイトの場合、金ケ崎の出力約20MWの発電所も、建設中の宮城県内の案件も、自社が発電事業者となっており、「同一の発電事業者」という基準を満たしている。

 そこで、仙台市に東北管理室を開設し、ここを「統括事業所」として活用している。もちろん、両方のメガソーラーとも、2時間以内に駆けつけられる位置にある。

 東北管理室に駐在している第2種電気主任技術者は、東北電力の出身者である。電力会社では、1人の第2種の資格保有者が、多数の発電所の電気保安管理業務を担っていることが多い。そこで、東北の近隣で2カ所の特高メガソーラーが稼働予定であることから、電力会社時代と同様の管理手法として、「統括事業所」を提案し、実現した。

 「統括事業所」の活用に関する経済産業省との交渉などは、スムーズに進んだという。電力会社時代から、特高送電線関連の業務に熟知している利点が生きた可能性がある。

 「統括事業所」による管理の範囲には、工事も含まれている。そこで、稼働中の金ケ崎の発電所のほか、建設中の宮城県内の発電所にも連日、通っている。

 現在の東北管理室は、第2種電気主任技術者のほか、代務者と保安員の3人で関連業務を担っている。宮城県内の特高メガソーラーの稼働後には、5人に増員して日々の巡視や点検に臨む予定としている。

連系先が変わり1年遅れる

 金ケ崎の出力約20MWのメガソーラーの建設では、予期しない事態が起きた。東北電力との連系協議において、連系する特高送電線が変わったことだ。これによって、着工と稼働が約1年間遅れた。

 連系先の特高送電線が変わるといっても、ゴルフ場跡の近くの同じ鉄塔に敷設されていることに変わりはなく、送電線までの距離が大きく延びるといった影響はなかった。

 具体的には、ゴルフ場跡から既存の鉄塔まで、最短距離で電線を新設して連系できる予定が、逆側に回り込むように電線を新設する経路に変わった(図3)。

図3●連系設備(左)と、連系先の特高送電線の鉄塔(中央)
図3●連系設備(左)と、連系先の特高送電線の鉄塔(中央)
手前の鉄塔から、右の鉄塔までの間に、特高送電線の下をくぐり、そこから中央右の低い方の鉄塔を通って、大きな鉄塔の後ろ側を通る送電線に接続している。当初は、手前の鉄塔から、大きな鉄塔の手前側の送電線に、そのまま最短距離で接続する計画だった(出所:日経BP)
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 費用面では、当初予定の連系関連費の約1億円から、鉄塔を2本追加し、電線が通る下の土地の購入費が増したことで、2倍近くに膨らんだ。ただ、全体の事業費が50億円を超える規模だったこともあり、事業性を大きく損ねることはなかったとしている。

通常のゴルフ場跡よりも多くパネルが並ぶ

 ゴルフ場跡地を活用したメガソーラーというと、太陽光パネルはゴルフ場のフェアウェイやバンカーというプレイエリアだった場所に並べ、ホール間の場所などは従来の残置林を残している配置が多い。

 金ケ崎のメガソーラーは、基本的にそうした設計を採用しつつも、一般的なゴルフ場跡のメガソーラーよりも、ホール間のより広い場所を活用して満遍なくパネルが並んでいる印象を受ける(図4)。

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図4●一般的なゴルフ場跡のメガソーラーよりも平坦で多くのパネルが並ぶ
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図4●一般的なゴルフ場跡のメガソーラーよりも平坦で多くのパネルが並ぶ
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図4●一般的なゴルフ場跡のメガソーラーよりも平坦で多くのパネルが並ぶ
ホール間の土地も多く活用できた(出所:上は日本コムシス、コムシスクリエイト、下は日経BP)

 これは、元々のゴルフ場の開発経緯にも起因する(図5)。全体が丘の上に位置し、比較的、平坦な場所が多かった。このため、大規模な造成による地形の変更などは避けつつ、緑地も最大限に残しながら、通常のゴルフ場跡よりも多くの太陽光パネルを配置できた。

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図5●ゴルフ場時代(上)とメガソーラーの建設中(下)の様子
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図5●ゴルフ場時代(上)とメガソーラーの建設中(下)の様子
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図5●ゴルフ場時代(上)とメガソーラーの建設中(下)の様子
(出所:日本コムシス、コムシスクリエイト)

 林地開発許可は、ゴルフ場時代からの用途変更の範囲とし、ホール間などの木を切るための伐採届を新たに提出した。保安林や外周付近の森林など、伐採しない木も多く残している。

 北向きに下っていく斜面が一部あり、そこではアレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の前後間隔を広くして影による発電ロスを最小化した。

 間隔を広げすぎると、設置できる太陽光パネルの枚数が減るので、こうした場所では、冬にはある程度、影がかかってパネル1枚あたりの発電量が下がる時間帯があっても、より多くの太陽光パネルを並べることによって、事業性が高まる設計とした。

積雪期は工事を中断、他の発電所の工事に割り振る

 アレイは横向きで4段、設置角は20度、太陽光パネル低部の地面からの高さは約80cmを基準とした(図6)。近隣の最大積雪深は平均約40cmで、その2倍の高さとし、パネルから雪が滑り落ちて地面に溜まっても、パネル低部に届きにくくなるようにした。

図6●積雪を考慮して太陽光パネル低部の高さは約80cm
図6●積雪を考慮して太陽光パネル低部の高さは約80cm
設置角は20度とした(出所:日経BP)
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 積雪期となる1~2月は、2017年、2018年とも工事を中断する計画をたてた。EPC(設計・調達・施工)サービスは、親会社の日本コムシスが担当している。

 同社は、多くの太陽光発電所のEPCサービスを受託している(関連インタビュー)。このため、金ケ崎の積雪期には、近隣で建設中の別の発電所に金ケ崎の従事者に加わってもらい、集中的に進めるといった調整が可能となった。

 太陽光パネルは、中国トリナ・ソーラー製を採用した(図7)。72セル/枚で構成した出力320W/枚の製品を6万4836枚並べ、太陽光パネルの容量は20.747MWとなっている。直列で18枚を接続した。

図7●PCSはTMEIC製、太陽光パネルはトリナ・ソーラー製
図7●PCSはTMEIC製、太陽光パネルはトリナ・ソーラー製
直流1000V対応機の採用や、所内を昇圧して送電することで投資効率、発電効率を増している(出所:日経BP)
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 これに対して、パワーコンディショナー(PCS)の定格出力は18.75MWとなっている。

 PCSは、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。定格出力750kW・直流1000V対応機を25台設置した。遠隔制御が可能な機種としている。

 PCSの隣で交流電流を6.6kVに昇圧して敷地内を送電し、連系設備で最終的に66kVに昇圧し、特別高圧送電線に送電している。

 杭基礎と架台は、中国Powerway Renewable Energy製の一体型の製品を採用した(図8)。起伏がある地形での設置に向く上、コスト面の利点が大きかったとしている。

図8●中国Powerway Renewable Energy製の杭基礎と架台を採用
図8●中国Powerway Renewable Energy製の杭基礎と架台を採用
起伏のある地形に向くだけでなく、コストと施工性に優れるという(出所:日経BP)
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融雪と凍結防止用にロードヒーター

 豪雪地域ではないものの、冬には積雪する。そして、寒さによって雪が凍る恐れもある。その対策として、連系設備を固定した基礎に、融雪と凍結防止用のロードヒーターを埋め込んだ(図9)。

図9●積雪時の点検に配慮
図9●積雪時の点検に配慮
雪の積もり具合の違いから効果がわかる(出所:日本コムシス、コムシスクリエイト)
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 これは、施工中に積雪し、困った経験から導入したという。

 連系設備の扉の下の位置に、ロードヒーターを埋め込んでいる。これによって、基礎の上に積もった雪によって、扉を開けにくくなるなど、点検時の作業負荷を軽減できる。さらに、換気口が雪で塞がってしまい、連系設備に悪影響を及ぼすことも防げるとする。

 O&M(運用・保守)は、コムシスクリエイトが自社で担当する。発電設備以外の土地全般や除草といったメンテナンス作業については、ゴルフ場時代の運営会社に委託する。これによって、地元に雇用も生まれるとしている。

 雑草の草刈りは、乗用型と刈り払い機を併用している。できるだけ乗用型を多く使い、草刈りの作業を効率化し、乗用型では難しい場所のみ、刈り払い機を使うことで作業の負担を軽減している。

 乗用型が使えない場所は、主に架台の近くや、木の近くとなる。架台に近づき過ぎると発電設備を損傷したり、作業者が衝突して負傷するリスクが高くなる。

 木の近くとは、ニセアカシアという落葉樹を指す(図10)。ゴルフ場時代から管理してきた木ではなく、雑草のように生えている。単独で生えている場所だけでなく、群生して生い茂っている場所もある。幹の太さが3cm以上に育っている場所も多く、これらは刈り払い機で切り倒している。

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図10●群生しているニセアカシア
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図10●群生しているニセアカシア
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図10●群生しているニセアカシア
幹が太くて硬く、乗用型草刈機で刈ることができない(出所:日経BP)

 使用している乗用型草刈機は、メーカーでは2.5mmまでの太さであれば、木も切り倒せるとしているが、それ以上の太さの場合が多い上、幹が硬いので作業者の安全を考慮し、刈り払い機を使っているという。

●発電所の概要

名称金ケ崎GC太陽光発電所
(サン・カントリー金ケ崎)
所在地岩手県胆沢郡金ケ崎町永沢
敷地面積約66万m2
発電設備の設置面積約53万6800m2
発電事業者コムシスクリエイト(東京都品川区)
太陽光パネル容量 20.74752MW
パワーコンディショナー(PCS)定格出力 18.75MW
年間予想発電量 約2100万kWh
投資額約53億円
EPC(設計・調達・施工)サービス日本コムシス
O&M(運用・保守)コムシスクリエイト
太陽光パネル中国トリナ・ソーラー製
(多結晶シリコン型、出力320W/枚、6万4836枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力750kW・直流1000V対応機、25台)
稼働開始日2016年6月2日
固定価格買取制度(FIT)の認定上の売電価格非公開
出力抑制無制限・無補償(指定電気事業者制度)
売電先東北電力