吸排気口からツル性植物「クズ」が侵入、パワコン内で繁殖し、稼動停止

エネテク 第1回

2018/03/08 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 今回から、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)を担う中で遭遇してきたトラブル事例を紹介する。同社は、2007年に設立された電気設備工事企業で、太陽光発電設備の施工も多く担当してきた。O&Mでは、ワンストップサービスを目指した取り組みに特徴があり、点検時には原因の分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといった対応が強みとなっている(関連コラム)。

 第1回となる今回は、パワーコンディショナー(PCS)の内部に、ツル性植物であるクズが伸びて侵入し、最終的に稼動が停止した例を紹介する(図1)。

図1●ツル性植物のクズがPCS内に侵入して密集
低圧の太陽光発電所における例。PCSは稼動を停止(出所:エネテク)
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 低圧の配電線に連系している太陽光発電所の点検を担当した際、発見した。さまざまな地域の発電所で、同じような例を見かけていることから、国内の多くの発電所で生じている可能性があるとしている。

 例えば、当初の予想に比べて、発電量が大幅に少ない状態が続いたことから、所有者が転売することを検討していた事業用の低圧太陽光発電所である。転売時に必要な発電所の状況把握のための調査の一環で、エネテクが現地に向かい発電設備を調べたところ、発見した。

 この低圧発電所では、遠隔監視システムが導入されていなかった。このため、PCSの稼動状況を把握できていなかった。

 現地を調査すると、敷地内にクズのツルが伸びていた。ツル性植物による太陽光発電所のトラブルでは、敷地外で伸びたツル植物が、太陽光発電所の外周を囲うフェンスに絡みついて伸び続け、フェンスの網目を埋めて「ツル植物の壁」のようになった状態で、台風などによる強風を受け、倒壊する例が知られている(茨城県常陸太田市、広島県東広島市のメガソーラーの関連コラム)。

 エネテクが調査した低圧の太陽光発電所では、ツル性植物が架台に絡みはじめていた(図2)。低圧の太陽光発電所では、一般的に、PCSは架台に固定されている。

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図2●架台に絡まるだけでなく、PCSの吸排気口に向かって伸びていくことが多い
吸排気口の外からでも、中にクズが繁殖していることがわかる(下)低圧の太陽光発電所における例(出所:エネテク)
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 ツル性植物は、架台に固定されたPCSの付近にも伸びていた。PCSに絡みついて覆っているようなことはなかったが、PCSの近くで枝分かれしたツルが、PCSの吸排気口の中に伸びているのを見つけた。

 架台の近くにツル性植物が伸びている場合、このようにPCSの吸排気口にツルが伸びて向かっていくことが、なぜか多いという。

 吸排気口は、ファンの正常な稼動のために必要な構造である。日射が強く、太陽光発電電力が増えるほど、直交変換などを担うパワー半導体の稼動によって、PCS内の温度が高くなる。一定以上に過熱すると、PCSは稼動を続けられず、壊れてしまうために、ファンが稼動して過熱を防いでいる。

 吸排気口からPCS内に侵入したツル性植物は、ファンを中心にPCSの内部に伸びていく(図3)。吸排気口の外側から侵入している時点では、比較的、細いツルの場合でも、内部に侵入して伸びていくにつれて、太くなっている場合が多いという。

図3●ファンの周辺を中心に密集
低圧の太陽光発電所における例。PCSは稼動を停止(出所:エネテク)
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 ファンの周辺を中心に、内部にツル性植物が伸びて密集してくると、ツル性植物によって熱を外部に逃がす効果が落ち、発電中は過熱しやすくなってくる。ファンが稼動を停止していた場合もある。また、ファンが稼動しても、PCS内の適切な冷却が間に合わなくなってくる。

 すると、PCSの安全装置が働いて、稼動を停止する。太陽光パネルは発電を続けているので、PCSの段階で発電をロスしていることになる。

 発電量が予想よりも少なく、転売を検討するためにエネテクが調査を担当した発電所の場合、こうしたツル性植物の侵入によるPCSの停止を確認でき、発電量が予想よりも低調だった理由の一つとなっていたという。

 こうした場合、PCS内からツル性植物を取り除いた後、まずファンが正常に動くことを確認し、様子を見ながらPCSを再稼動させる。

 ただし、長期間にわたって稼動が止まっていたPCSの場合、それだけでは再稼動できない場合があるという。他の部品の交換や、メーカーによる修繕が必要になる。この間も、発電のロスは続く。

 今回は、低圧太陽光の例を紹介したが、高圧や特別高圧の送配電線に連系している太陽光発電所でも、分散型のPCSを採用している場合、低圧向けと同じようなPCSの構造で、架台に固定していることから、同様のトラブルが起きる恐れがあるという。

 いずれにしても、日常的に発電所を訪れて状況を把握し、ツル性植物などが繁殖していれば対策を施すとともに、PCS単位などで遠隔監視システムを導入し、稼動状況からトラブルの兆候を把握するなど、適切な運用によって防げると指摘する。