「パワコンのフィルター」を甘く見ない、稼働停止の原因に

エネテク 第2回

2018/03/22 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 今回のシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)を担う中で遭遇してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に設立された電気設備工事企業で、太陽光の施工も多く担当してきた。O&Mでは、点検時に原因の分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特長となっている(関連コラム)。

 第2回は、パワーコンディショナー(PCS)の換気用のフィルターが目詰まりしたことによるトラブルを紹介する(図1)。太陽光発電所において、比較的多く生じるトラブルの一つとなっている。

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図1●埃や塵で覆われたフィルター
点検をはじめて担当した際に発見することが多い(出所:エネテク)
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 PCSは、太陽光パネルからの直流を、交流に変えて連系先の送電網に送電する。変換回路の心臓部であるパワー半導体素子は、直流を断続的にスイッチング処理する過程で発熱する。入力される太陽光からの直流が大きいほど、発熱の度合いは大きくなる。

 パワー半導体の排出する熱を、いかに効果的に発散するかが、PCSの性能を維持し、かつ、長期間の信頼性を確保する上で、重要になる。そのため熱の発散が不十分で、温度が上昇した場合、安全機能が働いて稼働停止となる機種が多い。

 エネテクによると、PCS内が過熱した場合、機種によって、安全機能の働き方に違いがあるという。「稼働停止」のほか、稼働を「抑制」する機種もある。一定以上の温度に上がると、稼働を「絞る」イメージで、一部だけを稼働させるモードに切り替わる。これにより、パワー半導体の発熱度合いが下がり、温度が所定よりも下がると、フル稼働を再開する。

 ただし、「停止」でも「抑制」でも、フル稼働しなかった間、売電ロスにつながる。

 こうした過熱によるトラブルを防ぐために、PCSは冷却機構を設けている。出入力の規模や機種によって、冷却機構は変わる。

 小型機の場合、主に吸排気口を通じた自然の空冷、または、吸排気口とファンの併用によって、熱を外に逃がし、外気を取り込むことで、過熱を抑える仕組みが多い。

 一方、メガソーラー(大規模太陽光発電所)向けの大型機の場合、吸排気口やファンに加え、PCSを収めた屋外設置用の筐体内の空気を冷やすために、空調機を使うことが多い。

 フィルターは、自然空冷、ファンの回転、空調機のいずれの手法を採用した場合でも、備えている。外気を通じて埃や塵などが、PCS内に入らないようにするためである。

 フィルターの清掃を怠って目詰まりすると、換気の機能が低下してしまう(図2)。第1回で紹介した「吸排気口からツル性植物のクズが侵入し、PCS内で繁殖した例」と同じように、冷却効果の低下で、PCSが停止する場合もある。

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図2●換気の機能が低下し、発電ロスや寿命の低下を招く
上はフィルター上を覆っているルーバー(立体的な切り起こし)を外したところ、下はフィルター(出所:エネテク)
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放置すれば換気の機能が低下

 そこで、多くのPCSメーカーは、半年に1回、少なくとも1年に1回といった頻度で、フィルターの清掃を推奨している。説明書にも記載していることが一般的である。

 しかし、発電事業者の多くは、こうした定期的な保守に関する認識が乏しい。適切なO&M(運用・保守)の体制を確立している場合を除いて、フィルターを適切に清掃していないことが多いという。個人が運営している低圧案件などにその傾向が多い。

 長期間、清掃せずに放置して、フィルターの目詰まりが酷くなると、ファンは回っているのに、吸排気口の外側に手をかざしても、熱の排出をまったく感じられなくなる。こうした状態になると、元々白かったフィルターは、こげ茶色に汚れている。一般的に、3年程度、清掃を怠ると、換気の機能がほぼなくなってしまうとされている。

 フィルターは、ハケやエアブローなどを使って汚れを落とすだけで、ある程度、機能が回復する(図3)。可能であれば、水洗いで清掃することが理想である。それほど難しい作業ではないが、怠れば発電量の低下や、PCSの寿命の短縮につながる。

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図3●ハケやエアブローで掃除するだけで効果が大きい
上は左が清掃中、右が清掃後。下は左が清掃前、右が清掃中(出所:エネテク)

フィルターの取り外しを十分に考慮していない機種も

 エネテクが遭遇したフィルターの目詰まりでは、稼働後、一度も清掃していないと思えるような汚れ方も多い(図4)。同社が点検やO&Mを受託し、はじめて訪れた太陽光発電所で、こうした例を目にすることが多いようだ。

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図4●稼働後、一度も掃除していないように見える例も多い
一番上は左がルーバー、右がその下にあるフィルター。そのほかは、左が清掃前、右が清掃後(出所:エネテク)

 PCSの機種によっては、フィルターの取り外しやすさを、十分に考慮していない設計もあるという。

 例えば、吸気用と排気用のフィルターが分かれている機種で、排気用のフィルターは筐体の外からネジで固定され、簡単に取り外せるのに対して、吸気用のフィルターは筐体の内側から固定され、さらに固定されている位置も含めて、フィルターの取り外しに苦労する場合があった(図5)。

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図5●筐体の内側にフィルターがネジ止めされている
フィルター清掃の作業性が十分に考慮されていない機種もある(出所:エネテク)
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 この機種は出力約50kWで、低圧案件などで多く採用されているが、エネテクが点検したのは、出力2MWの高圧案件で、このPCSを40台使って分散型のシステム構成としていた。

 保守性を考慮した設計となっていることが多い集中型のPCSを使う場合に比べて、1台ごとのフィルター清掃に手間がかかり、さらにその作業を40台、連続して行う必要がある。その作業負担はかなり大きい。

 分散型のPCSを採用した場合のリスクやO&Mコストが増加する、隠れた要因の一つとなりそうだ。ただし、小型PCSのすべてがこのような設計となっているわけではなく、保守性を考慮している機種もあるという。