他法令違反で初の「認定取消」、農転せずに太陽光パネル

2019/04/11 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

まとめて8案件の認定を取り消し

 経済産業省・資源エネルギー庁は3月6日、固定価格買取制度(FIT)に基づく8件の太陽光発電の認定を取り消したと発表した。農地法と農振法に違反したことが、取消となった理由で、FIT法違反でなく、「他法令違反」による認定取消はこれが初めてとなる。

 いずれも沖縄県内に立地する連系出力50kW未満の事業用低圧太陽光の案件で、経産省の認定に関する公表資料では、2013年2月と同年7月に認定を取得しており、4件は稼働済み、4件は未稼働となっている。

 8件のうち4件は同一の企業、4件は同一の個人が発電事業者となっているが、個人名は同企業の代表者であることから、事実上、同一の主体による案件とみられる。

 「認定取消」が公表された直後の3月下旬、問題となった事業用低圧発電所を訪れた。那覇市街からクルマで30分ほど、西原町内の農業地帯にあり、ソーラーシェアリング(営農型太陽光)設備か、太陽光パネルを屋根材に使った「駐車場太陽光」のようにも見える(図1)。

図1●認定取消となった沖縄県西原町の事業用低圧太陽光設備
(出所:日経BP)
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「営農型」のようにも見えるが・・・

 アレイ(太陽光パネルの設置単位)を支える支柱は2m程度の高さがあり、架台には、結晶シリコン系の72セル/枚タイプの太陽光パネルが、ほぼ隙間なく設置されている。パネル下に、農業機械や軽トラックなどを収納しておくのに適したようなスペースだ。

 パネルの下で営農を行う、ソーラーシェアリングの場合、パネルの間隔をあけて、1日に数時間は地面に直射日光が当たるにようにするのが普通だ。また、農作業時の効率性に配慮して、パネル架台の外周は開放的にしておき、これにより太陽の間接光も十分に入る。問題となった西原町のサイトは、架台の周囲をブロック塀と生垣でほぼ囲んでいるため、側面からも光が入りにくく、パネルの下は終日、薄暗い状態になっている。

 このため、支柱の高い架台に太陽光パネルを設置しているという点では、ソーラーシェアリングの形式に近いものの、パネル下にほとんど光が差さない点で「駐車場太陽光」に近く、実際に現時点で、パネル下で営農が行われているようには見えない(図2)。

 なお、今回の件に関し、認定取消を受けた事業会社に取材を申し込んだものの、応じてもらえなかった。

図2●パネル下で農業が営まれている様子はない
(出所:日経BP)
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「農地転用」は出来ない

 西原町の農業委員会によると、この土地は農振法上の「農用地区域」にあたる。同区域は、「農業上の利用を確保すべき土地」として、市町村が同法に基づき設定する。農地の中でも、「特に守るべき土地」との位置づけのため、農地転用は認められない。農地法上、この区域で太陽光発電事業を行うためには、「一時転用」制度を活用し、ソーラーシェアリングの方式を選択するしかない。

 「一時転用」では、事前にソーラーシェアリングの計画書を市町村の農業委員会に提出し、認められることが前提となる。問題となったサイトでは、こうしたプロセスを経ずに既述したような構造の太陽光発電設備を設置していた。これは農地法違反となる。

 農業委員会では、こうした状況を把握し、事業者(土地所有者)に対して、元の状態に復元するように何度か口頭で指導してきた。それでも改善が見られないため、沖縄県農林水産部農政経済課にこうした経緯について報告した(図3)。

図3●西原町の農業委員会が何度か指導したが・・・
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 県では、報告を受け、農業委員会とともに現地を調査し、事業者に対して再度、太陽光設備などの撤去を指導し、書面による勧告も行ったが、改善はなかった。農業委員会では、それ以降の行政上の措置については非公表としているが、最終的に県知事名による原状回復命令が出されたと見られる。農地法上、これに従わない場合、罰則規定もある。

「聴聞」を経て認定取消に

 エネ庁は、2017年4月に施行された改正FIT法により、こうした他法令に違反した状態でFITによる発電事業を行っている場合、認定を取り消せる規定を設けた。具体的にはFITに関する省令第46号に明記された「認定の申請に係る再生可能エネルギー発電事業を円滑かつ確実に実施するために必要な関係法令(条例を含む)の規定を遵守するものであること」(省令第46号・第5条の2第3号)という規定で、今回はこれを適用した。

 ただ、他法令違反の状態であるか否かは、農地法の場合、都道府県が判断し、状況を把握しているため、エネ庁では、FITに関わる法令違反について自治体に情報提供を呼び掛けてきた。今回は、沖縄県がこれに応じる形で、内閣府沖縄総合事務局・経済産業部に通報した。

 同部では、経済産業大臣名で、事業者に対して文書で現状回復について指導したが、この時も改善は見られなかった。そこで、「聴聞」を実施し、事業者本人から言い分を聞いた。

 「聴聞」とは、事業者にとって不利益となる行政処分を行う場合、他部署の国家公務員が中立的に判断する行政法上のプロセス。今回は、聴聞を経て農地法違反による「認定取消」が適切との判断となり、事業者に通知された。

 こうした認定取消の措置は、沖縄県とともに沖縄電力にも通知され、FITによる売電を停止するため、事業者の立会いの下で、電力系統との接続が解除された(図4)。

図4●すでに沖縄電力により系統連系は解除された
(出所:日経BP)
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 今回の農地法違反では、そもそも一時転用の手続きを踏まずに太陽光設備を設置したことが、「違反」とされた。仮に設置されていた設備が「営農型」として適していたとても、法手続き上、事後的に「一時転用」が認められることはないというのが原則だ。

 ただ、農業委員会では、今回、設置されていた「パネル下に直射日光がほとんど入らない太陽光設備」を「営農型」とは判断していないという。その意味では、農地転用ができない農用地区域に通常の太陽光発電所を設置したことが法令違反になる。

手続き踏まずに「コンクリート舗装」

 今回の認定を取り消された8区画の事業用低圧案件のうち、4つはこうして稼働済みの案件が対象となり、売電停止となった。

 残り4案件は認定を取得後、長期間、未稼働のままだった。4つの稼働済み案件に隣接しており、敷地全体がコンクリート舗装されている。これら未稼働案件も、稼働済み案件と共に「認定取消」となったのは、この「コンクリート舗装」が農地法違反とされたからだ(図5)。

図5●未稼働案件は、事前手続きを経ずコンクリート舗装したことで農地法違反に
(出所:日経BP)
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 2018年の農地法改正で、ハウス栽培や植物工場などを想定し、全面をコンクリート舗装しても農地として認められるようになった。ただ、この構造による営農が可能になるのは、一時転用と同様、農業委員会に事前に計画書などを提出して認められることが必要になる。今回のケースでは、こちらもこうした事前の手続きを経ておらず、「農地法違反」状態だった。

 そこで、農業委員会では、コンクリート舗装を撤去して、現状を回復するよう何度か、指導してきた。だが、改善が見られず、稼働済みの4案件とともに、県に報告し、国による聴聞を経て、認定が取り消された。

 今回の「認定取消」は、改正FIT法によって新たに設けられた条項を初めて適用したもの。改正FIT法によって、従来の「設備認定」から「事業計画認定」に衣替えし、認定に際しては、従来の「設備内容」に加え、電力系統との接続(連系)や事業用地の利用に関する契約締結も含めて実現性のある計画であることを認定の取得に求められることになった。同時に森林法や農地法、農振法、河川法、環境影響評価法など、土地利用などに関わる他法令に違反した場合、認定の取消が可能となる条項も盛り込まれた。