発電ロスの元、「接続間違え」を甘く見ない

エネテク 第14回

2018/07/19 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 今回のシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に設立された電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 点検時に多く発見するトラブルの一つに、太陽光パネルを直列や並列に接続したストリングにおける、「太陽光パネルの接続間違え」があるという。

 例えば、設計とは異なる枚数で太陽光パネルを接続している場合や、コネクタのプラス、マイナスの極性を逆に接続している場合、さらには、一部のパネルの接続を忘れることで、設計よりも少ない枚数で接続している場合などがある。

 まず、結晶シリコン型の太陽光パネルを導入した発電所の例を紹介する。

 結晶シリコン型パネルは、直列に接続して接続箱やパワーコンディショナー(PCS)に発電電力を入力する。この直列の接続で設計と異なっている場合がある。

 とくに、一つのアレイ(太陽光パネルを架台に設置する単位)内だけで直列接続が完結せずに、ほかのアレイまでまたいで直列に接続している「渡りケーブル」の場合、接続の作業が複雑になることから、接続の間違えが起きやすいという。

 エネテクが点検を担当した太陽光発電所の例では、開放電圧を測定した際に異常が見られたことをきっかけに間違いを見つけた(図1)。

図1●アレイをまたいで直列接続されている
電圧が所定の約半分のストリングを発見(出所:エネテク)
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 この発電所では、ストリングは6枚と8枚の2種類で構成されていた。このうち8枚で構成されているストリングの中に、本来であれば開放電圧が約280Vのはずなのに対して、約140Vとほぼ半分に低下している回路があった。

 この原因を探っていくと、まず太陽光パネルの直列接続が、アレイ内で完結せずに、複数のアレイをまたいで接続する構成となっていた。「渡りケーブル」の例となる。

 ここではやはり、アレイ間をまたぐ「渡りケーブル」のパネル接続で、電線の接続ミスが起きていた(図2)。「渡りケーブル」の場合、パネルに付属している電線では、長さが足りないことが多い。そこで、延長ケーブルを現地で作成して接続する。ここで誤りが起きやすい。

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図2●「渡りケーブル」の接続が間違えていた
延長用の電線のコネクタの極性間違いが起きやすい(出所:エネテク)
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 アレイの両端部に位置する太陽光パネルと、接続箱やPCSを接続する場合も同じである。ここでも延長用の電線を作成して接続する。

 ここで起きやすいのは、延長用の電線に取り付けたコネクタが、両方ともプラス、またはマイナスになっているというミスである。極性を間違え、プラスとマイナスを接続するはずが、プラスとプラス、マイナスとマイナスで接続してしまう。

 同じような間違えを乾電池で説明すると、複数の乾電池を直列接続している中で、一部を誤ってマイナスとマイナスで接続すると、その2個分の電池は機能せず、2個分に相当する電圧が低下している状態となる(図3)。太陽光パネルでも同じ現象が起きる。

図3●乾電池を使った直列接続間違えの説明
接続を間違えた電池分の電圧が上がらない(出所:エネテク)
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 今回の例の場合、8枚の太陽光パネルの直列接続による回路のうち、アレイの両端に位置する4枚で、このような極性の間違えがあった。この4枚分の発電をロスしている状態だった。これによって、開放電圧が本来の約280Vに対して、半分の約140Vとなっていた。

 この状況を顧客に説明し、了承を得た上、エネテクが延長用の電線のコネクタのプラス、マイナスの極性を設計通りに直した。すると、この回路の開放電圧は設計通りの約280Vに上昇し、発電が正常化した(図4)。

図4●是正後は電圧が正常に上昇
是正前の約140Vから約280Vへ(出所:エネテク)
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並列も重なる化合物型の接続間違え

 結晶シリコン型以外の薄膜系のアモルファスシリコン型や化合物型の太陽光パネルは、パネル1枚の電圧が高いため、ストリング回路は直列と並列を組み合わせて構成する。

 ストリング回路の電圧は直列接続する枚数に比例して高くなり、電流は並列数に比例して大きくなる。このため、一つのストリングで同じような電圧、電流を得ようとすると、パネル1枚の電圧・電流値により、ストリング構成が大きく変わってくる。

 一般的に、結晶シリコン型では、直列接続する枚数が12~24枚程度、並列数は1列で、これに対して、薄膜系では直列接続する枚数が4~10枚程度、並列数が3~4列などとなる。接続の複雑さが増すことから、薄膜系の方が接続の間違えが多くなるという。

 化合物型の太陽光パネルを導入した出力約49.9kWの太陽光発電所から、エネテクに点検の依頼があり、出向いて標準的な点検をしてみると、電流-電圧(I-V)特性の測定で異常を発見した(図5)。

図5●化合物型パネル約1枚分少ない
電圧、電流の低さから接続間違えが疑われた(出所:エネテク)
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 この太陽光発電所は、出力160W/枚のCIS化合物型パネルを312枚、施設の屋根上に並べている。ストリングの構成は、4直列・4並列、4直列・3並列の2種類で構成していた。いずれも直列枚数は4枚なので、電圧は約430Vで変わらない。

 しかし、同じ接続箱に入力していながら、隣り合うストリングにおいて、一方が427.2Vと正常なのに対し、もう一方のストリングは344.1Vと83.1Vも低かった。出力(Pmax)も743.8Wに対して、562.4Wと181.4Wも低い。おおよそ太陽光パネル1枚分の差があり、その原因として太陽光パネルの接続間違えが疑われた。

 不具合の特定では、苦労があった。詳細な回路図がなかったのである。そこで、エネテクでは赤外線カメラと、戸上電機製作所の「セルラインチェッカー」を使い、回路を特定した。

 セルラインチェッカーは、故障パネルの特定に使われる機器だが、設計図と異なっているストリング構成の場合や、今回のように図面を入手できない場合に、ストリングを構成する太陽光パネルの配置の特定に応用できる(関連コラム)。

 赤外線カメラを使ったのは、パネルの過熱を疑ったからだった(図6)。直列接続の枚数が設計より少ない並列回路には、負荷がかかり、過熱しているのではないかと予想した。実際に、予想したとおりの熱分布が見られた。

図6●図面がなく赤外線カメラなどを使って回路構成を把握
直列接続の枚数を少なく間違えた回路で熱分布の異常(出所:エネテク)
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 これらの調査の結果、電圧に異常を来たしていたストリングは、直列接続の枚数に誤りのある並列回路を含んでいた(図7)。

図7●直列接続枚数を間違えた並列回路
ストリングの構成枚数も増減(出所:エネテク)
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 4直列・4並列の16枚で構成されているはずが、4直列・3直列で、残りは3直列・1並列で15枚と1枚少ない構成だった。この隣のストリングは、この1枚少ない枚数を吸収するように、4直列・3直列で、残りは5直列・1並列で17枚と1枚多い構成だった。

 この4直列・3直列で、残りは3直列・1並列で15枚と1枚少ない構成のストリングで、電圧が約80V低かった。

 これらの接続間違えを是正した後、発電時のI-V特性を調べると、是正前は電圧が約80V低かったストリングで、電圧が424.1Vと約80V上がり、正常になった。発電量も約1枚分の上昇を確認できた(図8)。

図8●是正後は電圧が正常に上がる
直列を1枚増やした分に相当する約80V上昇(出所:エネテク)
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 是正前の好天時には、隣の正常なストリングの出力が1609Wだったときに、この接続間違えのストリングでは出力は1195Wで414W低いといったデータもあった。パネル約3枚分の発電をロスしていたことになる。

 是正後に熱分布も調べたところ、過熱も解消されていた(図9)。

図9●熱分布も正常に
過熱していたパネルも周囲とほぼ同じ温度分布に(出所:エネテク)
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 今回、紹介したような太陽光パネルの接続間違えは、稼働開始後、一度も点検をしていない発電所で比較的多くみつかる不具合という。中でも、配線図が残っていない、配置図と実際の配置が違うといった場合には、要注意としている。

 1枚の接続間違えでも、20年間の売電期間を考えると、影響は大きい。しかも、今回のCIS型パネルの接続間違えが見つかった発電所では、遠隔監視システムが導入されていた。それでも、施工ミスによる接続間違えを発見できなかった。

 こうしたことから、施工時の記録を入手し、保管しておくことの重要性と、施工会社ではない第三者による点検が有効な場合もあると強調している。

【エネテクによるトラブル・シューティング】