煙突からの灰が太陽光パネルを覆い、発電量を3割近くロスも

エネテク 第15回

2018/08/02 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 今回のシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に設立された電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 エネテクに最近、相談が増えているトラブルに、太陽光パネルのひどい汚れがあるという。一般的な太陽光発電所であれば、パネルの表面が一時的に土埃などに覆われても、いずれ雨が降り、汚れは洗い流される。

 今回の例では、雨で汚れが流れ落ちず、長期的に表面を覆って大きな発電ロスにつながっていた。

 紹介事例は、工場の屋根上に設置された太陽光発電設備である。現地を調査したところ、本来は青く見えるはずの太陽光パネルの表面が、全面的に灰色っぽく、くすんで汚れていた(図1)。

図1●灰で全面が汚れていた屋根上の太陽光パネル
産業廃棄物工場の煙突の近くにある(出所:エネテク)
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 想定していた発電量に達しない運用が続いていたことから、エネテクに相談があり、現地に出向いてこの状況を発見した。

 この工場の業種は産業廃棄物関連で、焼却後の排気を出すための煙突が建っている。その近くの屋根上に、太陽光パネルが並んでいる。

 どのように汚れるのかを観察してみると、煙突から粉のような灰が落ちてきていることがわかった。この灰が太陽光パネルに積もり、表面が灰色になっていると推察された。

 そこで、汚れている太陽光パネルの一部を洗浄し、洗浄していないパネルと発電量を比べてみた(図2)。比較するために、太陽光パネルを直列で接続した回路(ストリング)ごとに洗い、洗っていない回路と発電量を比べた。

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図2●洗浄前後の太陽光パネルの外観の差
発電量は大きく変わった(出所:エネテク)

 計測した日は曇りで、それほど発電していない状態だった。それでも1ストリング当たりの出力が400W台と100W台になるなど、最大で301.9W、平均的に約260W、最小でも166.3Wの差が生じていることがわかった(図3)。もし、晴れて日射の良い日だったら、もっと大きな差になっていただろうとしている。

図3●発電量の差
パネルを洗ったストリング、洗っていないストリングを比べた(出所:エネテク)
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 こうした調査結果から、3割近く発電量をロスしていた可能性があると見ている。

 今回の屋根上の太陽光発電所は、屋根の傾斜に沿うように太陽光パネルを固定していたため、通常の地上設置型に比べて設置角は小さくなる。灰が降り注ぐ環境とともに、設置角が小さいために、雨が降っても流れ落ちにくいことが影響しているようだ。

 黄砂などの季節的なものではなく、日常的に降り注いでくる灰による汚れのため、定期的に洗浄しない限り、発電量のロスが続くことになる。

 エネテクでは、こうした汚れの洗浄には、高圧洗浄機を使っている。ドイツのケルヒャー製の機種で、太陽光パネル洗浄用に開発された部材を先端に取り付けて洗う(動画)。

動画●高圧洗浄機による太陽光パネル洗浄の様子
ケルヒャーの高圧洗浄機を使用(提供:エネテク)

 この部材は円盤状のブラシで、希釈した洗浄液を流しつつ、円盤状のブラシが回転しながらパネルの表面を洗っていく。

 太陽光パネルメーカーによっては、高圧洗浄機でパネル表面を洗った場合、保証の対象外とすることがある。そこで、エネテクでは、設置されている太陽光パネルのメーカーに問い合わせ、ケルヒャーのこの手法で太陽光パネルを洗っても、パネルメーカーが保証を外さないことを確認してから洗っている。

 ケルヒャーが提供する希釈用の洗浄液についても、メーカーに渡して確認している。

洗浄の効果が大きい2つの条件

 洗浄の効果がある太陽光発電所は、まず、近隣に太陽光パネルの表面を汚す微小物質の排出源があること。今回の場合は煙突で、このほか、農地や畜産施設などが影響する場合もある。もう一つは、屋根上などのようにパネルの設置角が小さいことである。

 汚れが表面に積もりやすく、雨で流れ落ちにくいという二つの環境が揃うと、汚れによる発電量のロスが大きくなりやすい。

 エネテクによると、こうした環境にある太陽光パネルを洗うと、洗浄コスト以上の売電収入の増加が見込める場合も多いという。同社の場合、洗浄の費用は、出力1MWあたり約100万円に設定している。

 パネル洗浄の依頼が増えているのは、こうした費用対効果が認識されてきたこともあると見ている。定期的な洗浄の依頼も増え、最近では、九州南部の新燃岳の噴火の後、近隣から新たに受注した。

 養豚場や養鶏場の屋根上や隣接地の太陽光パネルも、洗浄するとストリングごとに60W~100Wといった発電量の差が生じることがあった(図4)。この分だけロスしていたと考えられる。

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図4●洗浄の効果をその場で確認
他の発電所における例(出所:エネテク)