売電だけじゃない! 新・メガソーラー活用術

駐車場屋根と防災拠点を兼ねるソーラーカーポート

売電に加え、環境、快適、防災の“一石四鳥”を追う太陽光発電所

2016/09/28 00:00
金子憲治=日経BPクリーンテック研究所

 残された太陽光発電所のフロンティアとして、屋外駐車場の屋根が注目されている。新たな造成をせずに、平坦で日当たりの良い立地が手に入る上に、ビルなど需要設備と隣接しているため、系統連系が容易で、将来的に自家消費モデルも選択できる。

 駐車場の屋根として太陽光パネルを活用する「ソーラーカーポート」は、CO2削減という環境性に加え、駐車場を利用するドライバーにとっては、日除けや雨避けになり、快適性が向上する。加えて、災害時の防災拠点としての機能を評価する動きが出てきた。

全国初、道の駅にメガソーラー

 栃木県佐野市・田沼地区は日本列島の「真ん中」にある。日本列島の東西南北の基準点を線で結ぶと、その線が交わる中心点が田沼地区(旧田沼町)の上になる。同地区にある道の駅を「どまんなか たぬま」と名付けたのは、こうした立地に由来する。

 今年8月29日、道の駅「どまんなか たぬま」のホールで、「地域防災拠点完成記念祝賀会」が開かれた。完成した「地域防災拠点」とは、道の駅北側の屋外駐車場に設置したカーポート型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)だ(図1)。

図1●道の駅「どまんなか たぬま」に設置したソーラーカーポート(出所:どまんなか たぬま)
図1●道の駅「どまんなか たぬま」に設置したソーラーカーポート(出所:どまんなか たぬま)
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 佐野市のほか、佐野市農業協同組合、佐野市あそ商工会、みかも森林組合などが出資する第3セクター、どまんなか たぬま(栃木県佐野市)が建設した。平常時は太陽光による売電事業として運用し、災害時には防災拠点として活用する。道の駅が大規模なカーポート型太陽光を設置したのは全国で初めてという。

 道の駅の北側にあった約5000m2の屋外駐車場を屋根付きに改装するとともに、屋根上に太陽光パネルを設置した。駐車スペースは350台分で、出力は約1.1MWになる。鉄骨柱に折板屋根を取り付け、その上にパネルを固定した。

 基礎は、地中1mの深さに鉄筋コンクリートで固定した。4本の柱の間に縦横2台、計4台の駐車スペースを確保した。

災害時にはテント幕で個室を提供

 災害時は、一部のパワーコンディショナー(PCS)を自立運転して、蓄電池を充電するほか、屋根の下のスペースを避難所や物資置き場などとして開放する。駐車場屋根の軒下や柱の間にテント幕を張ることで、外から区切られたスペースを容易に確保でき、救護所や仮設トイレ、仮設風呂などを設置できる。

 災害時には、やむなく自動車で避難して過ごす人たちも出るが、そうした被災者の専用駐車場としても活用できる。

図2●テント幕を張れば、救護所や仮設トイレなどを設置できる(出所:日経BP)
図2●テント幕を張れば、救護所や仮設トイレなどを設置できる(出所:日経BP)
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図3●非常用のポータブル蓄電池(5kWh/台×2台)を常備(出所:日経BP)
図3●非常用のポータブル蓄電池(5kWh/台×2台)を常備(出所:日経BP)
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 また、駐車場の西側、約40台分は、屋根の高さを3m以上にして、災害用の特殊車両も駐車できるように設計した(図2)。

 非常用のポータブル蓄電池は10kWh分(5kWh/台×2台)を常備した。災害時には一部のPCSを自立運転モードに切り替えて、蓄電池に充電する。パソコンや携帯電話など、防災拠点に必要な最低限の電源を確保できる(図3)。

 今後、売電収入を活用して、防災用に井戸を掘って水を確保するとともに、エンジン発電機を導入して、太陽光パネルの電力だけでは賄いきれない非常時の電力需要に備えておくことを計画している。

県内の企業が設計・施工、資金を融資

 設計はフケタ設計(宇都宮市)、施工は渡辺電設(栃木県足利市)が担当し、太陽光パネルはカナディアンソーラー製(265W/枚)・3985枚、PCSは田淵電機製(25kW)を採用した。総事業費は5億5000万円で、足利銀行から融資を受けた。買取価格は32円/kWh(税抜き)。

 どまんなか たぬまの篠原敏秀社長は、「3年ほど前から佐野市とも協議し、環境面から太陽光発電の設置を検討し始めた。並行して、道の駅の防災拠点としての機能を高めるため、屋根付き駐車場にも着目してきた。太陽光パネル付きの駐車場屋根を導入することで、行政による災害対策を補完し、安心安全な街づくりに貢献できる」と話す。

 道の駅「どなんなか たぬま」では、すでに電気自動車用の充電器を導入するなど、市と連携して環境対策に取り組んできた。太陽光については、建物の上に設置する検討をしたが、ドームの屋根形状から設置できなかった。

 一方で、東日本大震災では、被災者が自動車で避難して、近隣にある道の駅の駐車場で避難生活を強いられたケースが指摘された。こうした教訓から、道の駅の防災拠点としての役割が注目され、佐野市でも、道の駅を防災計画のなかに位置づける方向になった。

 加えて、「道の駅の利用者にとっても、雨でも濡れずに快適に来館できる。夏は車中の温度が上がりにくく、冬の積雪時にもクルマに雪が積もらずに済む。平常時にも利点が多い」と、篠原社長は言う(図4)。

図4●雨の日にも濡れずに乗り降りできる(出所:日経BP)
図4●雨の日にも濡れずに乗り降りできる(出所:日経BP)
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利用者に配慮し雨どいを設置

 建設費は5億5000万円となり、一般的なメガソーラーの建設コストに比べるとkW当たりの単価で1.5倍になった。その要因は、造成工事と架台(屋根)に手間をかけ、万全を期したからだ。北側駐車場はもともと地盤が低く、排水面で課題があったため、1mほど盛土して地盤を上げた。

図5●アスファルトを掘削し、ベースパック柱脚工法で基礎を固定(出所:日経BP)
図5●アスファルトを掘削し、ベースパック柱脚工法で基礎を固定(出所:日経BP)
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図6●設計変更して雨どいを取り付けた(出所:日経BP)
図6●設計変更して雨どいを取り付けた(出所:日経BP)
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 太陽光パネルを載せる架台には、鉄骨の柱頭に梁を渡して折板屋根を載せ、その上にパネルを装着した。「太陽光パネルの架台というのより、通常の建物を建設し、その上にパネルを載せたイメージ」(どなんなか たぬま・販売事業部の川田裕一統括マネージャー)。

 基礎は、ベースパック柱脚工法を採用した。地中1m程度の深さで、2m四方程度の型枠に配筋してコンクリートを打設。この基礎に柱脚をアンカーボルトで固定した(図5)。

 雨天時に駐車場を利用する来場者の快適性に配慮し、雨どいも設置した(図6)。実は、当初の設計では、雨どいはなかった。「建設中に大雨が降った際、屋根から滝のように雨水が落ち、傘が壊れるほどの勢いだった。このため、急きょ、雨どいを付けるように設計変更した」(川田統括マネージャー)という。

従業員向け駐車場に太陽光の屋根

 道の駅の持つ防災拠点としての機能が認識されたのは、2004年10月に起きた中越地震だったという。そうした動きと太陽光発電の普及や低価格化が相まって、道の駅など流通施設でソーラーカーポートが注目されるようになった。

図7●SUS静岡事業所のソーラーカーポート(出所:SUS)
図7●SUS静岡事業所のソーラーカーポート(出所:SUS)
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 こうしたニーズに対応し、いち早く商品化したのが、アルミニウム製機器製品などを製造するSUS(エスユウエス)(静岡市)だ。同社は、太陽光発電用にアルミ製架台を手掛けており、次の戦略商品として太陽光パネルを駐車場の屋根に採用した「ソーラーカーポート」を製品化し、昨年、静岡事業所の従業員用駐車場に実証的に設置した(図7)。

 出力0.7MWで、2805枚の太陽光パネルを屋根として並べ、396台分の駐車スペースがある。発電電力は、固定価格買取制度(FIT)を活用して売電している。プレキャスト式の基礎に3本の支柱を固定し、1ユニット(アレイ)は3つの基礎で85枚のパネルで構成する。1ユニットで12台の駐車スペースになる。

 従業員向けのため、美観への配慮よりもコストを優先し、太陽光パネルの裏は、化粧材などで覆っていない。このため、配線がむき出しなっている。ただ、大雨の際の快適性を考慮して雨どいは設置した。

図8●防寒テントシートと床台をオプションで用意(出所:日経BP)
図8●防寒テントシートと床台をオプションで用意(出所:日経BP)
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 駐車場の屋根として雨や日除けの機能を果たしつつ発電するほか、災害などの非常時には、避難施設として利用できるのが特徴。防寒テントシートと床台をオプションで用意しており、屋根(パネル)の下に設置することで、災害時に個室型の居住空間を提供できる(図8)。

 SUS静岡事業所のソーラーカーポートの建設費は、約2億3000万円。太陽光パネルは京セラ製を採用した。

菊川市と災害時の避難所利用で協定

 同社は、8月18日、静岡県菊川市と「災害時における避難所等施設利用に関する協定」を締結した。菊川市にある同社・静岡事業所の敷地内に設置したソーラーカーポートなどを、災害時に避難所や復興支援ボランティアの活動拠点などとして菊川市に提供する。

 菊川市との協定では、災害発生時、被害状況や復旧状況に応じて、菊川市主導のもとに当該施設を活用する。例えば、周辺市民の住家が被害を受けた場合、公共交通機関の被災などにより帰宅困難者が発生した場合、または市の災害復興を支援するボランティアの受け入れを行う場合などに、被災者や救援者に居住空間を提供する。

図9●約4.5坪の緊急避難仮設テントハウスになる(出所:日経BP)
図9●約4.5坪の緊急避難仮設テントハウスになる(出所:日経BP)
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図10●アルミ製ミニマム居住ユニット(出所:日経BP)
図10●アルミ製ミニマム居住ユニット(出所:日経BP)
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 具体的には、地震発生から7日以内をめどに、SUSの以下の施設を菊川市が利用する。(1)ソーラーカーポート(屋根付き駐車場)を一時避難場所に利用する。屋根下にベニヤ板で床を貼り、テントを張ることで、約15m2(約4.5坪)で6~7人が宿泊できる緊急避難仮設テントハウスとして活用する(図9)。(2)SUSの製品であるアルミ製ミニマム居住ユニット(床面積約8.8m2)をボランティア活動拠点として活用する(図10)。(3)書類倉庫兼防災倉庫の活用。同倉庫には、テントハウス用の各種備品のほか、テント式トイレ、簡易ベッド、キャンプ用テーブル、折りたたみイス、エンジン式発電機、飲料水・食料など収納している。(4)SUS敷地内に糞尿処分エリアを確保する――。

プレキャスト基礎で短期施工

 SUSのソーラーカーポートは、既存の屋外駐車場への設置を前提にしているため、短期工事を特徴にしている。1ユニット(パネル85枚・12台収納)を最短で1週間で完成できるという。それを実現しているのが、プレキャスト基礎と、柱や梁の工場加工という。

 ソーラーカーポートは、相対的に少ない基礎で多くのパネルを支えるうえ、大面積アレイ(パネル設置単位)で風を受けるため、基礎の工事が大掛かりになる。そうしたコンクリート基礎を現場で打つと時間がかかる。そこで、工場で型枠にコンクリートを打設してプレキャスト基礎を製作し、サイトに搬入する仕組みにした(図11図12)。

図11●プレキャスト基礎に柱脚を固定(出所:日経BP)
図11●プレキャスト基礎に柱脚を固定(出所:日経BP)
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図12●工場で製造したプレキャストコンクリート基礎(出所:日経BP)
図12●工場で製造したプレキャストコンクリート基礎(出所:日経BP)
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 また、パネルを支える柱や梁の鋼材をすべて工場で加工しておき、サイト現場では組み立てるだけにした。

 なお、SUSはアルミ製品のメーカーだが、ソーラーカーポートの構造部材については、鉄製にした。「ソーラーカーポートの構造体をアルミ材で設計することも可能だが、アルミにした場合、役所への建築確認申請に時間がかかるなど、工期やコストに不利になるため、今回の製品ではスチールにした」と、SUSのエコムス設計チームの大塚善史氏は言う。

 ソーラーカーポートは、野立ての太陽光パネル架台と違い、建築物に該当するため、都市計画法や建築基準法など、遵守すべき法規制が多くなる。こうした法的な手続きを迅速にクリアして、短期間で完成することも、大きなポイントになる。

民間の大型商業施設が注目

 SUSのソーラーカーポートは、当初、環境対策と防災意識の高い「道の駅」をメインターゲットにして販促したものの、実際には、むしろ民間の大型商業施設や自動車ディーラーなどからの問い合わせが多いという。

図13●「どまんなか たぬま」では太陽光の屋根をアピール(出所:日経BP)
図13●「どまんなか たぬま」では太陽光の屋根をアピール(出所:日経BP)
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 スーパーなどの大型商業施設は、東日本大震災で宮城県の「イオンモール石巻」が避難所として貢献した実績などから、防災拠点として備えておきたい、という意識が高いという。また、自動車ディーラーのなかには、顧客満足やイメージアップなど、販売拠点の付加価値を高めるのに役立つとの評価もあるという(図13)。

 ソーラーカーポートを導入した、道の駅「どまんなか たぬま」は、2001年度の開業以来、連続増収を続け、株式会社に移行した期を除いてすべて黒字という健全経営を維持している。顧客志向に立った独自のイベントによって地元客を引き付け、2015年度の売上高は16億5000万円にまで達している。ソーラーカーポートの建設資金を銀行から調達できたのも、こうした本業での安定した業績が背景にある。

 経営の苦しい「道の駅」が多いなか、ソーラーカーポートの防災機能に関心を持ちつつも、投資余力に乏しいというのが実態のようだ。むしろ、顧客志向と地域貢献意識の高い民間の商業施設を中心に防災対応型ソーラーカーポートが広まる可能性もある。