PVロボット最前線

太陽光発電所も「ルンバ」のような除草でサッパリ!自律ロボットを活用

芝刈り用機種を応用し、無人でこまめな草刈りを実現

2018/01/17 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 太陽光発電所の雑草を刈る手法として、多くの発電事業者が理想的なイメージとして挙げるのは、米iRobot社の室内用ロボット掃除機「ルンバ」の草刈機版である。

 「ルンバ」による室内の掃除のように、「ロボット草刈機」が放っておいても自律的に草を刈りながら敷地内を走り回り、充電量が減れば充電器まで自分で戻り、満充電した後は、再び刈り途中の持ち場に戻って草を刈りはじめる、というものだ。

 ただ、太陽光発電所は、さまざまな地形に立地している。平たい土地だけでなく、傾斜や凹凸の大きな場所にも多くのパネルが敷かれている。

 地表面の状態や設備の敷設方法も、発電所によって異なる。地表は、土だけでなく、砕石を敷き詰めている場合がある。また、コンクリート基礎や金属製の杭基礎があるほか、接続箱からパワーコンディショナー(PCS)までの送電線が、金属製のラックや樹脂製の筒のような部材に納めて地上に敷設されていることもある。

 ルンバのようなコンセプトのロボット草刈機が実用化されたとしても、こうした自動走行・草刈りが難しい条件を含む多様な環境にあることから、多くの太陽光発電所で一様に活用することは難しいかもしれない。

 このような中、企業の一般的な事業所や住宅の庭などで、広く活用が進んでいるロボット型「芝刈機」を、太陽光発電所の草刈りに応用しようとする動きが出てきた(図1動画)。

図1●国内の太陽光発電所における除草に活用
図1●国内の太陽光発電所における除草に活用
ハスクバーナ社のロボット芝刈機「Automower」の例(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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動画●メガソーラーにおける活用例
マンホールを乗り越えて草を刈っているのがわかる(出所:ハスクバーナ・ゼノア)

 Liイオン蓄電池を使って駆動し、四輪の間に回転刃を備える。回転刃は、乗用型草刈機が備える鎌のような刃ではなく、かみそりの刃のような薄いもので(図2)、これを3枚備えている。この刃で芝や草を刈る。

図2●薄い回転刃で刈る
図2●薄い回転刃で刈る
ハスクバーナ社のロボット芝刈機「Automower」の例(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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22年前に製品化

 もともと「草」刈機ではなく、「芝」刈機であるため、太陽光発電所の地形や土地の状態、雑草の状態によって使えない場合も出てくる。一定の条件の中で、より効率的に草刈りする目的で導入する。

 普段は屋外の充電ステーションに待機し、設定に従って、まさに「ルンバ」のように自律的に走行しながら草を刈り、充電量が少なくなると充電ステーションに戻る(図3)。満充電後には、刈り残した場所に向かい、再び刈りはじめる。

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図3●ロボットによる芝刈りの概要
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図3●ロボットによる芝刈りの概要
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図3●ロボットによる芝刈りの概要
ハスクバーナ社のロボット芝刈機「Automower」の例。ワイヤーで設定した区域を自律的に走りながら刈る。充電量が減ると充電ステーションに戻ってくる(出所:ハスクバーナ・ゼノア)

 スウェーデンの林業・農業・造園向け機器メーカーであるハスクバーナ社が製品化したものだ。初号機は22年前と、「ルンバ」よりも早く世に出ていた。スウェーデンという、先進的な技術や機器への挑戦に旺盛な地域ならではの機器の一つと言える。

 国内では日本法人のハスクバーナ・ゼノア(埼玉県川越市)が、販売会社などを通じて展開している。

 ハスクバーナ社は、スウェーデン王室に納めるライフル銃の製造を祖業とし、1689年に設立された老舗企業である。現在は、ロボット芝刈機や草刈機のほか、チェーンソー、ブロワーなどを製造・販売している。オートバイを手掛けていた時期もある。

 日本法人は元々、1910年に東京瓦斯電気工業として創立後、農林・造園機器メーカーとして事業を展開し、2000年代に入ってハスクバーナグループに入った。

 ハスクバーナ社のロボット芝刈機「Automower(オートモア)」は現在、国内で約10カ所の太陽光発電所で採用されているという(図4)。本国を含めた海外では、これまで太陽光発電所で稼働した事例はないようだ。

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図4●国内の太陽光発電所における活用例
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図4●国内の太陽光発電所における活用例
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図4●国内の太陽光発電所における活用例
営農型の発電所(上)でも活用(出所:ハスクバーナ・ゼノア)

 この機種が太陽光発電所に向くのは、無人の状態でもプログラムの設定に基づいて、自律的に日々、草を刈り続ける点にもある。

走行区域はワイヤーの敷設で設定

 このロボット芝刈機は、伸びた芝を刈るというよりも、芝を不要に伸ばすことを防ぎ、常に一定の高さに保つ狙いで使われる。企業などの事業所や工場、公園、病院、観光地、ゴルフ場、学校といった施設のほか、果樹園などで採用されている。

 見た目は、家電のような姿のため、顧客からは当初、「本当に野外で草や芝を刈れるのか」という印象をもたれることも多いという。しかし、実際に販売会社によるデモなどで動く様子を見た後は、その印象が変わることがほとんどとしている。

 自律走行しながら刈る範囲は、充電ステーションを発着点として、ガイドとなるワイヤーを地表に張って囲むことで設定する。ワイヤーはペグで打ち込む。このワイヤーで囲まれた区域の中を、ランダムに走行しながら草や芝を刈っていく。

 地表に張ったワイヤーを通じて、信号を発している。ロボット草刈機は、この信号を受信して走行区域の境界を把握する。

 極端に細い区域が続いているといった場合には、さらに誘導用の別のワイヤーを追加することで、より正確に走行できるようになる。

 太陽光発電所において、このロボットを使うのに向かない場所があれば、ワイヤーの敷設の工夫によって避けることができる。また、柵などを設置しておけば、その前で停止して向きを変え、そこを避けて走るので、柵の活用も有効になる(図5)。

図5●メガソーラーにおける柵の活用例
図5●メガソーラーにおける柵の活用例
柵の前で停止して向きを変えて走行する(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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 地表の状態や走行区域の水平方向の形状などにもよるが、一般的な条件では、満充電時には約2時間走行でき、その間に1時間に約135m2の範囲で草や芝を刈れる。充電ステーションでは、約1時間で満充電となる。

 約2時間、稼働して刈り、その後、1時間かけて充電するサイクルを繰り返すと、一般的な条件であれば、1日に約3200m2を除草できる。

 国内の活用例で、区域設定用のワイヤーの設置が最も難しかったのは、グラウンドゴルフ場における例だったという。フェアウェイのみをロボット芝刈機で刈るために、細長い区域が続き、かつ、ひと筆書きで総延長が約800mというワイヤーの敷設距離となることから、配置位置の設定などで苦労した。

 このグラウンドゴルフ場がロボット芝刈機を採用した理由は、乗用型草刈機を使って除草していた頃に、草刈りの従事者が熱射病にかかるという事故が起きたためだった。

傾斜に強く、24度でも対応

 同社のロボット芝刈機は、刈っている最中に、他の場所よりも草や芝の伸びが大きい場所を検知すると、スパイラル(螺旋)状に走り、重点的に刈りこむモードに自動的に変わる。この場所を刈り終えると、通常のランダムな走行に自動的に切り替わる。

 GPS(全地球測位システム)を内蔵した機種もある。この機種の場合、GPSの情報を基に刈るパターンの調整を重ねていくことで、刈り残す領域を減らすなど、より適切な運用が可能になるとしている。

 斜面に強い特徴もある。これは、日本の太陽光発電所に向いている点でもある。24度(斜度45%)の斜面でも芝刈りが可能で、実際には約30度でも刈れるという。もし、走行が難しいような角度の傾斜に入った場合には、水平方向にスライドするように動いて、その場所を離れる。

 太陽光発電所では、まず問題にならないと思われるが、駆動時の音も58dBに留まるため、住宅など夜間は周囲への騒音に配慮する必要がある場所でも、問題なく運用できるとしている。

 日常的に刈るために、雨の日などモーターや刃への負荷が大きい日には、刈らないように運用しても、芝や草が高く伸びることはない。こうした設定をしておけば、悪天時には充電ステーションで待機する。もちろん、雨天時でも問題なく刈ることはできる。

持ち上げると刃の回転を停止

 安全面での工夫の一つに、人が機体を持ち上げたことを検知すると、刃の回転を停止する仕様がある。回転刃は、機体の下側に手を入れた場合でも、届きにくいように配置している。

 太陽光発電所には、石なども多くある。もし、回転刃に石が触れた場合、刃を石から逃げるように制御するという。この制御によって、回転刃によって石が太陽光パネルに向かって飛び、パネルを損傷するというトラブルを防げるとしている。

 ただし、砕石で地表を埋め尽くしているような太陽光発電所で使うのは、難しいのではないかとしている。地表が土のままの区域に向くようだ(図6)。

図6●左の砕石の区域を避け、中央から右の土の区域に限定
図6●左の砕石の区域を避け、中央から右の土の区域に限定
砕石は苦手(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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 回転刃は、地上2~6cmの間で、5mm間隔で高さを設定できる。太陽光発電所では、最高の6cmで運用されていることが多いだろう。

 太陽光発電所における活用では、基礎や送電線、フェンスなどの直近は人が刈払機で除草し、それ以外の場所をロボット型で刈るといった使われ方も多くなりそうだ。

高圧や電磁波の影響、太陽光では現在はなし

 国内の太陽光発電所では、2014年ころから活用がはじまった。著名な実証用メガソーラーにおいても、試験的に運用された(図7)。

図7●実証用のメガソーラーにおける活用例
図7●実証用のメガソーラーにおける活用例
ここでは試験的に運用した(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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 太陽光発電所での課題は、砕石のほか、水はけの悪い土などがある。水溜りの中などを走行すると、基板などが故障するリスクがある。

 ぬかるんでいる場合などは、車輪などに土が付着しやすくなる(図8)。土が付着しにくいような車輪をオプションで用意しているほか、タイヤ付近の車体側にブラシを追加するといった方法で、土の付着を減らす手法も用意している。

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図8●土の付着対策も用意
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図8●土の付着対策も用意
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図8●土の付着対策も用意
太陽光発電所における活用時の土の付着や対策の例(出所:ハスクバーナ・ゼノア)

 また、ワイヤーを通じて発信された信号を使って走行していることから、高圧配電線や電磁波などの影響によって、この信号をうまく受信できなくなる場合があるとしている。

 ただ、これまで活用されたり試験的に刈ったりした太陽光発電所では、この問題に直面したことはなかった(図9)。電力会社の変電所の敷地内における活用が検討された際にも、問題とはならず、太陽光発電所でも例外的な場合を除き、問題にならないのではないかという感触を得ている。

図9●特別高圧送電線用の受変電設備(右)の前でも順調に稼働
図9●特別高圧送電線用の受変電設備(右)の前でも順調に稼働
実証用のメガソーラーにおける例(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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 太陽光発電所で、試用後に導入を断念した例としては、敷地が広すぎて投資効率面で疑問が残った場合があるという。

 導入費は、太陽光発電所で主に使われるGPS付きの機種で65万~80万円(税抜き)となっている。この導入費には、区域の境界を設定するワイヤーの設置費も含む。

 太陽光発電所における利用では、回転刃の交換は年1回程度で済むという。他の場所では、一般的に年3回程度の交換が必要となっている。

 交換は、通常のプラスのネジの脱着で行う。交換用の回転刃の価格は、3セット分で4000円弱となっている。

 太陽光発電所における活用では、充電ステーションの電源に太陽光発電を使えれば理想的といえる。実際に国内の工場などでは、すでに太陽光パネル2枚と蓄電池を組み合わせ、充電ステーションに送電している例が出てきた。