PVロボット最前線

「ドローン点検」でメガソーラーの不具合をその場で次々と発見!

不良パネルの特定からメーカーとの交渉代行まで一貫サービス

2018/02/01 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 1月中旬、甲信地方にある出力約3MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)で、ドローン(無人小型飛行体)を使った太陽光パネルの点検が実施された(図1)。調査を担当したのは、エネテク(愛知県小牧市)である。

図1●甲信地方のメガソーラーにおいてドローンでパネルを空撮
エネテクが実施(出所:日経BP)
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 同社は、2007年に設立され、電気設備工事を手がけてきた。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の開始後は、太陽光発電設備の施工も多く担当してきた。

 太陽光発電の施工では、住宅用を含めて、約4500件の実績(2017年末時点)がある。本拠を置く中部地方での受注が多いが、支店のある関西や関東地方でも実績を積んできた。

 今後の太陽光発電の施工では、自家消費向けに注力している。冷蔵・冷凍設備を備えた工場や倉庫、土日祝日でも営業を続けているショッピングセンターといった、常に一定以上の電力需要があり、系統への逆潮流が不要な施設が、とくに有望な設置先としている。

 太陽光発電設備の施工を手がける中で、O&M(運用・保守)の重要性が高まってくると予想し、O&Mのサービスも早期に立ち上げた。長期間の信頼性などに疑問符の付くような設計や施工を目にすることが多く、今後、不具合の出てくる発電所が増えると予想している。

 同社の太陽光発電所向けのメンテナンスサービス「ソラパト」は、O&Mに求められる項目を、できるだけ一貫で引き受けることを特徴とする。

 電設工事の企業であることから、小牧市の本社を中心に、電気主任技術者の有資格者も在籍しており、本社が担当するO&Mの場合、出力2MW未満の高圧連系案件では、電気主任技術者による電気保安管理業務から受託している。

 高圧連系する太陽光発電所では、電気保安管理業務を外注することが認められている。

 中部以外の地域で同様の要望があった場合にも、同社で電気保安管理業務を受託し、同社から外注する手法を採っている。

 このほか、一般的なO&M事業者が提供している、太陽光パネルをはじめとする発電設備の定期的な点検、異常時の駆け付けや点検といった項目でも、施工を多く手がける中で蓄積してきた知見が生きているとする。

 例えば、顧客の太陽光発電所の点検によって、太陽光パネルの製造時に起因すると予想される不具合を発見した場合には、パネルメーカーとの交換の交渉まで、エネテクが代行する。

 太陽光発電所の管理は、一括で外部に委託し、ワンストップのO&Mサービスを受けたいという発電事業者が多いという。そうした需要に応える項目の一つが、メーカーとの交渉の代行となる。

 こうしたメンテナンスサービスの年間契約数は、住宅や低圧連系の発電所を含めて約600カ所・合計出力約75MWとなっている(2017年末時点)。他社が施工した太陽光発電所からの契約も多くなっているようだ。

 年間契約のサービスのほか、使用前自主点検の補佐、不具合が生じた際の調査、ドローンを使った太陽光パネルの点検(図2)でも、多くの実績がある。

図2●飛行前の準備の様子
甲信地方のメガソーラーにおける例(出所:日経BP)
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 不具合を生じた発電設備の調査では、電力会社が20年以上前に導入した太陽光発電設備を担当したこともある。太陽光パネルの発電量の減少は約16.6%にとどまり、当時のパネルの長期信頼性が高いことがわかったという。

 O&Mのサービスに必要な知見の蓄積や技術の向上には、自社グループで開発・運営している出力約1MWの2カ所の太陽光発電所も寄与している。岐阜県養老町と京都府綾部市にあり、FITに基づく売電用の発電所を、研修や実証を兼ねた拠点として活用している(岐阜県養老町のメガソーラーの関連ニュース)。

ヒューズ切れによるストリング遮断をその場で復旧

 ドローンを使った太陽光パネルの点検は、メンテナンスサービスの年間契約先の一部のほか、年間契約先以外の顧客からの依頼に対応している。

 ドローンを使った赤外線カメラによる空撮でパネルの熱分布画像を撮影し、この画像から、不具合を生じている可能性の高いパネルを特定し、報告する(動画1)。

動画1●赤外線カメラの空撮画像の例
今回の甲信地方のメガソーラーとは異なる発電所における例(出所:エネテク)

 同社の場合、ドローンの飛行や撮影の従事者は、太陽光発電所のO&Mサービスの担当者でもある。

 このため、その場でさらにパネルなどを点検し、原因を分析するだけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消できる。その場で不具合を解消できれば、売電ロスをいち早く解消できる。こうした解決に向けた迅速な対応が強みとなっている。

 甲信地方にある出力約3MWのメガソーラーにおけるドローン点検では、31カ所の不具合を発見し、そのうちその場で解消したものが3カ所あった。

 その場で解消した不具合は、いずれも接続箱内のヒューズ切れによるものだった。

 IEC(国際電気標準会議)規格による太陽光発電所では、太陽光パネルへの逆流防止にダイオードを使わず、パネル側で逆流電流から保護する仕様になっている。そして、短絡事故時に発生する過電流の逆流を確実に遮断するため、接続箱のストリング(太陽光パネルを直列・並列に接続する単位)の入力側にヒューズを採用している。

 ヒューズの切れたストリングは、入力部までは発電電力が流れてくるが、回路が遮断されているため、その先に発電電力が流れず、すべてロスになってしまう。

 今回のドローンによる点検には、発電事業者も立ち会っていた。このため、エネテクでは、3カ所のヒューズ切れについて、その場で発電事業者に説明し、承認を得たうえで、ヒューズを交換して送電を復旧させた。

 こうしたストリング単位での不具合への対応は、ドローンならではの利点の一つとなっている。ヒューズ切れのほかに、定期点検時に、開閉器を戻し忘れるといった原因でも、同じようにストリング単位で送電が遮断されたままとなる。

 ストリング単位の不具合は、ドローンで撮影すると、ストリングを構成するすべての太陽光パネルが過剰に高い熱分布を示すことから、一目でわかる。歩いて赤外線カメラで撮影する方法では、広範囲のパネルを比較できないため、発見しにくいという。

クラスタ故障は交渉代行で「全交換」の例も

 今回、接続箱内のヒューズ切れの3カ所以外に発見したのは、「クラスタ故障」と呼ばれる不具合が23カ所、パネル内の極小域が過剰に過熱している「ホットスポット」が5カ所だった。

 「クラスタ故障」とは、不具合によって出力の低下したセル(発電素子)が生じた結果、バイパスダイオードが働いて、パネルの3分の1ごとにわかれる複数のセルの組(クラスタ)ごと発電を停止している不具合を指す(図3)。

図3●クラスタ故障の例
バイパスダイオードが働きパネル内の3分の1のセルが発電しない不具合。甲信地方のメガソーラーとは異なる発電所における例で、ここではエネテクがメーカーとの交渉まで代行し、該当するすべてのパネルがメーカー保証で交換となった(出所:エネテク)
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 エネテクでは、今回発見したクラスタ故障については今後、太陽光パネルメーカーと交渉を進めれば、メーカーが交換に応じるのではないかと見ている。

 太陽光パネルメーカーは、一般的にクラスタ故障に伴う交換の要求時に、ドローンによる熱分布の画像を示しても、受け入れない。

 そこで、多くの場合、アイテス(滋賀県野洲市)の点検装置「ソラメンテ」を使い、さらにパネルの不具合の状態を「裏付け」し、要求することになるという。

 別の発電所におけるドローン点検では、同じようにクラスタ故障を発見した太陽光パネルに関して、エネテクがメーカーとの交渉まで代行し、該当するすべてのパネルがメーカー保証で交換となった例があるとしている。

 さらに、今回の点検では、前後に他の太陽光発電所におけるEL画像の撮影の予定があり、装置を一緒に運んできていたことから、ドローン点検で判明したクラスタ故障やホットスポットの可能性があるパネルの一部を、試験的に撮影し、EL画像からも不具合の可能性を確認していた(図4図5)。

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図4●現地でEL検査
甲信地方のメガソーラーにおける例。今回の調査項目には含まれず、試験的に実施(出所:日経BP)
図5●現地でのEL検査で発見したパネルの不具合例
甲信地方のメガソーラーとは異なる発電所における例。上の3枚はマイクロクラック(セルの微小な割れ)、下は左がクラスタ故障、中央と右はPIDに起因する異常(出所:エネテク)
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汎用のドローンを採用

 エネテクでは、空撮に使うドローンとして、汎用の中国DJI社製を採用している(図6)。

図6●中国DJI社製の汎用のドローンを採用
甲信地方のメガソーラーにおける例(出所:日経BP)
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 ドローンによる太陽光パネルの点検サービスが登場した当初は、赤外線カメラモジュールが重く、寸法が大きかったこともあって、特注したドローンを使ったり、重厚な作りの機体を採用したりするサービス事業者が多かった。

 その後、ドローンと赤外線カメラモジュールの両方の技術の進展によって、現在では、エネテクのように、中国DJI社製などの汎用機を使うこともできるようになってきた(動画2動画3)。

動画2●太陽光発電所におけるドローンの自動離陸
甲信地方のメガソーラーにおける例(出所:日経BP)
動画3●離着陸テスト時の様子
甲信地方のメガソーラーにおける例(出所:日経BP)

 エネテクでは、太陽光発電所に基本的に2~3人で向かう。ドローンは基本的に自動で飛行させている。条件によっては、着陸時に手動に切り替える場合もある。

 飛行中は、1人がタブレット端末(PC)で撮影中の赤外線画像を確認しながら、不具合の可能性があるパネルの有無をチェックしていた(図7)。その隣で、もう1人が、そのパネルの位置などを、配置図に書き込んでいた。

図7●上段の中央付近にクラスタ故障による温度分布の異常が見える
甲信地方のメガソーラーにおける飛行中の空撮画像(出所:日経BP)
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 こうした作業によって、不具合の可能性があるパネルを特定する時間を短縮している。

 ドローンによる空撮から、不具合の可能性がある太陽光パネルの位置やその状態、原因の推定などをまとめた報告書を依頼主に提出するまでの期間は、出力2MW前後の場合で3日間~1週間程度という。

 ドローンによる調査の費用は、出力1MWで15万円からとしている。発電所の立地場所によって、ほかに交通費が加わることもある。

 太陽光発電所を対象にしたドローンの飛行回数は、これまでに200回弱。このほか自社グループのメガソーラーでも多く飛ばしており、運用技術の向上とともに、不具合の発見精度の向上、新たな不具合の発見手法などを研究している。

 今後、ドローンによる点検では、とくに特別高圧送電線に連系している規模の大きなメガソーラーをターゲットにしていく。

 発電所の規模が大きくなるほど、太陽光パネルの枚数が多くなり、画像を得るための手間と時間が増え、コストがかかることから、ドローンによる効率化の効果が大きいためだ。