PVロボット最前線

徳島県、「ドローンと人手の差」を検証、メガソーラーの定期点検で

撮影角度が発見しやすさに影響、コストも評価

2017/03/16 00:00
加藤 伸一=日経BPクリーンテック研究所

 徳島県企業局は、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の定期点検における、ドローン(無人小型飛行体)の活用の効果を検証した(図1)。

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図1●ドローンによる太陽光パネルの点検の様子
図1●ドローンによる太陽光パネルの点検の様子
1月に出力2MWの「和田島太陽光発電所」で実施(出所:徳島県企業局)
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 政府がインフラ点検へのドローンの応用を推進する中、徳島県でも活用を検討しており、今回は、応用の進んでいる太陽パネル点検で検証した。

 メガソーラーでは、太陽光パネルの点検にドローンを活用する例が増えてきた。利点として、撮影作業の効率化が広く知られているが、徳島県企業局ではさらに、不具合の生じた太陽光パネルを発見できる精度や、費用対効果まで含めて、人手による作業と比較した。こうした総合的な検証は他の発電事業者にとっても参考になりそうだ。

 ドローンは、赤外線カメラを使って、太陽光パネルの熱分布画像を撮影する作業の効率化に活用される。熱分布の画像は、過剰な発熱などの生じた部分を発見するために使われる。

 従来は、携帯型の赤外線カメラを点検作業者が持ち歩き、パネル1枚1枚を撮影するため、敷地内を歩き回る時間が長くなる。ドローンを使って上空からまとめて複数枚を撮影すれば、撮影作業は大幅に効率化できる。敷地が広く、パネル枚数が多くなるほど、撮影の効率化の効果が大きい。

 一方で、人手による撮影の場合、パネル1枚ごとに、その場で赤外線カメラの表示画面を見て、熱分布の異常の有無を確認するため、不具合を生じた可能性のあるパネルの位置は、その場で確認でき、持参しているマップ上に書き込める。

 ドローンを活用した場合、不具合の兆候を示すパネルが写っていたとしても、その位置の特定に苦労することが多い。

 敷地をスキャニングするように撮影したデータを、飛行後にパソコンに取り込み、熱分布に異常のあるパネルを確認するところまでは効率的に進む。

 しかし、発電所内のどのパネルに過剰な発熱が生じているのかを特定するのに、手間と時間を要する。上空から撮影した画像は、どれも多くのパネルが規則的に並んでいる様子が写っており、一見しただけでは、同じような画像となるためである。

 現在のところ、ドローンを使った太陽光パネル点検サービスの多くは、この作業を人手に頼っている。手間と時間を要する分、コストに反映されることになる。

海上自衛隊のヘリコプター訓練と調整

 ドローンは、出力2MWの「和田島太陽光発電所」(関連コラム)のパネル点検に使った。小松島市和田島町に立地し、敷地面積は2万8892m2で、8652枚の太陽光パネルが並んでいる(図2)。

図2●2万8892m<sup>2</sup>の土地に、8652枚の太陽光パネルが並ぶ
図2●2万8892m2の土地に、8652枚の太陽光パネルが並ぶ
出力2MWの「和田島太陽光発電所」で実施(出所:徳島県企業局)
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 和田島のメガソーラーのパネルの定期点検を、ドローンと人手の両方で実施し、その効果を検証した。ドローンは1月12日に飛ばし、人手では1月31日と2月2日の2日間、作業した。

 このメガソーラーでドローンを飛ばす際に、調整も必要となった。メガソーラーの近くには、海上自衛隊の小松島航空基地がある。ヘリコプターによる離発着や飛行訓練で、頻繁にメガソーラー付近の上空を通過している(図3)。

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図3●ヘリコプターによる離発着や飛行の訓練
図3●ヘリコプターによる離発着や飛行の訓練
頻繁にメガソーラー付近の上空を通過(出所:日経BP)
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 このため、海上自衛隊と事前に打ち合わせた上で、ドローンを飛ばした。

現地の作業は2日が3時間に短縮

 ドローンを使う利点として強調されることの多い作業性は、やはりドローンの方が高かった(図4)。ドローンの場合、3人で作業し、約3時間で事前準備からテスト飛行、本飛行での撮影、片付けまで終わった。9時に集合し、12時には撤収していた。

図4●上空から多くのパネルを効率的に撮影
図4●上空から多くのパネルを効率的に撮影
ドローンの方が作業性が高い(出所:徳島県企業局)
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 徳島県企業局によると、組み立てと解体などの作業に約60分、飛行時間はパネル容量1MWあたり約30分となった。より大規模な発電所を撮影する場合、このうち飛行時間のみが増していく。

 今回は、1MW分を1回の飛行で撮影し、蓄電池を取り替えて、2MWのパネル全数を2回の飛行で撮り終えた(図5)。

図5●2回の飛行ですべてのパネルを撮影
図5●2回の飛行ですべてのパネルを撮影
1MW分ずつ撮影した(出所:徳島県企業局)
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 ドローンによる撮影は、気象条件次第で、2MWを一度の飛行で撮影することも可能とみられる。冬季のドローンの飛行では、低温による蓄電池の出力低下を考慮する必要があるため、飛行時間を半減させて運用する企業が多い。

 人手による撮影では、2人で1班を構成し、1MWあたり約180分を要した。現実には、2MWのメガソーラーは、3人で1日、2人でもう1日というように、合計5人・2日間の作業になるという(図6)。

図6●人手によるパネル撮影の様子
図6●人手によるパネル撮影の様子
ドローンとは別の日に実施した(出所:日経BP)
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 徳島県企業局によると、作業中の安全面で留意すべきこととして、人手の場合、ケーブルラックなどによる転倒を防ぐため、足元に十分、注意すること、ドローンの場合、機体の故障や落下に備え、複数の機体を準備することや保険への加入を推奨している。加えて、飛行に当たっては、気象条件を加味するとともに、操縦者の技量を維持し、近隣に配慮することなどを挙げている。

 今回の検証結果と、ドローン技術の進歩を考慮すると、今後、ドローンを活用する利点が増していくと見ている。

出力2MWで「コストはドローンが2倍高い」

 コストについては、人手の方が優位だった。和田島の出力2MWのメガソーラーにおけるドローン点検のコストは、人手に比べて約2倍になったという(図7)。

図7●コストはドローンの方が2倍高かった
図7●コストはドローンの方が2倍高かった
大規模になるほどドローンの効率が上がり、コスト差は縮まる(出所:徳島県企業局)
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 ただし、ドローンは広範囲を撮影するのに向くため、発電所の規模が大きいほど、人手との効率の差が広がり、このコストの差は縮小すると見ている。

 また、ドローンによる点検は、サービス事業者の拠点と、メガソーラーの立地場所との距離によっても、コストが変わってくる。ドローン操縦者の在住地や、機体の保管場所によって、移動費や宿泊費などが加算されるためである。今回は、関東に本拠を置く企業が担当した。

不具合パネル、ドローンの方が明瞭に

 不具合を生じた可能性のあるパネルを発見する「正確性」については、ドローンの方が有利としている。

 和田島のメガソーラーでは、パネル1枚の不具合が明らかになった。

 また、このパネルを含めて、過剰に発熱している部分のあるパネルを発見した枚数は、ドローンで9枚、人手で3枚と差があった。

 不具合を生じていたパネルは、ドローンの方が明確に認識できた(図8)。人手でも発見できたものの、熱分布画像を比較すると、ドローンほど明らかな差はない。

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図8●不具合が見つかったパネル
図8●不具合が見つかったパネル
ドローン(上)と人手(下)による撮影画像で、発見しやすさに差が生じた(出所:徳島県企業局)
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 この要因として、撮影時のパネルとの角度の違いがあるとみられる。

 赤外線カメラによる熱分布画像の撮影では、カメラメーカーは、パネルに対して「35度~85度の角度」で撮影することを推奨している。

 これは、10~20度の設置角でパネルを傾けていることの多い九州や四国、本州の太陽光発電所においては、人手では実現しにくい角度といえる(図9)。

図9●パネルの撮影角度の違い
図9●パネルの撮影角度の違い
ドローンの方が、カメラメーカーが推奨する角度を実現しやすい(出所:徳島県企業局)
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 脚立などを使わない限り、上段のパネルほど赤外線カメラとの角度が浅くなり、歩行時には20度程度になる。

 ドローンの場合、通常に上空から撮影するだけで、推奨された角度を満たしている。

 不具合は生じていないものの、過剰に発熱している場所を含んでいたパネルは、鳥のフンなどによって汚れが付いていたりしていた(図10)。

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図10●汚れなどによる過剰な発熱
図10●汚れなどによる過剰な発熱
人手(上)とドローン(下)による発見例(出所:徳島県企業局)
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 一方で、ドローンのみで発見できた場所、人手のみで発見できた場所もある。ドローンで発見できなかった場所については、日射強度や気温、発電の状況によって、ドローンでは発見できない場合もあると分析している。