PVロボット最前線

20MWのパネルを2日で撮影し分析完了、ここまで来たドローン点検の現場

AI活用で2MWあたり分析時間はわずか「3分」

2019/05/09 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 空からの太陽光パネル点検は、ドローン(無人小型飛行体)を応用したサービスとして、静止画像や動画の空撮に次いで、いち早く市場が立ち上がった。ただ、その分、試行錯誤が続いており、日々進歩している。

 ドローンを活用する利点は、まず撮影の作業自体を効率化できること。加えて、現在進みつつあるのは、ドローンを飛ばした後の作業効率の向上である。エナジー・ソリューションズ(東京都千代田区)は、こうした後工程の改善をすでに実際のサービスに適用している1社である。今回は、同社による点検の例を紹介する(関連コラム)。

 取材したのは、東北地方にあるゴルフ場の跡地を活用したメガソーラー(大規模太陽光発電所)の点検である。2018年7月に、ドローンを使った点検を実施した(図1)。

図1●東北地方のゴルフ場跡のメガソーラーにおける空撮時の様子
(出所:日経BP)
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 このメガソーラーは、敷地面積が約80ha、太陽光パネル出力が約20MW、設置枚数が約7万枚となっている。

 同社は、このメガソーラーから2015年以降、3年続けてドローンを使った太陽光パネルの点検を受託してきた。

 ドローンによる太陽光パネル点検は、熱分布の画像を撮影することからはじまる。ドローンに赤外線カメラを搭載し、上空から撮影することで熱分布画像を得る。

 この熱分布画像を得る工程は、ドローンを使うことだけで大幅に効率化できる。

 従来の手法は、担当者が手持ち型の赤外線カメラを持ち、アレイ(パネルの設置単位)に沿って敷地内を歩きながら太陽光パネルを1枚1枚撮影していた。敷地が広大でパネルの設置枚数が多くなると、膨大な手間と時間がかかる。点検作業者の歩く距離が長くなり、身体的な負担も大きくなるという問題も出てくる。

 ドローンを使った熱分布画像の取得はどの程度、効率化できるのか。国内に多い出力約2MWの高圧連系の発電所の場合、空撮時間として15~20分間と公表するサービス企業が多い。これに対して、従来の地上を歩き回る方法の場合、1~2日間を要するとされる。規模が大きくなるほど作業時間の差はさらに開き、より効率的になってくる。

 エナジー・ソリューションズが点検したゴルフ場跡のメガソーラーでは、ドローンの空撮に関して、ノウハウが問われる条件があった。それは、太陽光パネルが設置されている場所の地面が平坦ではなく、その上に並んでいる太陽光パネルも上空から撮影したときの高低差が大きいことだった。

 熱分布画像から、不具合を生じている太陽光パネルの場所や、予想される不具合の種類を特定するためには、判別できる解像度で、かつ、熱分布を一定以上の正確さで把握できるレベルの画像を取得しなければならない。

 そのためには、太陽光パネルと赤外線カメラの距離、角度などが大きく影響する。谷や大きな凹凸を含む場所にパネルが設置されている場合、ドローンを一定の高度で飛行させると、パネルとの高度差や角度が場所によって変わってくる。そのため、必要なレベルの熱分布画像が得られないパネルが出てくる恐れがある。

 理想的には、太陽光パネルと赤外線カメラの距離、角度を一定に保つようにドローンを飛行させることである。エナジー・ソリューションズでは、これを事前の航路設定と現地での微調整によって実現している(図2)。

図2●自動飛行の航路と飛行位置の表示画面
(出所:日経BP)
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 離着陸点に対する高低差を反映させながら自動飛行の航路を設定し、現地で実際の状況に合わせて微調整を加える。

 これによって、パネルとカメラの距離と角度を一定に保ち、求める水準の熱分布画像を取得できている。これを手動のラジコン操作で実現するのは難しいという。

 赤外線カメラで空撮する際の太陽光パネルとの角度は、45度程度に設定している。これによって、パネルのカバーガラスによる反射光の影響を最小化できるという。

 一度、こうした自動飛行の航路を確定できれば、同じ発電所を再度空撮する際には、その航路をそのまま使える。その都度、試験的に飛ばして航路を確定させる手法に比べて、バッテリー(蓄電池)を効率的に活用できる。

 このメガソーラーの設置レイアウトは、南北方向に長いという特徴があった。これは、ドローンによる空撮では、不利になる条件という。東西方向の飛行距離が短く、切り返しが頻繁になるほどバッテリーが減りやすい傾向にあるためだ。できるだけ東西方向に長く飛び続けることが、1回の充電で飛行時間を長くするコツとなる。

 同社のサービスでは、発電事業者が発電量のデータと比較しやすいように、パワーコンディショナー(PCS)ごとに太陽光パネルの状況を報告している。このため、パネルの空撮もPCS単位が基本となる。今回の場合、定格出力500kW機が2台、同じ筐体に収まっており、この単位ごとに空撮した(動画)。

動画●東北地方のゴルフ場跡のメガソーラーにおける空撮時の様子(出所:日経BP)

 今回の点検では、航路設定の工夫によって、三つの区画を1回の飛行で空撮できた場所もあった。合計で24回飛行し、約1.5日で空撮が終わった。南北方向に長い20MW規模のメガソーラーという条件で、全パネルを、1日半で空撮できるサービス事業者は、他にはなかなかないのではと強調している。

 今回の点検は、ドローンによる太陽光パネルの空撮に加えて、取得した熱分布画像から把握した不具合の可能性が高いパネルを地上で点検し、その不具合の種類や状況を分析することまでを受託していた。

 地上での点検は、目視点検、可視カメラと赤外線カメラによる撮影、アイテス(滋賀県野洲市)の点検用装置「ソラメンテiS」を使った故障診断などを基本とする。

 そこで、2人の点検作業者が現地に入り、1人はドローンの操作、もう1人は空撮した熱分布画像の分析と、その結果を元にした地上での点検を担当した。空撮は約1.5日、並行して進めた分析と地上での点検は2日で完了し、現地での全作業を2日で終えた。

 当初の計画では、予備の時間も考慮して3日間の滞在を想定していたので、期間を1日短縮できたとしている。

 この時点では、熱分布画像を元にした不具合の疑われるパネルの特定は、一部を手動で実施していた。

 空撮した画像データをクラウドコンピューティング上に送信した後、熱分布画像と、発電所内の太陽光パネルの配置図を重ね合わせる。そして、不具合の疑われるパネルの位置に、画像を見ながら4種類に分類した「不具合状況」を入力していた。

 熱分布画像は動画で撮影しており、飛行順に動画を見ながら、飛行経路も示されている配置図上に入力するため、他社で大きな問題となっている位置の特定に要する時間はほぼなく、手作業の時点でも、約2MWあたり約15分間の動画再生と入力作業がほぼ同時に完了でき、他社のサービスの1週間などという期間に比べて効率化していた。

 その後、人工知能(AI)を活用し、この手作業の工程を効率化する手法を実用化した。これを使うと、約2MWあたり約3分間に短縮できるとしている(関連ニュース)。

 今回の点検では、どの程度の不具合パネルが発見されたのだろうか。同社によると、とても少なく、優良な状況だったとしている。

 同社が太陽光パネルの配置図に入力する「不具合状況」は、「ホットスポット」、「クラスタ異常」、「パネル全体の異常」、「ジャンクションボックス異常」の4つに分けている。

 「ホットスポット」は、部分的な過熱を示している場所を指す。主に太陽電池セル(発電素子)内の部分的な不具合で生じた過熱のほか、鳥のフンなどによるパネル表面の部分的な汚れ、雑草などによる影よる過熱などが原因となる。これは187カ所見つかった(図3)。

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図3●今回の点検における「ホットスポット」の例
(出所:エナジー・ソリューションズ)

 「クラスタ異常」は、太陽電池セルを直列で接続したクラスタ単位の不具合を指す(図4)。内部配線(インターコネクタ)の不具合のほか、バイパスダイオードの短絡などが原因となる。

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図4●今回の点検における「クラスタ異常」の例
(出所:エナジー・ソリューションズ)

 今回の発電所では、サルやイノシシによる損傷の可能性もあることがわかった。サルが太陽光パネルの上に飛びのったり、イノシシが地面を掘り込む時に牙が裏面に当たったりすることが原因と推測されている。

 「パネル全体の異常」は、太陽光パネル1枚の全体が過熱している状況を指す。ガラスの割れや、バックシートの異常、電線の損傷などが原因となる。今回は1枚のみ、ガラスが割れていたパネルが見つかった(図5)。

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図5●今回の点検における「パネル全体の異常」の例
(出所:エナジー・ソリューションズ)

 「ジャンクションボックス異常」は、名称とおり、ジャンクションボックスの不具合を指す(図6)。この異常は今回、2枚が該当した。他の発電所に比べて、極端に少ない上、パネルを交換するレベルにはない段階で、今後は経過を観察していくことになるだろうという。

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図6●今回の点検における「ジャンクションボックス異常」の例
(出所:エナジー・ソリューションズ)

 この発電所で発見した太陽光パネルの不具合が少なかったことについて、エナジー・ソリューションズでは、品質の良い太陽光パネルを選んだことに加えて、「電気主任技術者が日常的にこまめに巡回していることや、草刈りも定期的に実施しているなど適切なO&M(運用・保守)を実施できている点が奏功しているのではないか」と見ている。