PVロボット最前線

国内最大・六ヶ所村の115MWも点検、綜合警備保障の太陽光向けドローン

全国で拠点を拡充、需要の拡大に応じる体制を整備

2017/07/12 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 綜合警備保障(ALSOK)は、ドローン(無人小型飛行体)を応用した太陽光発電向けサービス事業をいち早く手掛けてきた(図1)。本格的にサービスを始めてから2年以上経ち、2017年度を通じて、この事業をさらに拡大させるための体制を整備していく。

図1●太陽光発電所における離発着時の様子
今後の需要拡大を見据えた体制整備に着手(出所:綜合警備保障)
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 これまでに安全を確保しながら空撮する手法などを確立してきた一方、年を追って増える需要を見据えると、ドローンの現地での運用に限りがあり、需要に応えきれなくなる恐れがあった。

 今後、全国の7地域(北海道、東北、関東、中部、関西、中国・四国、九州)にドローンを現地で運用できる拠点を整備し、需要の拡大を取り込める体制としていく。

 太陽光発電向けのドローンによるサービスでは、主に稼働中のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の上空を飛行し、太陽光パネルを空撮する。通常のデジタルカメラと、赤外線カメラという2種類のカメラを使って同じ位置から撮影する。

 赤外線カメラによる撮影によって得た太陽光パネルの熱分布の画像から、周囲に比べて過剰に発熱している様子を判別し、不具合を生じている場所などを特定する。

 雑草や周辺の構造物などによる影や、鳥のフンなどが原因の場合には、通常のデジタルカメラによる画像と比べることで、一目でわかることもある(図2)。

図2●鳥のフンによる発電量低下の発見例
熱分布の画像から発電の不具合がわかり、通常のカメラの画像からフンの付着を確認できる。青森県六ケ所村のメガソーラーにおける例ではない(出所:綜合警備保障)
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 空撮した後、画像を分析し、熱分布に異常が見つかった太陽光パネルの位置とともに、顧客に報告する。

 メガソーラーにおけるドローンによる空撮の利点は、撮影を効率化できる点にある。携帯型の赤外線カメラを持って、1枚ずつ撮り歩く手法では、発電所の規模が大きくなるほど撮影者の手間や時間、身体的な負担に加え、撮影に要するコストが増す。

 ドローンを使って空撮すれば、この撮影の作業を大幅に効率化できる。

空撮実績は約50カ所、うち約30カ所が太陽光

 同社では、2015年4月に、ドローンを使ったサービスを本格的に開始した(関連コラム)。これに先立ち、2014年秋からプレサービスをはじめており、この時点で出力約40MWの大規模なメガソーラーの空撮や分析も経験していた。

 サービスの開始後、2年間以上経つ中で、太陽光発電所向けで実績を重ねるとともに、他の分野でも、空撮の依頼を受ける回数が増えてきた(図3)。

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図3●さまざまな分野でサービスを展開
工事の進捗状況の把握、被災状況の確認、警備や巡回などでも実績(出所:綜合警備保障)
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 他の分野では、工事の進捗状況の把握、被災状況の確認、警備や巡回を目的とした空撮が多いという。

 人が立ち入りにくい場所の空撮依頼も増えている。森などを対象とした依頼もあり、イノシシやシカといった鳥獣被害対策を目的とした場合もある。同社は、ワナなどを使った鳥獣被害対策の事業も手がけており、こうした既存の事業と連携できるようになると、より効果的なサービスを提供できるとする。

図4●出力約115MWの「ユーラス六ヶ所ソーラーパーク」
内陸側の千歳平北の発電設備。綜合警備保障が空撮(出所:綜合警備保障)
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 これまでに空撮した場所は、約50カ所で、このうちの約6割となる約30カ所が太陽光発電所となっている。空撮した太陽光発電所の出力規模は、最小で約1MWから、国内最大の約115MWまで幅広い(図4)。

 出力115MWのメガソーラーは、青森県六ヶ所村にある「ユーラス六ヶ所ソーラーパーク」で、稼働済みの太陽光発電所としては、国内最大規模である(関連ニュース関連コラム)。

 パワーコンディショナー(PCS)の出力115MWに対して、約51万3600枚のパネルが並ぶ。

 国内外で再生可能エネルギー発電所を開発・運営しているユーラスエナジーホールディングス(東京都港区)が開発し、発電事業者は同社が設立した特定目的会社(SPC)のユーラス六ヶ所太陽光となる。

空撮のリピートも増える

 太陽光発電所は、出力約1MWの規模で、一般的に太陽光パネル枚数は4000枚程度、敷地面積は1万m2程度となる。

 この規模以下であれば、携帯型の赤外線カメラで1枚ずつ撮り歩いても、それほど大きな負担にはならず、撮影に要する時間も限られるため、ドローンを使う利点は、それほど大きくない。1MWを超え、規模が大きくなるほど、ドローンによる空撮の利点が増す。

 綜合警備保障の太陽光発電所向けのドローンでのサービスでは、単発で1回の空撮を依頼されることが多いという(図5)。中には、1年ごとなど定期的に空撮の依頼を繰り返し、定期的にサービスを提供できそうな発電所もある。国内最大の六ヶ所村のメガソーラーも、その一つという。

図5●太陽光発電所における空撮時の様子
規模が大きくなるほど、利点が増す(出所:綜合警備保障)
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 太陽光発電所では今後、発電開始から時間が経過するほど、パネルに不具合を生じる可能性が高まっていく。パネルの不具合は、発電ロスだけでなく、場合によっては、火災などを引き起こす恐れがある。このため、稼働後の年数が経つにつれ、ドローンによるサービスへの需要が高まってくると、同社は見ている。

 同社の太陽光発電所向けのサービスは、すべて本業の警備を担当している発電所から受注したものという。同社は太陽光発電所向けの警備サービスで、当初から赤外線カメラを導入して夜間の視認性が高いサービスを展開したことなどが奏功し、全国各地で多くの発電所を顧客としている。

 太陽光発電所向けのドローンによる空撮サービスの価格は、基本価格+現地に向かうための実費で構成し、出力2MWのメガソーラーの場合は15万5000円から、出力10MWで31万5000円から、出力20MWで51万5000円から、などが目安となる。

地域別の体制整備で六ヶ所村の115MWの空撮も効率化

 今回、ドローンによるサービス拠点を拡充することで、年間の空撮回数を増やしていく。それも、全国各地の拠点から出向いて空撮することで、運用の柔軟性も高めることを目指している。

 これまでは、関東の拠点に駐在している数人がドローンによるサービスを担い、現地を空撮して回っていた(図6)。

図6●現在は関東から現地に出向いて空撮
より柔軟に空撮スケジュールを組める体制に(出所:綜合警備保障)
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 空撮の予定日でも、天候や状況によっては延期することもある。ドローンを持参しての移動にも時間を要する。現地での撮影担当者が、関東から出向く数人だけでは、空撮スケジュールに制約が多く、1年間に空撮できる回数が限られる。

 例えば、国内最大となる六ヶ所村のメガソーラーの空撮では、2機を同時に飛行できる体制で臨み、実際に飛行して空撮した日の合計は12日間となった。

 12日間といっても、連続して毎日、空撮できるわけではない。天候や同社の安全基準によって飛行の可否が決まるため、実際には週に数日は空撮できても、残りの日は飛行できない状況が生じる。12日間の飛行可能な日を確保するのに、例えば、約1カ月間をかけるような場合もありうる。

 ここまで規模が大きくなくても、どの案件でも、こうした運用期間の不確実性などが付いて回る。需要の拡大を見越して、新たな体制整備の必要な時期に入ってきたと綜合警備保障は考えた。

 そこで、これまでの関東の拠点に加えて、6地域にドローンを運用できる拠点を整備し、各地の拠点から現地に出向いて空撮する体制に変え、空撮スケジュールの制約を少なくする。

 柔軟な対応と空撮の効率化の両方に寄与し、複数日の空撮が必要な案件では、空撮を終えるまでの期間を短縮しやすくなる。これらの拠点は、警備の事業のネットワークを活用する。

 それぞれの拠点でドローンの運用を担う予定の従事者は、今後、国土交通省が定めた認定機関による講習を活用し、技能を習得していく。

 さらに、同社で現在、サービスに従事している担当者による、実務に基づく技術や知見、ノウハウを伝える研修も加えることで、同社の基準を満たしたサービスを全国各地の担当者が実現できるようにしていく。

警備会社ならではの安全・安心の徹底

 同社のドローンの運用の特徴の一つに、警備を本業とする企業であることから、安全・安心をより重視していることを挙げている(図7)。

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図7●安全・安心を売りに
運用の基準や工夫にも現れる(出所:綜合警備保障)
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 例えば、風速5m/s以上の風が吹いている場合には、飛行を延期するという運用基準がある。現地で風速を計測しながら運用し、飛行前の計測で風速5m/s以上を把握した時に、飛行を延期するといった運用は、他の企業も導入している場合がある。

 同社の場合、ドローンを離陸後に風が強くなり、風速計の計測値が風速5m/sを越えた場合でも、飛行を中止して戻すほど徹底している。

 サービス開始時から使っていた機体だけでなく、開始後に新たに導入した機体もある。簡易飛行用や研修用も合わせると、現在は6機を運用している。

 後から導入した機体の中には、風速10m/sの風が吹いている中でも、安定した飛行が可能なものもある。しかし、安全・安心な運用を重視する理由から、この機体の場合でも、風速5m/s以上の風が吹いている時には飛行しない、という運用基準を維持している。

 同じように、GPS(全地球測位システム)において、機体を捕捉している衛星の数が一定以上に達していない場合、飛行しないという基準も設けている。捕捉されている衛星数が一定以下の状況で、万が一、位置情報の計測や制御に誤差が重なった場合、太陽光パネル上や敷地外に着地してしまうといったトラブルを防ぐ目的となる。

 また、離発着地点の地面に砂が多い場合、離発着時などに生じた風によって砂が多く飛び、機体のモーターを故障させる不具合も想定しておく必要があるという。そこで、地面に保護材を敷くといった工夫も施している。

空撮後の工程の効率化が課題

 ドローンの活用によって、太陽光パネルの熱分布の画像の取得工程は効率化できた。今後の課題として、空撮後の工程の自動化を挙げている(図8)。

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図8●顧客に提出するレポートの内容例の一部
不具合を生じたパネルの位置、不具合の状況、原因の推定など。青森県六ケ所村のメガソーラーにおける例ではない(出所:綜合警備保障)

 同社では、満充電時の1機の飛行時間として、1回で最大20分間に定めている。日本に多い出力約2MWのメガソーラーの場合、蓄電池の消耗が早くなる冬季でも、ほぼこの1回の飛行ですべてのパネルを空撮できている。

 しかし、その後、顧客にレポートを提出するまでに、1~2週間を要している。

 空撮画像を分析し、不具合を生じた可能性のあるパネルと、そのパネルの位置も特定し、顧客に提出するレポートを作成する工程は、人手に頼っているためである。

 効率化の余地が残っており、この分析と報告書の作成の工程を自動化できないかどうか、検討を始めている。

 サービス開始から2年以上で経験したメガソーラーの空撮において、太陽光パネルの不具合や、発電量の低下の原因となる現象を発見できなかった例はないという(図9)。

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図9●発電量低下の原因となる現象を発見できなかった例はない
不具合がない場合でも、影や鳥のフンによる影響が見つかる。青森県六ケ所村のメガソーラーにおける例ではない(出所:綜合警備保障)

 パネルの過剰な発熱などが見つからなかった発電所の場合でも、木や建物、雑草などによる影や、鳥のフンなどによって日射が遮られ、発電に影響している状況を発見しているとしている。