PVロボット最前線

大手電力や消防も活用する「太陽光向けドローン」の老舗、フカデン

井桁構造の機体で軽量化、飛行時間と着地の安定性を向上

2016/11/30 00:00
加藤 伸一=日経BPクリーンテック研究所

 中部電力は2014年、電力設備の点検にドローン(無人小型飛行体)を使うことで効率化する研究を始めた。高圧送電線などのほか、太陽光発電所も、その対象となった(図1)。

図1●出力約7.5MWの「メガソーラーたけとよ」における点検
約3万9000枚の太陽光パネルの熱分布画像を約1時間で撮影(出所:中部電力、フカデン)
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 電力設備の点検には、敷地が広いために時間のかかる場合もある。また、点検作業者が容易に近づけなかったり、作業環境の厳しい場所だったりすることもある。こうした場合にドローンを活用できないかと考えた。

 太陽光発電所の点検は、中部電力が開発・運営している出力約7.5MWの「メガソーラーたけとよ」(愛知県武豊市)で実証した。こうした用途のドローンや活用手法を中部電力と共同開発したのが、フカデン(愛知県豊田市)である。

 同社は、工場内の生産システムなどを手がけている。自動車関連の生産管理システム、ロボット応用設備、制御システムについては、トヨタ自動車向けなどを中心に事業を拡大してきた。ドローンの開発や供給は、航空分野向けの事業の一環として、2009年に始まった。

 太陽光発電関連への取り組みは、約15年前にさかのぼる。当時、事業所での太陽光発電は、事業性がなかったことから、会社としてではなく、加藤 太代表取締役が自宅に導入した。シャープ製の太陽光パネルを使った発電システムを、国と豊田市による補助を併用して設置した。

 その後、年に数件という地道な設置件数ではあったが、着実に実績を重ね、2009年ころに事業として正式に取り組み始めた。住宅や事業所の屋根への設置が中心だった。

 固定価格買取制度(FIT)の施行以降は、低圧配電線に連系する地上設置型の太陽光発電所のEPC(設計・調達・施工)サービスを手がけている。さらに、本社の屋根上に設置した出力約10kW、三重県尾鷲市にある出力1.2MWのメガソーラーなどを開発し、売電事業も始めた。

 ドローンを使って太陽光発電所の点検を効率化しようと考えたのは、航空関連向けに受注が始まった頃だった。

 加藤氏の自宅に設置した太陽光パネルに生じた不具合の経験から、太陽光発電システムの点検やメンテナンスの重要性を実感していた。実際の点検方法を検討するうち、上空からパネルを撮影して不具合の有無を把握できないか、と考え始めた。

 太陽光パネルの不具合は、発電ロスだけでなく、火災などの災害につながる恐れもある。いち早く発見し、適切に対処することが、事業性と安全性の両面を高めることになる。

 ドローンの応用では、上空から赤外線カメラでパネルを撮影して得た熱分布の画像を分析して、過剰に発熱している場所を特定する。フカデンでは、機体の開発だけでなく、ドローンへの搭載に向く赤外線カメラも、日本アビオニクスの開発に協力してきた。

井桁構造の機体で軽量化、飛行時間を増す

 出力約7.5MWの「メガソーラーたけとよ」は、約14万m2の敷地に3万9168枚の太陽光パネルが並ぶ。実証では、ドローンを使い上空から赤外線カメラで撮影した。従来、3人で2日かかっていた撮影を、上空から撮影することで、約1時間に短縮した。

 フカデンのドローンは、顧客の使用目的に合わせたカスタマイズ品を提供している。メガソーラーたけとよ向けでは、中部電力と共同開発し、機体のフレームは簡素な井桁構造を採用した(図2)。1回の飛行時間の長さや、飛行時の安定性などに利点があるという。

図2●中部電力と共同開発したドローンを使った
井桁構造の機体で軽量化し、飛行時間を延ばした(出所:中部電力、フカデン)
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 敷地の広いメガソーラーでは、1回の飛行で、すべてのパネルを撮影できることが望ましい。しかし、一般的にドローンの飛行時間は、最長で15〜20分間と短い。実際には、安全を考慮してこの半分程度の時間で運用するので、1回の飛行で出力約2MW程度しか撮影できない。

 1回の飛行でより多くのパネルを撮影するには、赤外線カメラの解像度を増す方法もある。飛行高度を上げて、1回の撮影で画像に収めるパネルの枚数を増やす。パネルからの距離が遠くなっても、画像の解像度を上げることで、過剰に発熱している部分を明確に認識できれば、点検上、問題はない。

 ただし、現状では、この手法は採用しにくい。現在の赤外線カメラは、解像度を上げるに従って、重量が増すためである。機体が重くなると、同じ揚力を得るために必要な電力が多くなり、蓄電池の消耗が増す。結果的に、1回の飛行時間が短くなる。

 小型軽量で解像度の高い赤外線カメラや、出力密度の高い蓄電池の開発を待つことになる。

 そこで、機体を軽量化することが、当面の有効策となる。フレームを簡素な井桁構造とすることで、機体の軽量化につながった。1回の飛行時間は約40分間とし、一般的なドローンの約2倍を実現した。その結果、「メガソーラーたけとよ」では、2回で合計約54分間の飛行で、全パネルを撮影できた。

 フカデン製ドローンの井桁構造の機体は、パイプのような形状の部材で構成する(図3)。通常は折り畳み可能なアームと呼ばれるプロペラ(ローター)固定部に、井桁構造を採用したことで安定性を増した。ローターは四つ備える。着地する際に地面からの衝撃を受け止める脚も、同じように井桁構造とした。

図3●井桁構造で飛行が安定化し、軽量化しやすく着地も安定化
パイプのような形状の部材で組む(出所:フカデン)
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 こうした構造では、機体の剛性が増すため、一般的なドローンによく見られる「アームのブレ」が解消する。風の抵抗も受けにくいこともあり、飛行時の安定性を維持しながら、機体を軽量化しやすい。

 脚は、一般的なドローンに比べて、かなり短い。着地後に機体がバウンドするといった現象を抑えられることで、着地時の安定性が増すうえ、部材が少なくて済むので低コスト化に寄与するという。

30度の傾斜地メガソーラーでも活用

 フカデングループで開発・運営している三重県尾鷲市の出力1.2MWのメガソーラーは、さらにドローンを使った点検が生きる環境にある(図4)。

図4●三重県尾鷲市のメガソーラーは約30度の斜面にある
ドローンによる点検の利点がより生きる(出所:フカデン)
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 約30度の斜面に太陽光パネルを設置していることから、赤外線カメラを持って撮影しながら歩き回るのは、安全管理面でも、コスト面でも難しい。仮に人が歩き回って点検する場合、足場を築いて安全を確保する必要がある。

 そこで、2カ月に一回、ドローンを飛ばしてパネルを撮影している。メガソーラーたけとよに比べて、規模が小さいこともあり、30分以内の飛行で撮影が終わる。

 敷地をスキャニングするように撮影したデータを、飛行後にパソコンに取り込み、熱分布に異常のあるパネルを確認できる(図5)。パネルの熱分布画像を発電所の地図にマッピングすることで、どのパネルに過剰な発熱が生じているのか、一目で分かる。

図5●2カ月に一回点検
熱分布画像で不具合の生じたパネルを特定(出所:フカデン)
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 ドローンの運用は、自動飛行が基本になる。事前に飛行経路を設定する。赤外線カメラの解像度や視野角を考慮し、最も効率的に撮影できる高度や速度で飛行する。飛行時の位置情報の把握に使う全地球測位システム(GPS)の精度、風による撮影のブレなども考慮して飛行経路を決める。

 飛行経路の設定では、通常は水平方向の位置情報のみを入力する。しかし、尾鷲市のメガソーラーは、傾斜地にあるため、高度に合わせた垂直方向の情報も設定する必要がある。

 これまで、微細な割れ(マイクロクラック)によるものと思われる過剰な発熱(ホットスポット)のほか、鳥の石落としと思われるカバーガラスの割れ、パネルとパネルの隙間から伸びてきた草木の影などを発見し、対処してきた(図6)。

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図6●ガラスが割れたパネル、木の影による影響の発見例
尾鷲市のメガソーラーにおける点検(出所:フカデン)
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 石によるカバーガラスの割れは、一般的にはカラスが多いが、尾鷲市のサイトでは、トンビの仕業かもしれないという。トンビは、ドローンの飛行中、機体に寄ってくることもある。

 同社のドローンは、性能面では風速8m/s程度まで飛行できるが、実際の太陽光発電所における運用時には、安全を考慮して風速約5m/s以上では飛行しないようにしている。

 ドローンの提供形態としては、機体の販売のほか、レンタルサービスも用意した。点検する発電所の少ない事業者に対応した。レンタルでは、点検する発電所がフカデンの近隣にある場合、飛行まで引き受けることもある。

 ドローン運用に必要な知識の習得や、飛行の準備や操作などを実習するための講習会の開催も計画している。最近では、東京を中心に首都圏では、ドローン関連企業が多く開催するようになってきたものの、中部では少ないためである。

有線給電型、消防との共同訓練などで用途を広げる

 太陽光発電以外の用途開拓も進みつつある。例えば、他の再エネ関連では、風力発電所のブレードなどの高所点検への活用も検証した(図7)。

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図7●有線給電型のドローンによる風力発電のブレードの点検
高所で飛行時間が長い点検に活用(出所:フカデン)
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 こうした高所の点検では、通常のドローンでは1回の飛行では済まない場合もある。そこで、有線で給電しながら飛行するドローンを開発した。電力線をつないだまま飛ばし、上空から撮影する。これによって、1回あたりの飛行時間が伸びる。

 飛行の範囲は限られるので、メガソーラーのような広い敷地における撮影には向かない。主な対象は、風力発電所や送電線の点検、電力以外では橋の点検などを想定している。

 電力線の長さは100mで、飛行場所が限られている場合には、ケーブルがリードの役割も担い、飛行時の安心性を増している。

 この有線給電のドローンは、他にないため、引き合いが増えているという。価格については、同社のドローンはすべてカスタム品のため定価はないが、参考として200万円程度としている。通常の蓄電池搭載型の場合、70~100万円が多い。

 災害時の救助などの取り組みも始まっている。豊田市消防署本部とは、山中の火災時の消火、川で溺れた人を救出する水難救助、山中の遭難者の捜索などを目的に、共同訓練を実施している(図8)。

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図8●水難救助、山林火災の消火、山岳遭難の捜索にも活用
豊田市消防本部との合同訓練の例。上は2016年8月に実施した水難救助訓練、中は2016年11月に阿蔵町で実施した消火訓練、下は2016年10月に豊松町で実施した山岳遭難の捜索訓練の様子(出所:豊田市消防本部、フカデン)
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 例えば、2016年8月の水難救助の共同訓練では、溺れた被災者を模した人形を発見するだけでなく、ドローンから救助用の浮き輪(浮環)を落とす訓練も実施した。

 ドローンには、下向きのカメラに加え、救助用の浮環の紐を掴む機構を装着した。訓練時には、川幅約80mの河川において、離陸から約35秒で被災者の上空に到着し、浮き輪を落とした。