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太陽光発電事業者の「受光利益」を認めた判例はありますか?(page 4)

<第47回>福岡地裁・平成30年11月15日判決の解説(下)

2019/01/21 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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発電量の減少は限定的

 まず、発電量の減少度合いについては、「発電量は減少しているが、所与の目的を共用設備の維持コストはまかなえている」というのが福岡地裁判決の趣旨です。

 判決では、「本件建築行為により侵害される原告の受光利益は、原告の主張を前提としても、本件建築行為の前後では年間の総発電量で45.5%、売電代金で45.3%減少したというのであり、とりわけ冬から初春にかけての12月から3月にかけての発電量の減少が大きいことからすれば(甲3)、気候や天候の年間ベースでの変動等の要素による誤差があるとしても、被告建物による本件太陽光パネルの受光量の減少が顕著に表れているといえる」

 「もっとも、九州電力から支払いを受けた売電料金額と九州電力に対して支払った使用分の電気料金額を比較すると、年度単位(4月から翌年3月まで)では管理事務所や共用部分(街灯、ポンプ)に必要な電力は本件設備により発電した電力でまかなわれているのであって(甲3)、受光利益が制約されることで本件設備による原告住宅地における共用設備の維持等のコスト削減に対する影響は大きいとはいえない」と判示しています。

 被告建物が本件設備の発電量の減少に与える影響は限定的であることを確認しています。

発電量の減少は被告の責任か?

 また、発電量の減少が被告の帰責事由に基づくものか、については、以下のように述べています。

 (1)本件駐車場の屋根部分に本件太陽光パネルを設置することを選択したのは原告自身である。

 (2)本件壁部分に設置された本件太陽光パネルは地上から2.5m以下の高さにあり、被告住宅地に建物が建築されれば、受光が妨げられる可能性が十分に想定される位置である。

 (3)被告住宅地に住宅が建築される可能性は原告においても十分に想定し得るものである上、被告住宅地の利用方法について原告がBから聞き取った内容を前提としても、Bとの間で本件太陽光パネルの受光を阻害するような建物を建築しない旨を合意したとはいえないし仮に何らかの合意といえるものがあったとしても、被告が改めて同意しない限り、そのような合意は被告を拘束しない。

 (4)原告においても、Bの説明を受けて本件太陽光パネルの受光のために一定の空間について被告住宅地上の建築を抑制したかったのであれば、Bとの間で被告住宅地を要役地とする地役権を設定するなどの方法も考えられなくはないが、仮に地役権を設定するなどの方法を採るに当たって対価を考慮したというのであれば、本件太陽光パネルの受光が妨げられる場合の不利益と地役権の対価の支払を原告において考慮し、原告のリスクにおいて前者を選択したというにほかならないということになる。

 (5)そもそも被告において被告住宅地内にどのように建築物を配置するかは、建築基準法等の関係法令の規制に反しなければ被告の任意に委ねられており、本件太陽光パネルのために被告において原告の協議の申入れに応諾すべき義務があるとはいえない。

 (6)仮に被告住宅地における建物の配置を変更するとしても、本件太陽光パネルの受光を一定程度妨げないようにするには、被告建物の建築位置を南側に変更する必要があるが、その場合でも、被告建物や同開発地内の他の建物の関係で法令上必要な道路の幅員や接道を十分に確保し、被告住宅地内の建物間の日影規制等にも問題を生じないように被告住宅地全体の計画を練り直さなければならなくなる可能性があるし、被告に不利益を及ぼさずに配置が可能であることを認めるに足りる証拠もない。

 以上の理由により、発電量減少は、「必ずしも被告の責めに帰すべきとはいえないから、原告の受光利益の侵害の程度が強度といえるような場合ではない」と判断しています。

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