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アップルを再エネ100%に導く「バーチャルPPA」、米RMIが解説

再エネ発電事業者と需要家の双方がリスクを回避

2017/03/27 20:16
加藤 伸一=日経BPクリーンテック研究所
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講演するロッキー・マウンテン研究所のエルヴェ・トゥアティ氏
(出所:日経BP)
バーチャルPPAの背景と概要
(出所:ロッキー・マウンテン研究所)
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 米ロッキー・マウンテン研究所(Rocky Mountain Institute:RMI)のManaging Directorであるエルヴェ・トゥアティ(Herve Touati)氏は3月8日、自然エネルギー財団が開催したシンポジウム「REvision2017」において講演し、「バーチャルPPA(virtual power purchase agreement)」と呼ぶ、再生可能エネルギーの大量導入や利用の加速に寄与する仕組みを紹介した。

 同研究所は、再エネ導入や活用に関する研究や提言で知られる。同氏が担当しているBusiness Renewables Centerでは、再エネ利用を拡大したい企業、再エネ開発事業者、再エネ関連サービス事業者が会員となり、会員企業による再エネ電力の導入や利用の拡大を支援している。

 再エネの活用を増やすには、自社の拠点内(オンサイト)などに再エネ発電所を開発・運営するだけでは限界がある。自社の拠点から離れた場所(オフサイト)に第3者が開発・運営している再エネ発電所からの電力購入が、有効な手法の一つとなる。

 ただし、同じ電力網の近隣地において、再エネ電力を売電する発電事業者と、再エネ電力を購入したい企業がほどよく立地し、お互いの意向がバランスよく合うことは難しい。

 バーチャルPPAは、こうしたオフサイトの再エネ発電事業者と、需要家の間をうまくマッチングする取引手法という。ロッキー・マウンテン研究所が普及を後押ししている。

 例えば、米アップルが、米国内の事業所の消費電力を再エネ100%にできたのも、この仕組みが寄与しているという。

 再エネ発電事業者は、長期の電力供給契約に基づいて売電する。長期的に安定した収入の見込みを与えて、プロジェクト開発の確実性を高める。再エネ電力を活用する企業にとっても、電力料金の将来の不安定性のリスクをヘッジして、エネルギーコストを安定できる。双方に利点がある仕組みとなっている。

 再エネ発電事業者にとっては、固定価格買取制度(FIT)の活用に似た事業となり、安定した価格で売電できる。バーチャルPPAの契約外となった容量分は、卸売市場で売電する。長期の電力購入契約を基に、FITに基づく再エネ発電所のような条件で、プロジェクトファイナンスによる融資を受けやすいなど、リスクの少ない事業構造になるという。

 再エネ電力を利用する需要家の企業にとっては、長期契約による再エネ電力購入と、それで不足する分はスポット市場から調達することになるという。

 長期契約分を増やせば電力調達コストを安定化させ、リスクをヘッジできる一方、卸売市場での売電価格の変動を想定し、バランスを考慮した配分が求められる。

 需要家の企業にとって、長期契約による購入分については、REC(再生可能エネルギー証書)なども得られる。

 トゥアティ氏によると、こうしたバーチャルPPAのポイントは、電力会社が取引に介在していないことだという。卸市場における再エネ電力の取り扱いが適切に機能することが肝心で、電力小売りや卸に関する規制緩和が実現のカギとしている。

 日本にとっても、再エネ電源の導入ほどには進んでいない、企業による再エネ活用の拡大策として、有効な手法ではないかと強調した。

 バーチャルPPAの当事者となる再エネ発電所と需要家の企業は、近くになくてもよい。実際に、どの再エネ発電所の電力を使っているのかは特定できず、これによって、柔軟性の高い仕組みになっているという。

 これに対して、特定の発電事業者と需要家が直接、電力購入契約を結んだ場合、特定の再エネ発電所に「ひも付け」されるような電力購入に限られてしまう。

 米国において、オフサイトの再エネ発電所を活用するアグリゲーター(仲介事業者)の8割以上が、こうしたバーチャルPPAの手法を活用しているという。

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