FIT抜本見直し、市場ベースの「FIP」軸に議論へ

2019/06/14 19:16
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

 経済産業省は6月10日、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会を開催し、固定価格買取制度(FIT)の抜本的な見直しに関し、論点整理とIEA(国際エネルギー機関)からの提言を受けるなど、今後の方向性を示した。

 論点整理では、これまでも指摘されてきた「さらなるコストダウンと国民負担の抑制」に加え、「電力システムとの統合」が強調された。具体的には、FITによる再エネ発電事業者は、「自由化された電力市場でも、インバランス特例によって調整責任を負わない仕組みになっている」「買取義務によって売れ残りリスクを回避する仕組みになっている」など、「電力市場から隔離されている」ことの問題点を指摘する一方、「限界費用ゼロの再エネは論理的にはスポット市場で必ず約定できる」と分析している。

 一方で、FIT制度を早く取り入れた諸外国では、再エネの市場統合を目的に「FIP(フィード・イン・プレミアム)」制度に移行している例が示された。FIPとは、再エネ発電事業者が電力卸市場への売却など市場価格で電力を販売する場合、プレミアムを上乗せする方式。売電単価に市場変動の要素を加味しつつ、プレミアム分を支援する。

 FIP制度は、2015年に改正FITを検討する有識者会議でも、事務局が選択肢の1つとして示したものの採用は見送られ、「入札方式」が導入された経緯がある。その後、大規模案件への入札制度の導入でコスト低減に一定の成果があった一方、太陽光の大量導入が進む中で、需給バランスを担っている一般送配電事業者の調整負担が増し、FITインバランス特例によって調整コストを負わないFIT再エネ事業者の扱いが課題になっていた。

 今回公表された論点整理から、「抜本見直し」のあり方として、(1)現制度の送配電事業者の買取義務から、電力小売事業者との相対取引や電力市場への売却など、再エネ事業者が売電先を選択する。(2)「FITインバランス特例」を廃止して、再エネ事業者も調整負担を負う、という方向性が見えてきた。

FIPの制度設計はこれから

 加えて、市場価格との連動制という観点からFIPが有力な選択肢として示された。ただ、FIPには、いくつか方式がある。大きくは、プレミアム固定型、プレミアム変動型、そしてその中間的な、上限・下限付きプレミアム固定型がある。

「FIP(フィード・イン・プレミアム)」制度には3タイプがある
(出所:経産省)
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 実は、現在のFIT制度は、回避可能費用を市場価格に連動させることで売電単価を一定にしているという点で、プレミアム変動型FIPに近い制度になる。一方、プレミアム固定型は、売電単価が完全に市場価格に連動するため、売電収入の予見可能性が著しく低下する。

 プレミアム固定型FIPに上限や下限を設ける方式は、市場価格とプレミアムの和に上限と下限を設定したもので、市場価格に連動しつつも、変動リスクを一定範囲に抑えることを狙っている。完全固定価格から市場連動に移行する過渡期の制度として、ドイツなどで導入されている。今回の事務局の資料でも、ドイツの「下限付きFIP」を丁寧に解説し、IEAの提言もこうした流れを示していることから、このタイプのFIPを軸に議論が進むと見られる。

 とはいえ、今の国内の再エネ開発事業者や、それを支える金融機関・投資家が、こうした市場連動タイプの価格決定方式にどこまで対応して新規開発を継続できるかは、予見可能性への配慮と並行して活発な議論が予想される。2015年のFIT改正時の議論では、「FIPは理想的な仕組みだが、日本の電力卸市場が未成熟なことを考えると、長期的な検討課題」との意見が大勢だった。現在でもこうした「国内電力市場の未熟さ」への指摘はありそうだ。