香川県西部に位置する三豊市。南には讃岐山脈の山間部があり、北西には瀬戸内海に突き出た荘内(しょうない)半島がある。その半島の付け根にある須田港から今年8月30日、コンビニの食品を配送するドローンが飛び立った。向かった先は約4キロ離れた粟島だ。

「海を越える長期定期航路を開設したのは世界初」

 ドローンを飛ばしたかもめや社長の小野正人氏は、海を越えて離島へ荷物を配送する新たな挑戦についてそう話す。「長期」とは、期限を設けていないということ。つまり、期限付きの実証実験ではなく、商業サービスとして本格的に運行を始めたのだ。

かもめやが粟島への定期運航で使用する現在のドローン。白いボックスに食品を入れて運ぶ(提供:かもめや)
かもめやが粟島への定期運航で使用する現在のドローン。白いボックスに食品を入れて運ぶ
(提供:かもめや)

「離島住民の“買い物弱者化”を解消する」

10年ほど前に商用ドローンが登場し、建設現場のインフラ点検、農薬散布などの分野から利用されるようになった。最近では、スポーツ競技や秘境を上空から撮影し、テレビ放映するといった使われ方もごく普通になった。

そして今、離島や山間部などに日用品や医薬品を輸送するドローン物流が注目されている。かもめやは「高齢化が進む離島住民の“買い物弱者化”を解消する」(小野氏)ために、悪天候時と定休日を除いて毎日運行する。

かもめや社長の小野正人氏は「島で1年ほど暮らしたことがあり、瀬戸内国際芸術祭でボランティアをした経験もある」。そのため島の事情には詳しい(撮影:長坂 邦宏)
かもめや社長の小野正人氏は「島で1年ほど暮らしたことがあり、瀬戸内国際芸術祭でボランティアをした経験もある」。そのため島の事情には詳しい
(撮影:長坂 邦宏)

粟島の人口は約180人。高齢化率(65歳以上の人口が全体に占める割合)は約84%と、三豊市全体の35%に比べてかなり高い。粟島には子どもはいない。公共交通機関もない。島内の移動は徒歩・自転車、バイクが多く、ガソリン代は本土の1.5倍もする。

そんな粟島が3年に1度、注目されるイベントがある。アーティストをはじめ世界中からアートファンが訪れる現代美術の瀬戸内国際芸術祭だ。瀬戸内海の島々で開かれ、粟島も会場のひとつになる。芸術祭の間、島の伝統や美しい自然を背景に島民との交流が行われ、島に活気が生まれる。2019年の第4回は全体の来場者数が延べ約118万人に上った。

また粟島にはファッションブランドのアニエスベーが創設したTara Océan(タラオセアン)財団の日本事務局である一般社団法人タラオセアンジャパンが活動拠点を置く。2020年には、全国の主要国立大学と協働するマリンバイオ共同推進機構(JAMBIO)と連携し、日本沿岸海域のマイクロプラスチック汚染の実態調査を実施するなど、タラオセアンジャパンは科学と教育とアートの力で海洋保全の重要性を発信している。

過疎化が進むとはいえ、粟島はアートの展示と環境問題の課題解決に取り組む場となっている。そんな島を振興したいと考えた三豊市は、離島の課題解決には新技術の導入が不可欠と判断。そのひとつがドローン物流だった。